ソマリア海賊:船員を「人間の盾」に(下)

海賊・船員、全員がブリッジに

 船が乗っ取られた後、船員21人と海賊13人は、全員がブリッジで寝食した。海賊はブリッジから船舶内部への通路を24時間監視した。船員のうち、機関長と1等、2等機関士計8人だけが機関室との間を往来して交代勤務を行った。石海均(ソク・ヘギュン)船長は、英語で書かれた船舶機関関連の書籍を機関室に送った。キム・ドゥチャン甲板長は「本には『燃料に水を混ぜろ』などという機関室勤務者への指示がメモ書きされており、われわれは船長の指示通りに動いた」と話した。

 先月18日、韓国海軍の海賊対策部隊、清海部隊の駆逐艦「崔瑩(チェ・ヨン)」による第1次救出作戦で、海賊は神経を尖らせた。海賊は船員全員をブリッジ外で寝かせた。石船長、キム甲板長を見かけると「ユー・ダイ(お前は死ぬ)」と首をかき切るようなしぐさを見せた。石船長が最もひどい暴行を受け、キム甲板長は前歯が折れた。船員は瓶で殴られたり、調理場にある包丁で脅されたりした。

 「アデン湾の黎明(れいめい)作戦」と名付けられた救出作戦が行われた先月21日早朝5時ごろ、チョン・サンヒョン調理長(57)は「きょうも攻撃はないようだ」とキム甲板長に小声で話した。その瞬間、銃声がして、ブリッジの窓が割れた。海賊は船員を「人間の盾」にするため、ブリッジ両側のドアの方に向かわせた。船員らは必死に床に伏せた。そのすきにソン・ジェホ1等航海士が外側階段を素早く駆け下り、機関室でエンジンを停止させた。

 ブリッジ外に追いやられた船員は、降り注ぐ銃弾を避け、再びブリッジ内へと戻り、床に伏せた。その際、海賊の一人、マホメド・アライ容疑者が「キャプテン」と叫びながら、船長を探した。アライ容疑者は、石船長と同様にマットレスを被り伏せていたキム甲板長の頭髪をつかみ、顔を確認して、船長ではないことが分かると、甲板長を振り落とした。その後、石船長を見つけたアライ容疑者は、銃を乱射した上で、ブリッジ内部の通路から船室へと逃亡した。やがて救出部隊の兵士が「韓国海軍です」と言ってブリッジに入ってきた。船員は「わが軍のことが骨身にしみるほど有り難かった」と語った。

釜山=権慶勲(クォン・ギョンフン)記者

浦項=崔洙豪(チェ・スホ)記者

アン・ジュンヨン記者

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版
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