地球温暖化の原因として悪玉扱いされている二酸化炭素(CO2)を原料に、樹脂や医薬品など役に立つ製品をつくろう。ノーベル化学賞を受賞した根岸英一・米パデュー大学特別教授が「人工光合成」の研究を提唱している。
日本が強い有機化学の技術を生かせ、世界の環境や資源問題の解決につながる。すでに一部の化学会社では研究を始めており産学の力を結集して取り組む価値はある。政府が研究を支援するなら、若い研究者の力を生かして進めてもらいたい。
植物は太陽光をエネルギー源にして、CO2と水から酸素と糖を生み出す。光合成反応だ。根岸さんの狙いもCO2の原料化だが、つくりたいのは糖ではない。化学製品や薬の原料だ。「人工光合成」は、話をわかりやすくするたとえだろう。
三井化学はすでにCO2から化学製品原料のメタノールを製造している。帝人や住友化学は東京大学などとともにCO2から樹脂素材をつくる技術を開発中だ。
過去100年近く、様々な製品の原料に使われてきた石油資源は次第に希少になり、長期でみれば値段は上昇する一方だろう。「長期戦略としては石油資源に頼らない、新しい資源体系に向けた基礎研究も重要だ」(三菱化学の小林喜光社長)と化学会社はみている。
それにはCO2を使う合成技術を今よりずっと効率的で低コストにする必要がある。そのカギを握るのが、根岸さんと、北海道大学の鈴木章名誉教授らがノーベル賞を得た金属触媒にほかならない。
根岸さんは仲間の研究者とともに文部科学省を訪ね「人工光合成」への支援を求めた。
税金を使って後押しする研究にするなら、達成目標と年限を明確にして取り組むべきだし、思い切って若手研究者の主導で進めてはどうか。ノーベル賞級の発明を生むのは30歳代が多い。「才能ある若者を伸ばしたい」は根岸さんの持論でもある。
学界の長老的な人たちが取り仕切るのではなく、公開討論会でも開いて、どのくらいの資金を投じ、だれをリーダーにするのか、オープンに議論して決めたらいい。それでこそ未来を開く研究といえる。
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