自作は不況に強いという神話

February
02
2011

 1997年、北海道拓殖銀行、山一証券、1998年、日本長期信用銀行、日本債券信用銀行、と大手金融機関の破綻が相次ぎ、金融恐慌からデフレに突入しました。この時代、日本国内経済はリーマンショックよりも酷かったのではないでしょうか?インフレ傾向が一気にデフレ転換するような国内経済の状況というのは、今思えば、半端なものじゃないです。しかし、自作文化は世間の景気状況をあざ笑うかのように、爆発的に拡大し始めたのです。これは一体何故なのだろうと、今もって不思議な気がしています。1997年WiNDyというブランドを作り、1998年~1999年にかけてアルミケースを発売したことが、とても不思議な感じがするわけです。いま、デフレが止まらず、不況を克服できない状況で、新しいウエイブが誕生し得るのか?と問われると皆、当時よりも疑心暗鬼だと思うのです。けれど、当時より少しはましな状況であるならば、有り得ないと考える方が無理がありますね。

 

 当時、不況対策という名目で「IT」がもてはやされたのは確かです。インターネットの普及や「IT技術」を駆使した様々なシステムの可能性が大いに語られていたし、実際に世の中はその方向へと矢のように進み始めていました。そういう社会目標があれば、不況は何とか克服できるのではないか、という実証例みたいなものです。その波に乗って、自作も大いに伸びました。まずは、ハードウエアから。Appleが大いに気を吐いている現状は、その鉄則に従ったものでしょう。スマートphone、タブレットと来て今年は、ノートPCは確実に衰退するでしょうし、国内では数年前からデスクトップPCが、完全に減少傾向に入っています。時代は、手軽な情報端末を求めている・・・今の時代というのはそういう波の只中と言えるのでしょう。

 

 しかし、ここ数年間、あまりにも急激に市場が縮小してしまった自作業界が、昨年のPT2あたりから変化が見え始めています。Windows XPでもVISTAでも7でも動かなかった自作市場が、一枚のデジタル放送キャプチャカードによって大きくうねり始めました。そして、Intelの新しいCPUシリーズに飛び火しました。Sandy Bridgeという新しいGPU内蔵型コアが遂にブレイクし始めました。正直、ブレイクと言っていいと思います。これは地デジTV→PT2→Sandy Bridgeといういわゆるデジタル放送エンコードの流れの一環だという説もあるし、またIntelがオフィシャルにOC機能を持たせた「K」にあるという説もありますが、私はどちらも正しいと思っています。なぜなら双方ともに、ここ数年なかった自作トレンドの大きな転換点であると思うからです。

 

 まず、地デジ関連については、自作業界はほとんど取り残されていたんですね。著作権問題やその解決方法として政府と大手メーカーが目論んだ例のB-CASの影響で、パーツが自由に作れなかったというのが大きいです。もともと、TV局にとってネットは最大の敵とみなされています。おのずと、(地デジカードの)PC搭載を自由化すればネット増長を生む・・・とうい考え方が根底にあるんですね。これと政府と業界(大手家電メーカー)が一体となって作り上げた利益誘導と実質的な権利の寡占化を生み出すシステムが結び付いた。日本の地デジシステム促進のために総務省は、どうも無理がある方向へ誘導しているのではないか、という思いが拭えません。良く考えると地デジに移行しても国民に何のメリットもないからです。しかし、地デジ化は膨大な経済波及効果を生み出すことはまず間違いないわけで、その費用を国民負担という形で捻出しようとする一種の消費税に代表される増税型景気対策なのだということです。しかも将来的には改善されるとはいうものの、今年移行になる地デジは、リアルタイムから約3.1秒の遅延(タイムラグ)を生じるシステムであるということですから、本当にこれでいいのかな?という疑念さえ湧いてきてしまいます。いずれにしても、この影響で自作PCの地デジ対応は大きく遅れることになったわけです。

 

 ところがこれに反旗を翻したのが、フリーオ→PT2というデジタルエンコードカードの登場です。アメリカを含めた諸外国の例では、公共の電波を使うブロードキャスティングでは著作権保護を用いないというのが、通例になっているにもかかわらず、日本は著作権保護を行ったということが、非常に問題視された結果でもあります。元来、無償で配布されているコンテンツに著作権を主張できるのか、という議論から始まって、この著作権論議は完全に決着しているとは言い難いところで、それを飛び越えて総務省と業界が地デジ導入に際して「勝手に!?」クローズドシステムを作り上げてしまったのは、明らかに問題がないとは言えないはずなんです。しかもワンセグはフリーでフルセグは著作権保護というのも論理的な大いなる矛盾です。それでも、DVDやBru-layなどは物販を伴うので何とかコピー防止という著作権保護が認められるという解釈です。またネットコンテンツにしても、有料で有れば著作権が生ずるという解釈に従っているはずでした。それが、この地デジ問題では根底から覆されてしまったわけで、まだまだ、これから議論の余地がありそうです。いずれにしても、地デジにおけるコピー防止機能をカットしたこれらのエンコードカードは大いに人気を博していますね。

 

 そしてフェイズは次へと・・・。その流れ、つまりは現実にデジタル放送のエンコードでは非常に大きなPCパワーが必要なわけで、特に画像サイズに比例する処理量は自作PCの格好の材料になったわけです。PCでデジタル放送を視聴するということはつまり数学(演算)の繰り返しで、データ量も膨大です。これをサクサクとやってやろうじゃないか!というトレンドが自作PCで生まれるのはもはや必然に近いものがあったということで、これがIntelの方向性とズバリ一致したのでしょう。Sandy Bridgeは人気に火がついたわけですね。

