荒野に風が吹く。
ここは日本だった地、そう“だった”過去形だ。日本はもうない、秘密結社ショッカーから続きゴルゴムが日本征服に成功したその瞬間から。
創世王を決める戦い、月と太陽。黒い太陽は破れ翠の月が勝った、それだけの事。仮面ライダーBLACKは負けたのだ、シャドームーンにキングストーンを打ち砕かれて。大地が割れ海が荒れる、その嘆きは人々が希望を失ったからか、海の底へBLACKは消えていった。
黒い太陽が沈んだ日。
だが陽はまた昇る、例え命が失われたとしても、ここに鯨怪人がいる。ゴルゴムにいながらBLACKに命を救われた怪人だ、彼はその恩を返すべく生命の水をBLACKへと浴びさせ――今静かに戦士の鼓動が動いた。
ゴルゴム三大神官は新たな創世王シャドームーンの誕生に歓喜していた、もう邪魔者BLACKはいない。後はゆっくり支配していけばいい、再生怪人を蘇らせて。
そんな彼らに衝撃が走る。
「バカな!」
その光景を見た体全体が鱗で覆われている女性は叫んだ、他の二人も声には出さないが驚愕している。シャドームーンは、その冷たい翠の瞳でそれを見ていた。
彼らが見たもの、それは。
蜘蛛怪人と蜂怪人、その他にも生物をモチーフにした怪人達が蠢き人々を襲う寸前、風が吹いた。
穏やかな風、ビルが倒壊し荒れ果てた地で人々が希望をなくした地で吹く一陣の風。
その中心には二人の男。
片やレーサーであり優秀な科学者、片やその男に助けられ自身も優秀な頭脳を持つ者。彼らの名は。
「……行くぞ一文字!」
「おお! 本郷!」
本郷猛、一文字隼人。力と技の仮面ライダー!
本郷は腕を交差させる、一文字は腕を組む。それは変身の構え、二人の腰元にあるベルトが廻る。
「ライダァァッ変……身!」
空中に飛び回転する二人、その姿は人から飛蝗男へ。改造人間だが正義の心を持つヒーロー、緑の仮面、真紅のマフラー。造形は同じだが何処となく違う、新仮面ライダー一号、二号が降り立った!
かつて誰かが言った言葉がある。
『時代が望む時、仮面ライダーは必ず蘇る』
そうBLACKが倒れ再び立ち上がろうとする時、人々が涙を流す時。風が吹き正義は其処に立つ。
何時の時代も悪が栄えた例しはない、だから。
「トウッ!」
再生怪人軍団に立ち向かう二つの疾風、時代を越えた仮面ライダー達の戦いが始まる。
そして仮面ライダーは彼らだけじゃない。
変身の代償に苦しみながら戦う男、教鞭を取りながら改造人間に苦悩する男、妹の呪縛を断ち切った男。
彼らもまた、仮面ライダー。
それぞれの仮面に赤と緑の光が灯り……
共闘、開始。