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社説:論調観測…小沢元代表強制起訴

 「けじめ」は、英語になりにくい日本語である。「take responsibility」(=責任をとる)と訳されることが多いが、いま一つぴたりとこない。

 ◇「けじめ」とは何なのか

 民主党の小沢一郎元代表が政治資金規正法違反で強制起訴された。それを受けた社説で、毎日、読売、日経はそろって見出しに「けじめ」を掲げた。「まず離党してけじめを」(毎日)、「政治的なけじめをつける時だ」(読売)、「民主党は小沢元代表の起訴でけじめを」(日経)、といった具合である。

 では、けじめとは具体的にどういうことを指すのだろう。

 毎日は見出しにあるように、「離党」が最低限のけじめだとしている。資金疑惑を持たれた元代表が国会での説明を拒み続けた結果、国会が混乱し民主党政権も批判を浴びた。与党、国政に大迷惑をかけたのだから、まずは「与党と一線を引く」離党が必要との主張である。

 読売は「刑事被告人が政権党の中で、隠然と影響力を行使することが許されるのか」としたうえで、「党内外には、議員辞職や自発的な離党を求める声が少なくない」と指摘。「そうした政治的なけじめをつけることを真剣に検討すべき時ではないか」と述べている。

 日経の論評は主に民主党に向けられた。疑惑は自ら進んで解明し責任を明らかにする、という政治倫理綱領に元代表が従わないのを容認し続けた党を問題視。参考人招致や証人喚問、離党勧告によるけじめを求めた。

 ストレートに議員辞職を唱えたのは産経だ。小沢元代表が検察審査員を「一般の素人」と呼ぶなど検察審査会制度を軽視したと批判。「国民の判断で刑事訴追されたことを重く受け止め」自主的に議員辞職するよう要求した。ただ、なぜ議員辞職なのかという説明はあまりない。他の議員の例を挙げ、「こうした責任の取り方は政治家として最低限の義務」と述べている程度だ。

 朝日も同じく検審制度の意義を重点的に論評した。元代表については「国会での説明すらできないのなら、自らしかるべく身を処すのが筋」とし、とるべき行動の明示は避けた。

 「けじめ」は、日本人の間では何となくわかる便利な言葉だ。しかし、何がなぜ問題なのか、誰がどのような行為を通して責任をとるべきかは可能な限り具体的、明確に論じるべきだろう。主張する側の責任感の問題であると同時に、同じ過ちを繰り返さないよう学ぶうえで欠かせないと思うからだ。【論説委員・福本容子】

毎日新聞 2011年2月6日 2時30分

 

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