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[事件]ニュース トピック:主張
【主張】新燃岳噴火 泥流の被害拡大に備えよ
霧島連山・新燃(しんもえ)岳の活発な火山活動が続いている。火山噴火予知連絡会も江戸時代以来、約300年ぶりの本格的なマグマ噴火であることを確認した。江戸期のような活動の長期化や活発化の可能性も否定できない。
菅直人首相は関係閣僚会議で灰対策への指示を出した。政府による防災と観測への早急な取り組み強化を期待したい。
新燃岳は先月26日から頻繁に爆発的な噴火を繰り返している。黒い噴煙が空高く立ち上り、季節風で運ばれた大量の火山灰が宮崎県内に降り積もっている。
農作物の被害も出ている。住宅地での降灰の片づけに追われる住民の労力も大変だ。鹿児島県でも噴火に伴う空振で建物の窓ガラスの割れる被害が発生している。
今後は「2つの流れ」への注意が必要だ。1つは火砕流である。火砕流には、高熱の溶岩ドームの崩落に伴うものと、噴煙中の火山灰などが濃密すぎて上昇しきれずに発生するものとがある。新燃岳で可能性があるのは、後者のタイプだ。山頂より高い位置から落ちてくる分、勢いがある。
もう1つの流れは、泥流だ。山の斜面には大量の火山灰などの噴出物が堆積している。ここに雨が降ると泥流やさらに激しい土石流が起きる。火山泥流は洪水より大地を削り取る力が強いので被害が拡大しやすい。
泥流は可能性ではなく、雨が降れば確実に起きる。しかも大雨でなくても発生し得るので、要注意の二次災害だ。
環太平洋火山帯の日本列島には108の活火山がある。世界の活火山の7%が、国土面積で0・25%にすぎない日本に集中しているのだから噴火は生活圏の近くでも起きる。40人を超す人命を奪った雲仙・普賢岳の大火砕流は、ちょうど20年前の出来事だ。
江戸時代の新燃岳の大噴火は2年ほど続いた。今回の活動は、どのような経過をたどり、いつごろ終わるのか。地元の人々が最も知りたいところだが、現在の火山学では明確な答えを出せない。
専門家にとって大規模な噴火を研究できる機会はまれだ。この難局を梃子(てこ)に火山学と防災研究を前進させてほしい。地元の人々には災害に屈することなく、火山と共存する道を探ってもらいたい。災いを転じて苦境を克服する方策を国民全員で考えたい。
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