 

 また、OC問題も、自己責任→M/Bメーカー主導という流れを長年離脱することが出来なかったわけですが、ここへきてIntel自身がオフィシャルに、しかも他のパーツに影響しない(非常にメーカーらしい)形で、一つの解決策を提起してきたのが、「K」なのです。これは自作業界にとっては極めて画期的なことで、もちろんですがユーザーがそれを大歓迎しているわけですね。ケース屋にとっても常にOCは頭の痛い問題でした。たとえば、あるPCケースではOC出来たのに、これは出来ない!つまり出来ないPCケースは冷却性能が低いと短絡的な評価を受けてしまう・・・。この類の問題は、常に頭痛の種でした。CPUのOCは、確かにCPUの動作温度が低ければ低いほど有利なのは間違いありません。しかしそのことがPCケースの性能差であるというのは、他のファクターがあり過ぎて非常に難しい問題になるはずなのです。パーツのレイアウトや仕様の問題も大きいし、ケーブルによるエアフロー阻害の問題も当然ありますが、もっと根本的にCPUクーラーの取り付け状態によって生じる冷却差は、イの一番に考慮しなくてはいけないわけで、随分と痛い思いもしてきました(苦笑)。ですから、今回のインテルの英断(前回からですが)は、絶対に自作を盛り上げると私は確信していたわけです。

 

 このまま、いけば、自作業界は今年新たな局面を迎えたことは明らかで、私も昨年10月頃からこの課題をいろいろ調べてみて、ある種確信に近いものがありました。そして、経済の状況はあまり好転がみられていないにもかかわらず、何度かこのブログにも「2011年、自作の見通しは明るい」とコメントしたわけです。音楽データの場合、携帯でもPCでもデータ量そのものはあまり違いはないのですから、Appleがiphoneやipodで成功したのは技術的には驚くことではないそうです。しかし、デジタル映像となると話は全く別物だそうで、ハイビジョンまではいかないまでも、フルHDでも映像サイズによっては手に負えないデータ量になる。これを操ろうとすればPCでは、自作以外にあり得ないというい事になるんですね。この役割を、担えるタブレットは出ないし、スマートphoneも不可能でしょう。もちろんメーカーPCは可能ですが・・・。このいわゆる対立意識こそが自作パワーの源泉でもあるわけで、これをきっかけに自作はかなりの盛り上がりを見せると思っていました。OC問題もまた然りです。

 

 それが・・・今回のIntel チップセット問題で歯がゆい思いをする結果となってしまいました。しかし、逆にこれが自作業界にとっては、ある意味幸運をもたらすのではないか、と私は思います。現在アナウンスされているスケジュールは、2月末までに対策品の出荷を開始し、搭載マザーボードや搭載PCが通常供給となるのは4月だろうというもの。これで、ますますSandy Bridgeに火がつくことはPT2の例からも明らかでしょうね。Intelが遅れれば遅れるほど、人気は高まると思います。なぜなら7月26日に近付くからです。

 

 不況を救うのは、新たな業界トレンドであることは間違いないですね。自動車業界も、ハイブリッド車指向、EV指向というトレンドが生まれて(というか強引に作り出して)この不況を乗り越えようとしているわけです。それと同じようにようやくPC業界でも新たなトレンドが出てきた。それがタブレットであることは間違いないですが、自作に限って言えば、デジタル放送対応やOCのほうが影響は大きいのだと思っています。それに引き摺られるように、PC全体がボトムアップする・・・そういう年に2011年は必ずなると思っています。

 

 当時、自作業界は不況に強いと言われました。猫も杓子も「IT」と言われた時代、不況下でグングンと業績を上げていました。新しいトレンドの出現がデフレを追い越していた時代でもありました。今年を起点にして、自作はまた徐々に盛り上がりを見せると私は確信しています。

 

 

 

  

Posted by hoshino | この記事のURL | コメント (2) |

コメント

Re: 自作は不況に強いという神話

残念ながら、この記事に限らず誤字脱字などが目立ちますし誤解によって記事が書かれているように見受けられます。

GPU内蔵CPUはSandy Bridgeからではなく、1年前のCore i5 600シリーズ(Clarkdale)から、Kモデルは2010年6月のCore i7 875K/i5 655Kで半年以上も前に登場しており、それを今年のSandy Bridgeからであるかのように書くのはいかがなものかと思います。

御社では取り扱いをしないと決めているはずのPT2を何度もブログに書くのも非常に疑問ですが、アースソフトの製品としてはPT1、PV1~PV4が過去にあり、入手が難しい事も手伝って人気商品であったため、記事で述べられているような「PT2で自作業界に火が付いた」といった事はありません。

厳しいようですが、代表取締役社長という立場にある者がこのような基本的な事で間違いを繰り返すような会社の製品は、少なくとも私は絶対に購入したいとは思いません。

Posted by: 瀬川泉 at February 05,2011 04:25

Re: 自作は不況に強いという神話

失礼ですが、貴兄のコメントの趣旨が私にはまったく理解できません。IntelのCPUに関してもPT2に関してもですが・・・。弊社の製品を買う気になれないという意志の表明のためですか?誰にそういう意志を表明なさるおつもりですか?私に?

Core I7でKモデルなら欲しいと思う自作ファンが多いと記しています。PT2は最も人気が高まったと記しています。どこか間違いがあるのですか?

再度の書き込みは結構です。争うためにブログ書いているわけじゃないですから。


Posted by: HOSHINO at February 05,2011 12:57

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