※何となく思いつきで書いて見たものです
トボトボとみすぼらしい格好で歩いてる青年が一人
まるでホームレスかと言わんばかりの汚い格好…ヨレヨレでボロボロの着物を纏って、トボトボと
ヨレヨレのボロボロでトボトボと…。
(…腹ァ、減ったなぁ)
杖をつきながら、黙々と進んでいく青年
(あー…歩けど歩けど人には会わず、進めど進めど場所も分からず…)
腹の虫がきゅ~っと鳴るが、今空腹を満たす物は何も無く、何だが少し泣けてくる。泣かないけども
トボトボとフラフラと危なげに一歩一歩歩いていく
(しっかし、日の本の何処にこんなだだっ広いとこあんだかねぇ)
目を瞑りながら荒野を歩く青年
(こんな事なら握り飯くらい作ってもらやぁ~よかったかねぇ)
そんな事を考えて歩いていると杖にコツンと、石の様な手応えが返ってくる
杖が当たった場所に手で触れてみると、椅子代わりになりそうな大きさの岩があった
よっこらせっと、と岩に腰をかけて休憩を取ることにした
大きなため息を付くと、今までの疲れだろうか、身体に鉛が乗っかった様に重く感じる
誰か通らんかねぇ…と呟とボケーっとして見る
実は彼、迷子である
迷子というのは可笑しいだろうか?
6歳頃に家族と旅行を楽しんでいた時、目の前が眩しい光に覆われたと思ったら
時代を逆行したのだろうか江戸時代に流れ、戦国時代に流れ、遠くは鎌倉、近くは明治時代
時代を転々と渡り歩いていく人を何と言えばいいのだろうか?目的地に付かない事だけを指すならばやはり迷子なのか?
今回は明から密輸商が持ってきた銅鏡なるものを見た瞬間に飛ばされ、旅支度も出来ないまま(いつもの事だが)飛ばされること
になった
ようするに時代を遡り、色々あってボロ屑のような格好になりながらも懸命に生きてたら迷子に…という訳だ
あ~…お米が恋しいな
目を瞑ったまま空を見上げる
こういう時は大概お天道様は晴れてんだろうな
そんな事を考えながら休憩を続ける彼
背負った荷物から三味線を取り出し撥で弦を弾きながら、観客など一人もいない荒野で今の自分の気持ちを歌で表現する。聞く
者が聞けばそれはそれは同情し憐みを呼ぶほど悲しい旋律で、心で泣いている言葉が正に歌に現れたのかもしれない
何故にこの世はこんなに無情…というか何でこうなった…と
実は激動と戦乱の時代の真っ只中に居るとは露とも知らず、演奏を終えのんびりと休憩をする青年であった
休憩もそこそこに再び当てもなくトボトボと歩いていく,歩けど歩けど、人っ子一人おらず…。オレハドコ?ココハダレ?
ふと左目の瞼を開けてみると、目の前には荒野が広がっていた。判ってたけどね…。
再度両目を瞑り風の向くまま気の向くままに歩いていると…
足音が聞こえてきた、距離からして2町程度だろうか?
聞こえてくる音は多数…5人くらいかだろう、足音に…これは剣だろうか?
関わりあいにならない方がいいなと、大きく迂回して避けようと歩みを進めるが
(やれやれ…)
足音はこちらへと近寄って来ていることから、明らかに此方を狙っているんだろう
面倒事は御免なんだが、厄が集まりやすいとでもいうのだろうか?
のんびりしてる時や疲れている時、または困っている時程面倒事がやってくる
足音が慌ただしくなり、此方を囲むように回り込む。進行方向に止まった人物は道を退ける気は無いのだろう
鞘から剣を引き抜く音がする。
何だ?天は俺に七難八苦を与えるつもりか?特に何か乗り越えたい等と考えた事などないぞ
「おい」と声を掛けられるが返事をするにしてもなんて答えればいいのだろうか?
大体昔からこういう事が起こり過ぎなんだよ。疲れて眠りたい時に限って伊賀と甲賀の争いに巻き込まれる事になった時は絶望
感に襲われて腹を切りたくなるし…切らないけれども!?
再度「おい!」と語気を荒くして呼びかけるが此方の心境も読んで欲しい。ある程度人が考えている事を読めないとやっていけれ
んですよ。世の中って奴はね?
「この『女(アマ)』ッ!!」と剣を振り上げ
同時に右手で掴んでいた杖の柄を引き抜く
一瞬何かが擦ったと思えるような鞘走りの音と共に横薙ぎに走る閃光
空中に描かれた一文字の線、振り上げた手を下ろす事無いまま首と腕の切断部から血がヌルリと流れ落ち、何が起きたか首を傾
げ様とした折に転がる頭と腕を見る事ができただろうか。
横薙ぎの斬撃をそのままに半歩、身体が旋回させ二人目の腹に刃を添え、右手から左手に瞬時に持ち替え、引き抜くかの様に線
を走らせる。
勢いを殺さずくるりと回るように右へ一歩、二歩、そして半歩目で大地を踏み込み、三人目を逆袈裟に切り裂く
振り抜きつつ、後ろに飛び退り、逆手に持つは、杖から引き抜かれた刀、長年愛用して来た刃毀れも知らない鋭さに定評のある
相棒である、折れるたびに買いなおしているが仕込んでいる杖はずっと同じ物だ
というか仕込杖舐めんな、反りが無くて切り難いわ!
と思いつつも背中から4人目にぶつかる、逆手に持った獲物をついでに腹部に地面と水平に突き刺し、前進と同時に真横に引き裂
きながら獲物を右手に持ち替え、二人目の時点で地面に垂直に立っていた鞘の部分、杖が傾き始めたか否や、左手で掴み、瞬時
に刀を収めて最後の五人目に向き直る
目の前で何が起きたか理解できていないのか呆然と立っている男に
「この近くに村か街ってある?」
と尋ねると
「え・・・ああ・・・あちらに」
片目を開き、男が指を差した方向を確認する。あっさりと返事が返ってきたのは少し予想外だったが…。
一瞬腕がぶれると同時に5人目の男が骨が砕ける鈍い音と共に空へと舞う
一生物を噛めなくなるように男の顎を砕いた杖を持ち、男が差した方向へと足を運ぶ
襲いかかってきた男達の頭に巻いてある黄色い布が宙を舞いヒラヒラと天へ上がっていき、暫くすると地に落ちた
この迷子の少年
名は『北郷一刀』という