春場所中止！６６年ぶり３月に両国で無観客場所開催へ…八百長メール問題

静まりかえる両国国技館の土俵と観客席

　八百長メール問題で揺れる日本相撲協会は６日に両国国技館で臨時理事会を開く。会合では大相撲春場所（３月１３日初日・大阪府立体育会館）の中止を正式決定する。これを受け、理事会では３月に両国国技館で観客を入れない非公開での開催を議論することが判明。決定すれば１９４５年６月の夏場所以来、６６年ぶりの非公開場所が実現する。一方、特別調査委員会による調査の長期化により春どころか５月８日に国技館で初日を迎える夏場所の中止も浮上してきた。

　春場所の中止が決定的になった。６日の臨時理事会で決議する。ある理事は「こんな状況で場所を開けば混乱を招くだけで各方面に迷惑がかかる。協会執行部は決断した」と断言した。

　完全に中止になれば戦災の影響で旧両国国技館の改修が遅れた１９４６年６月の夏場所以来、６５年ぶり２度目で、不祥事での中止は史上初の汚点。１場所の収入は入場料、ＮＨＫのテレビ放映権料など約１３億円とみられ、八百長メールで協会は大きな損失を被る。

　大阪での本場所は中止するが、一方で複数の関係者によると、３月に両国国技館で観客を入れない非公開での場所開催を理事会で検討することを明かした。財団法人の協会は規約で「力士の技量を審査するための相撲競技およびその他の事業を実施する」という寄付行為施行細則がある。

　このため入場料を取る興行としての本場所は中止するが、規約に従い、日々稽古に精進する力士のために番付を維持する目的で非公開で場所を開く可能性がある。過去に非公開場所は戦禍の拡大を理由にした４５年６月の夏場所に１度だけ行われた例がある。非公開になれば当然、天皇賜杯などの外部表彰もなくなるはず。誰もいない国技館で横綱・白鵬が、大関・魁皇が、土俵に上がり１５日間の取組を務める異常事態になる。

　協会広報部によれば優勝や勝敗の成績は、記録として残る。仮に非公開が決まり、白鵬が１９回目の優勝を飾り朝青龍に並ぶ史上最多タイの７場所連続優勝を果たしても、館内から拍手も起きない実に寂しい栄光となってしまう。こうしたことを考えても観客のいない状態で各力士は、同じ精神状態で取組が取れるのか疑問。完全に中止か、非公開での開催か。臨時理事会で、一気に決断を下す見込みだ。

　興行としての本場所中止は春場所だけでない。八百長メール問題を調査する特別調査委員会は、該当する１４人の力士の携帯電話のメール、銀行預金通帳などの物証を分析する方針で、同委員会の伊藤滋座長は「結論が出るまで最短でも１、２か月かかる」と長期化を断言した。これを受けある理事は「５月の夏場所も微妙」と不安を漏らす。問題が解決しなければ春から夏、さらに名古屋…と本場所が連続して中止になる前代未聞の事態も浮上。八百長メールが国技の屋台骨を確実に崩してきた。

　◆過去の非公開場所　１９４５年６月に行われた夏場所が旧両国国技館で観客を入れない非公開で行われた。理由は同年３月の東京大空襲を経て激しさを増す戦禍から観客を守るため。観客は特別な招待者のみ。６月７～１３日まで７日間で行われ、前頭筆頭の備州山が７戦全勝で優勝した。床山が不足したなどの理由から横綱土俵入りの力士以外はちょんまげ姿だった。国技館での取組は十両以上とし、幕下以下は春日野部屋の仮設稽古場で５日間行われた。なお双葉山は２日目から休場し場所後に引退。「不世出の横綱」の最後の横綱土俵入りは寂しいものとなった。