あかつき:金星周回軌道への投入に失敗 JAXA

2010年12月8日 11時14分 更新:12月8日 13時9分

あかつきの金星周回軌道への投入失敗について会見するプロジェクトマネジャーの中村教授(右)とJAXA宇宙科学研究所の小野田所長=相模原市で2010年12月8日午前11時9分、八田浩輔撮影
あかつきの金星周回軌道への投入失敗について会見するプロジェクトマネジャーの中村教授(右)とJAXA宇宙科学研究所の小野田所長=相模原市で2010年12月8日午前11時9分、八田浩輔撮影

 トラブルに見舞われていた日本初の金星探査機「あかつき」について宇宙航空研究開発機構(JAXA)は8日、「金星の周りを回る軌道への投入に失敗した」と発表した。エンジンの逆噴射が短時間で終わったため十分な減速ができず、金星付近を通過して遠ざかったとみられる。JAXAは、あかつきが再び金星に近づく6年後に再投入を試みることを決定。その一方、小野田淳次郎・宇宙科学研究所長をトップとする調査・対策チームを設置し、失敗した原因の調査を始めた。日本は98年に打ち上げた火星探査機「のぞみ」の火星軌道投入にも失敗しており、惑星探査は2回続けて失敗となった。

 あかつきの運用管制室があるJAXA宇宙科学研究所(相模原市)で8日午前、小野田所長とプロジェクトマネジャーの中村正人教授が会見し明らかにした。小野田所長は「今回は投入を断念することにした。今後取るべきベストの方法を、対策チームで検討したい」と述べた。中村教授は「国民のみなさんの期待に応えられず申し訳ない。6年後に再び金星に最接近する。その時に再び投入に挑戦したい」と話した。

 あかつきは5月に打ち上げられた後、金星に接近。7日朝、計画通りにエンジンを逆噴射し、進路変更を始めた。しかし、直後にあかつきが金星の陰に入ったため通信が途絶。その後、非常時に自動的に作動する低利得アンテナで交信が回復したが、不安定な状態が続いた。

 8日朝まで徹夜の作業の結果、あかつきは逆噴射直後、機体が非常事態の際に取る「退避姿勢」に入ったため、噴射が止まったと推定。このため金星の周回軌道に入れず、太陽を回る軌道上を飛行。全燃料を使用しても復帰できないと分かり、投入を断念した。逆噴射時間は最低9分20秒必要だったが、2~3分間で止まったとみられるという。

 6年後の最接近は16年12月と17年1月の2回あり、金星から今回(550キロ)より遠い約370万キロ離れたところを通る計算だが、軌道調整でより近付けることは可能で、再度、軌道投入を試みることを決めた。あかつきの設計寿命は2年間だが、打ち上げの延期に備えてバッテリーにもともと余裕があり、逆噴射が短時間で終わったことで燃料も約8割残っているため、再挑戦は可能と判断した。

 ただし、金星より太陽に近い経路を通るため、高温や放射線による機器損傷のおそれがあるという。あかつきが6年後まで無事かは未知数だが、中村教授は「(小惑星探査機の)はやぶさも7年間航海したが損傷はなかった」とし、引き続き管制を続けると述べた。【山田大輔】

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