「農業」vs「国益」でTPPは語りきれない

★参加は既定路線!?TPPで高騰する狙い目銘柄はこれだ!!

2011.02.05

 TPPとは一言で言うと、太平洋を囲む国々の間で貿易の関税をなくし、それに関わる人の移動も自由にできるようにする枠組み。例外は一切認めないのが原則で、だからこそ日本国内には慎重論も多い。関税撤廃になれば日本の食料生産が打撃を受けるという見方からだ。TPP慎重派の論客、東京大学大学院教授の鈴木宣弘氏は言う。

「ゼロ関税になると、米一俵(60kg)3000円前後の安い輸入米が大量流入。一俵当たり平均1万4000円の生産コストがかかる日本の農家は太刀打ちできません」

 とはいえ、海外から安いコメが入ってくるから、消費者は家計がラクになるのでは?「国産の農作物が出回らなくなれば、食料自給率は現状の40%から14%に急落(農林水産省の試算)。世界的な干ばつなどで輸出規制が起これば、’08年にハイチやフィリピンで起きたような“米暴動”が起こる可能性すらある。目先の安さに惑わされ、“主食を自給できなくなる”という事実を無視することは非常に危険です」

 だが、何といっても、現在の日本経済は円高、デフレ、株価低迷の三重苦を抱える。関税をゼロにして加盟国同士の貿易を活発化すれば、経済成長の突破口になる可能性は高い。「TPP不参加は自殺行為」と断言する第一生命経済研究所の永濱利廣氏は言う。

「TPPに参加して関税障壁がなくなれば、グローバルな需要を取り込めることから、輸出系を中心に経済成長を後押しします。また、TPP発効と同時に農業の100%自由化が求められるわけではありません」

 確かに永濱氏の言うとおり、自由化までには10年間の猶予期間が認められ、輸入増加による被害が出た際はセーフガードの適用も可能。農水省は、TPPに参加すれば、農業および関連産業のGDP損失額は7・9兆円に及ぶと試算するが、参加しなかった場合、輸出系企業を中心に10・5兆円の損失を被る予測だ(経済産業省の試算)。ちなみに、内閣府は、TPPに参加すればGDP全体では、2・4兆〜3・2兆円の経済効果が見込めると予想。

 しかし、鈴木氏は、まるで「農業のせいで国益が損なわれる」かのような論調は大間違いだと喝破。「農業には、地域経済に根差した加工や流通、販売や輸送、観光などさまざまな関連産業があり、それらを合わせるとGDPの2割程度を占めるともいわれています」

 さらに鈴木氏は、水田がなくなり国土が荒れ野になれば、「水田が持つダム機能も水田に生息する生物多様性も失われ、国土が荒廃する損失は甚大。こうした外部効果の損失は、3・7兆円にも達する」と指摘。加えて、「輸出系が潤って雇用が創出される」という解釈も疑わしいと疑問を投げかける。

「人の行き来も自由化されますから、輸出系企業は安い人件費を求めて、外国人を大量に雇うことになる。となると、農業関係者だけではなく、輸出産業の関係者すら大量に失業する可能性があります」【続きを読む】

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