ソマリア海賊:船員を「人間の盾」に(上)

 先月15日午前7時ごろ、サムホジュエリー号(1万1500トン)の甲板下にある機関室で当直勤務をしていたソン・ジェホ1等機関士は、エンジンの燃焼状態を点検するため、甲板から船尾へと向かった。アラブ首長国連邦(UAE)を出発し、スリランカに向かっていたサムホジュエリー号は、インド洋北部を航行中だった。海は穏やかで静寂に包まれていた。

「海賊だ!」

 再び機関室に戻ったソン機関士は、午前7時45分すぎにけたたましい非常ベルを聞いた。ブリッジで勤務中だったイ・ギヨン1等航海士(46)が緊急事態を知らせるために鳴らしたものだった。ソン機関士がブリッジに電話をかけると、受話器越しに「海賊だ!」という悲鳴が聞こえた。

 チェ・ジンギョン3等航海士(25)は「海賊が船に乗り込んできた。直ちに避難室に避難せよ」と船内放送を行った。韓国人8人を含む船員21人全員は、3-4分で非常通信機、水、食料品などを持ち、避難室に退避し、鉄扉を閉めきった。鉄扉は内側からしか開かない構造だった。そして、直ちに会社に緊急救助要請を行った。ソン機関士は「もしや海賊が鉄扉を開け、つかまるのではないかと思い、避難室の内側にある消火装置を保管するための空間(二酸化炭素室)に入り、ドアに鍵をかけた」と証言した。小型高速艇に乗ったソマリアの海賊は、アルミニウム製のはしごを高さ5-6メートルのサムホジュエリー号右舷中央にかけ、船内に進入してきた。

 1時間ほど過ぎ、サムホジュエリー号に接近した海賊の母船からさらに一団が乗船し、船内の捜索を開始した。閉まっていた船室ドアには銃を乱射した。避難してから3時間が過ぎたころ、避難室の鉄扉を鈍器でたたく音がしたが、鉄扉は壊れなかった。

 しかし、海賊は避難室の天井にあるハッチを大型のハンマーで壊し、乱入してきた。海賊は船員を一列に並ばせた上で、銃口を突き付け、ブリッジに向かうよう指示した。

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版
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