2010年12月7日 19時15分 更新:12月7日 21時44分
経済協力開発機構(OECD)は7日、65カ国・地域で約47万人の15歳男女(日本では高校1年)が参加した国際学力テスト「学習到達度調査」(PISA)の09年実施結果を発表した。読解力、数学的リテラシー(活用力)、科学的リテラシー(同)の3分野の調査で、日本は読解力では前回(06年、57カ国・地域参加)の15位から8位と順位を上げた。数学は10位から9位、科学は6位から5位とわずかに上昇。一方で初参加の上海が3分野すべてで1位となったほか韓国、香港、シンガポールも全分野で上位を占め、アジア勢の台頭が目立つ結果になった。
調査には、上海のほかシンガポール、ドバイなど8カ国・地域が新たに参加。日本では無作為に抽出された約6000人が、3分野のテストと学習環境などのアンケートに回答した。中国、インドは「言語が多様なことなどから全国一斉テストの実施は難しい」とOECDの参加要請を断った。上海、香港などは自主参加だった。上海がトップを独占したことについて、OECDは「中国で最も教育改革が進んでおり、同国全体の平均を表しているわけではない」とコメントした。
日本の調査結果の変遷は、読解力が00年8位、03年14位、06年15位で、今回調査で00年レベルに改善。数学は00年1位、03年6位、06年10位。科学は00年2位、03年2位、06年6位で今回調査でいずれも下げ止まりの兆候が見えた。だが、得点によってレベル1未満(最下位)~レベル6(最上位)までに区分された階層のうち、文部科学省が「社会生活に支障が出る」と判断するレベル1以下の生徒が、読解力13.6%、数学12.5%、科学10.7%に達するなど、学力格差は依然解消していない。
読解力では上海、韓国、香港、シンガポールが上位5位に、数学ではこれに台湾も入りトップ5を独占。日本を上回る結果で、教育先進圏の位置づけが明確になった。これまで各分野で1、2位を占めて話題になったフィンランドは、数学で6位に後退した。
学習環境に関するアンケートでは、社会経済文化的背景として(1)自分の部屋(2)インターネット回線(3)DVDプレーヤーなど7項目を所有しているかどうかを質問。所有比率が高いほど得点も高く、親の経済状況が子供の学力に影響を与えている可能性も示した。【篠原成行】
<読解力>
09年調査 00年 03年 06年
(1)上海※ 556点 -- -- --
(2)韓国 539点 6位 2位 1位
(3)フィンランド 536点 1位 1位 2位
(4)香港※ 533点 -- 10位 3位
(5)シンガポール※ 526点 -- -- --
(6)カナダ 524点 2位 3位 4位
(7)ニュージーランド 521点 3位 6位 5位
(8)日本 520点 8位 14位 15位
(9)オーストラリア 515点 4位 4位 7位
(10)オランダ 508点 -- 9位 11位
<数学的リテラシー>
(1)上海※ 600点 -- -- --
(2)シンガポール※ 562点 -- -- --
(3)香港※ 555点 -- 1位 3位
(4)韓国 546点 2位 3位 4位
(5)台湾※ 543点 -- -- 1位
(6)フィンランド 541点 4位 2位 2位
(7)リヒテンシュタイン※ 536点 14位 5位 9位
(8)スイス 534点 7位 10位 6位
(9)日本 529点 1位 6位 10位
(10)カナダ 527点 6位 7位 7位
<科学的リテラシー>
(1)上海※ 575点 -- -- --
(2)フィンランド 554点 3位 1位 1位
(3)香港※ 549点 -- 3位 2位
(4)シンガポール※ 542点 -- -- --
(5)日本 539点 2位 2位 6位
(6)韓国 538点 1位 4位 11位
(7)ニュージーランド 532点 6位 10位 7位
(8)カナダ 529点 5位 11位 3位
(9)エストニア 528点 -- -- 5位
(10)オーストラリア 527点 7位 6位 8位
注)--は不参加など。※は非OECD加盟国・地域