もちろんすべての国が同じ傾向を示しているわけではない。アメリカでは80年代以降、所得格差は再び拡大し始めている。02年にはアメリカの上位0・1%の最富裕層(その数は15万人にすぎない)は、全個人所得の7・4%という圧倒的なシェアを占めていた。日本とフランスは2・0%、イギリスは3・3%である。この点に関して言えば、ユニークなのは日本ではなく、むしろアメリカだった。最近の金融危機でわかったように、最富裕層をさらに豊かにすることは経済的パフォーマンスを高めるとは限らない。
有権者の増税拒否が格差拡大を招いた
40年代の日本社会の大きな変化は、経済力と政策の変化によって説明できる。
第2次大戦前は一部の資本家と地主が日本を支配していた。最富裕層の所得源は地代と株式配当だった。だが、戦後のインフレと農地改革で地主の富と政治力が一掃された。55年に誕生した自由民主党は、地主ではなく、農民を選挙基盤と見なすようになった。大戦前には企業の利益の70%が配当として株主(主に個人)に支払われていた。他方、所得税と固定資産の税率は極端に低く、長子相続制度(47年に廃止)により富は何世代にもわたって一括相続されていた。
大戦後、財閥解体と企業の“法人化”、銀行の影響力増大が経済と政治の基礎を変えた。企業は株主ではなく、経営者によって運営されるようになったのだ。銀行と企業、自民党、官僚の同盟は、株主の利益を高めることにまったく関心を持たなかったため、富裕層に対する所得税と相続税は引き上げられた。
過去20年間に日本の格差は再び拡大している。ただ、それはアメリカとは違い、少数の富裕層がさらに多くの富を手に入れたからではない。日本の所得格差が拡大したのは、貧しい人々が増えたからだ。
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