「WBC世界Sフライ級タイトルマッチ」(5日、大阪府立体育会館第1競技場)
前WBA世界スーパーフライ級王者の名城信男(29)=六島=が、王者トマス・ロハス(30)=メキシコ=に判定負け。国内4人目となる2度目の王座返り咲きは果たせなかった。進退について名城は「考えたい」と話したが、六島ジムの枝川孝会長は採点結果に不服としてWBCに再戦を求め提訴することを明言。現役続行を後押しする考えを示した。
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気負いが空転した。闘志を前面に出し、果敢なアタックを繰り返したが、最後まで長身王者を捕まえきれなかった。逆に強引に入ったところに右フック、左ストレートを合わされた。赤い甲冑(かっちゅう)を身にまとって登場した『侍』名城が、決死のリングで玉砕した。
「これで負けたら、次はない」。今世界戦発表の席上で、きっぱりと言い切った。ラストチャンス‐。この思いが強すぎた。肩に力が入り、接近戦で連打をまとめられない。4回終了後の採点発表で0‐2。「冷静にボクシングしたら余計に離されてしまう」と、さらに空回りする悪循環に陥った。
結局は0‐3の判定負け。8回終了後の採点は5、3、1ポイント差の王者リードで、「残り4ラウンドを取れば勝てる計算だった。いけたかと思ったけど…」と唇をかんだ。「自分の力は出せた。やれることはやったと思う。でも負けたんで悔いはあります」と顔をゆがめた。
3度目の世界王座奪取に向けて、昨年12月に2週間の東京スパー合宿を決行した。世界ランカーの五十嵐俊幸(帝拳)や、アマチュアの大学生とも手合わせ。“東京出稽古”は初めて世界王座に挑戦した06年7月のカスティーリョ戦前にも行い、元世界王者の川嶋勝重(大橋)らと拳を交えて腕を磨いた。原点に立ち戻ることで、がむしゃらに世界王座を目指した当時を思い起こした。
1月12日に第1子の長女・柚希ちゃんが誕生。直後から自宅近くにウイークリーマンションを借りて一人暮らしを始めた。「一緒にいると気持ちが和んでしまう」と、心を鬼にして“別居生活”に踏み切った。全てをかけて臨んだが、結果を出すことはできなかった。
名城は進退について「考えたい」と明言を避けた。ただ陣営は再戦を求めWBCに提訴するとし、再起の道を用意する構えだ。2度王座に就いた不屈の男が、これで終わるとは思えない。
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