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「救済」のゆくえ 過去から学ぶ新たなウィルス肝炎総合対策と私たちの課題

陶山としか2008/03/09
薬害などの救済の「認定」には必ずどこかで線引きされるので、治療費の引き下げや生活支援など政治的解決が必要になる。先の薬害肝炎和解後に寄せられた批判はその点に向かわず、提訴した原告だけが得をしている、というものが多かった。世間では「救済済み」と思われている薬害などもまだ多くの問題を抱えていることを認識したい。
日本 医療 NA_テーマ2
目次
(P.1)
薬害肝炎和解後に寄せられた激しい非難
(P.2)
◆実は「救済」されていない薬害肝炎


◆実は「救済」されていない薬害肝炎

 すでに政府が約束しているので、何らかの形の政治的な判断による救済はこれから実現するはずです。それを座して眺めていては、とんでもないことになるかもしれません。その典型が、今回寄稿いただいたアスベストの例です。

 アスベストによる(悪性)中皮腫は、発症から1年半ほどで大半の人が亡くなってしまう、非常に厳しい経過をたどる病気です。その病気と闘いながら経験する、「生存手続(労災と違い、死亡後の申請は認められない)」「手続後給付主義(治療期間に関係なく、本人が手続きをした以降の分しか給付されない)」による不利益は、当事者になってみなければまず気づかない不利益でした。

 さらに、「救済給付調整金」はこの3月で打ち切り、救済法施行前に死亡していた場合に給付される「特別遺族弔慰金」と「特別葬祭料」、労災時効が成立している場合の給付も2009年3月で打ち切られます。ちなみに、遺族に給付される金額は280万円に過ぎません。救済が行われたと多くの人が信じているアスベスト問題も、このようにすでに切り捨てられようとしているのです。

 また、ハンセン病では、補償が非常に緩慢だったことも問題ですが、「救済」された後も、ハンセン病に対する差別や偏見がなくなったとは言えません。ウイルス性肝炎もまた、同様の問題を抱え、それが解消されるとは考えにくい現状です。

 薬害肝炎の原告を非難することに終始したり、証拠がなく裁判できないことを嘆いているばかりでは、その結果は推して知るべしでしょう。また、薬害肝炎が救済されたと思っている人も、いま一度、現状をご覧いただき、ぜひ、問題解決のために声を上げていただきたいと思います。

 現在、日本肝臓病患者団体協議会では「新たなウイルス肝炎総合対策の推進を求める国会署名・募金活動」に取り組んでいます。下記のサイトから署名用紙もダウンロードできます。ぜひとも、ご協力ください。

関連サイト:
NPO法人マスコミ市民フォーラム
(月刊「マスコミ市民」=販売:アストラ=は、全国の書店で注文できます。)
署名用紙のダウンロード(blog:肝臓のなかまたち (第二世代))

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