日本独自の全地球測位システム(GPS)づくりに本格的に踏み出すべきか。政府の宇宙開発戦略本部が検討を始めた。GPSは防災や安全保障など広く国民に役立つ社会基盤となりうる。長期的な国家戦略に基づき投資効率も考えて判断するならよい。そうでなければ税金の無駄遣いになるだけだ。
政府は、昨年打ち上げた初の国産測位衛星「みちびき」の性能を確認中で、1機だけの実験に終わらせるか、2機目以降を打ち上げ、実用段階に移るのか、夏までに決める。実用には最低3機の衛星が要る。7機あれば、米国のGPSが使えない事態でもサービスを維持できるが、それには打ち上げ費用だけで2千億円以上かかる。
日本版GPSは「準天頂衛星」とも呼ばれ、世界のどこでも使える米GPSとは違う。日本からオーストラリアにかけての上空を衛星が周回し、米GPSを補完・補強する。米GPSの電波が届かない場所を補い、日米の衛星の併用でカーナビゲーションなどの精度を現状の約10メートルから1メートル以内に引き上げる。
個人向けのナビゲーションサービス、自動車や船舶の安全運転支援、津波監視など使い道は提案がいくつもある。領海警備など安全保障や、東南アジア諸国や豪州にも利用してもらい外交関係を強めるのにも使えるとの意見がある。
しかしこれらの用途に自前のGPSが不可欠なのか、疑問の声もある。あれば便利だが、米GPSで用は足りるという程度ならば金をかけてつくる意味はない。
国民や国土の安全のため長い目でみて自前のGPSがあった方がよいのか。今は用途が明確でなくとも、未来の情報サービス産業を生む基盤として先行投資すべきなのか。GPSの必要性を大局的な視野から判断する必要がある。国家戦略にどう位置付けるかであり、宇宙開発推進の立場から利用法を無理にひねり出しては本末転倒だ。
国土交通省や防衛省など利用側の官庁や産業界が議論を尽くすのが第一。その内容を国民に示し最後は政治判断になろう。投資すると決めたら、意義の薄い、他の宇宙予算や公共事業などを削る覚悟で取り組むべきだ。打ち上げ費用の圧縮も要る。
世界をみれば、米ロのほか欧州と中国、インドが独自のGPSを目指す。欧州はGPSで60兆円の情報サービス産業が生まれるとそろばんをはじいていたが、財政難で計画修正を迫られている。世界の動きも視野に判断してほしい。
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