きょうの社説 2011年2月5日

◎新幹線駅舎整備 地域の顔として個性競え
 北陸新幹線の駅舎整備で、新黒部(仮称)、新高岡(同)に続き、富山駅のデザイン案 が固まった。残る金沢駅も、鉄道建設・運輸施設整備支援機構がこれから三つの原案を示し、絞り込みの段階に入る。

 新しくできる駅舎は目に見える形で開業近しを告げる象徴的な存在である。玄関口の姿 が出そろえば期待感は一気に高まるだろう。地元の付帯意見を反映させてデザインが正式決定すれば順次、実施設計に入り、着工の運びとなるが、これからはハード整備に合わせ、玄関口としての機能を充実させることも重要なテーマになる。

 黒部市は、黒部川扇状地を水博物館に見立てる「フィールドミュージアム」構想の中核 施設として新駅を位置づけ、水をテーマにした多彩な仕掛けを設ける方針を打ち出した。立山連峰の雄大なパノラマと扇状地の豊富な水資源は黒部最大の魅力であり、駅を「水の国」のシンボルにする発想は楽しみである。このように地域の個性をできる限り駅に取り込むことは、他の地域にも共通する課題といえる。

 金沢駅では構内にブランドショップを集積させ、ファッション拠点にする動きが出てき た。金沢駅ではとりわけ「駅ナカ」の充実がかぎを握る。ショッピングのほか、北陸の情報拠点、文化拠点としての性格付けも重要である。当面の終着駅にふさわしい姿を官民一体で描いていきたい。

 富山駅はガラスの広大な外壁に雪の立山連峰や立山杉の木立を表現したデザイン、新高 岡駅は瑞龍寺の回廊や縦格子、新黒部駅は黒部の自然をウエーブラインで表現したデザインが選ばれた。全国チェーンのホテルや商業施設などに埋没し、金太郎飴のような駅も多いなかで、北陸新幹線の駅舎は内部の意匠に至るまでこだわりを持ちたい。

 それぞれの駅が駅本来の機能を徹底的に追求し、イメージの異なる駅舎が個性を競い合 えば、北陸新幹線全体の価値を高めることになる。洗練された駅舎デザインを生かすには、周辺の街並み整備も大事である。魅力的な駅づくりは新幹線時代の都市づくりの一歩にもなる。

◎ラムサール登録目指す 住民が水辺の恵み知ろう
 加賀市の柴山潟流域環境保全対策協議会などは片野鴨池に加え、柴山潟と大聖寺川流域 もラムサール条約の登録を目指す。鴨池の水鳥は、これらの地域の水田などを餌場としており、柴山潟干拓地は北陸最大級の水鳥の越冬地にもなっている。そのために鴨池だけでなく周辺の潟や河川の環境保全も欠かせないと判断して、一体的な条約登録への活動を強化することになった。

 渡り鳥が鳥インフルエンザの運び屋とされ、感染症の新たな問題になっているが、野鳥 が集う豊かな自然の価値が損なわれるわけではない。登録に向けた取り組みを盛り上げるには、まず住民が身近な水辺の恵みについて知ることが必要である。活動を機に、地域の環境の現状や課題などをこれまで以上に周知して、潟や河川の環境保全と活用を進めていきたい。

 加賀三湖の一つとして農業や漁業など、地域の生活を支えてきた柴山潟は、干拓やごみ の増加などの要因で水質が悪化し、1996年に設立した柴山潟流域環境保全対策協議会などが潟の環境改善に取り組んできた。ラムサール条約は、水鳥などが生息する国際的に重要な湿地の保全と賢明な利用などを柱にしており、協議会が進めてきた潟の保全活動にも通じる。登録に向けては、広く住民の理解を得る必要があり、登録の趣旨とともに、ふるさとの自然の大切を住民に伝えることが大事である。同協議会と自治体、関係機関が連携を深めて、環境保全活動を展開してほしい。若い世代には、潟や河川の現状や歴史を学ぶ環境教育の格好の機会となる。

 柴山潟と大聖寺川流域が登録されると、鴨池に加えて「水鳥の楽園」のエリアが広がり 、美しい自然に恵まれた石川のイメージアップにもつながるだろう。温泉や定評のある潟からの白山の眺望などと合わせて、観光誘客の新たなセールスポイントにもなり得る。

 小松市でも加賀三湖の木場潟や周辺河川の住民らによって、潟や河川の環境・景観保全 の取り組みが強まっている。暮らしに潤いをもたらしてきた各地の水郷の再生を期待したい。