景気を後押しするには金融緩和を続けるほかない。けれどもその緩和策は新興国のインフレやエジプトなどの政情不安を引き起こしたのではないか、とも批判される。
米国を筆頭に先進国の中央銀行が直面する難問である。バーナンキ米連邦準備理事会(FRB)議長が異例の記者会見をしたのも、その状況にどう取り組むかという自らの考えを示したかったからだろう。
「米国の金融政策のせいにするのは不公平だ」。FRBの追加金融緩和が、新興国のインフレの元凶かとの指摘に、議長は真っ向から反論した。「緩和の狙いは国内景気の刺激であり、米景気が過熱していると考えている人はいないはずだ」
議長は「新興国は自らの需要超過に対する政策手段を持っているはず」とも述べた。だが経済規模の小さな新興国に大量の資金が流れ込めばインフレやバブルが起きやすい。世界的なカネ余りが国際商品高騰の一因であるのも否定できまい。
そうした事情を承知のうえで「無関係」を強調するのは、FRBが物価安定とともに雇用の最大化を求められているからだ。足元の景気が上向いても「失業率が正常な状態に戻るには数年かかる」というあたりに苦しい胸の内がうかがえる。それは金融緩和策が長引いて世界的なバブルを招くリスクをはらんでいる。
欧州中央銀行(ECB)のトリシェ総裁の言い回しも揺れている。欧州の財政・金融危機は深刻で、金融緩和をやめる環境ではない。
ところが食料・資源の高騰で、1月の消費者物価上昇率は前年同月比2.4%と、ECBがメドとする「年2%未満」を上回った。インフレ加速を容認しているととられないよう、といって早急な引き締めと受け取られぬよう綱渡りを続けている。 一方、円高で輸入物価の上昇がある程度、吸収されている日本は、金融緩和継続が自明のことと受け取られている。需給ギャップがデフレの圧力となっていることを考えれば、緩和策は理にかなっている。
ただ、金融緩和を続ける間に経済の構造改革が進み、新産業が育つのでなければ、緩和は不採算の産業の温存策になってしまう。またゼロ金利の円資金を調達し高金利通貨や商品などに投資する「円キャリー(借入)」取引が膨らみ、グローバルなバブルの一因ともなりかねない。
リーマン・ショック後の非常時対応である金融緩和をいつまで続けるべきか。緩和策の副作用にも十分な目配りが必要な局面に主要国の中央銀行は入りつつあるようにみえる。
バーナンキ、FRB、トリシェ、ECB、エジプト、金融緩和、中央銀行、新興国、米連邦準備理事会、緩和策、インフレ、円高
日経平均(円) | 10,543.52 | +112.16 | 4日 大引 |
---|---|---|---|
NYダウ(ドル) | 12,092.15 | +29.89 | 4日 16:30 |
英FTSE100 | 5,997.38 | +14.04 | 4日 16:35 |
ドル/円 | 82.21 - .24 | +0.62円安 | 5日 5:48 |
ユーロ/円 | 111.68 - .72 | +0.54円安 | 5日 5:48 |
長期金利(%) | 1.280 | +0.045 | 4日 17:50 |
NY原油(ドル) | 89.03 | -1.51 | 4日 終値 |
経済や企業の最新ニュースのほか、大リーグやサッカーなどのスポーツニュースも満載 詳細ページへ
日経ニュースメール(無料)など、電子版ではさまざまなメールサービスを用意しています。
(詳細はこちら)