クラスター爆弾:「国内使用認めよ」米国、アフガンに圧力

2010年12月5日 2時30分

 クラスター爆弾禁止条約(オスロ条約、今年8月発効)に署名したアフガニスタン政府に対し、未署名の米国政府が条約で禁じられた同爆弾の使用や備蓄をアフガン国内で認めさせるよう働きかける指令を米外交官らに出していたことが、内部告発サイト「ウィキリークス」が暴露した米外交公電からわかった。アフガンで使用が制限されれば駐留米兵らを「危険にさらす」というのが主な理由。戦争遂行を最優先し、条約を骨抜きにする動きとして批判が出そうだ。

 公電によると、アフガンのカルザイ大統領は、米政府に「条約に署名しない」意向を伝えていたが、08年12月3日の署名式直前に、方針を転換して政府代表が式に出席、署名した。

 これに対し、当時ブッシュ政権下の米国務省は同年12月29日、キミット国務次官補名でカブールの米大使館などに公電を出し、オスロ条約で禁じられた同爆弾の使用や備蓄、移動を認めるようアフガン政府に働きかけることを指示した。

 オスロ条約は加盟国に対し、非加盟国との軍事協力や軍事作戦への参加を例外的に認めている。しかし、加盟国の多くは非加盟国との軍事作戦でもクラスター爆弾の使用などを禁じている。

 しかし、公電では、この条文に触れて「米国が条約加盟国の領土内で米軍のクラスター爆弾を使用、備蓄、移動する余地があると信じる」との解釈を強調。米外交官らがアフガン外務省や国防省の幹部らに、「米国と同じように解釈」させ、アフガンの条約署名が「米軍の軍事作戦に与える影響を最小限にする」よう指示した。アフガンでの使用が認められなければ、「米兵、アフガン兵、同盟国兵士の生命を守る能力を阻害すると(アフガン側に)強調」するよう求めた。

 また公電では、01年の米軍によるアフガン侵攻後、クラスター爆弾の被害が多発したほか、米軍の空爆への反発があることも考慮し、米国からの働きかけが「表面化しないよう」指示。アフガンでの米軍の同爆弾の備蓄量は「非常に少なく」、不発弾被害の減少に米国が「多大な努力」を払っていると訴えるよう求めた。

 この公電が出されて以降、アフガンでクラスター爆弾の使用が明らかになった事例はない。【斎藤義彦】

 【ことば】クラスター爆弾禁止条約 紛争などの終了後も不発弾が多数の市民を殺傷しているクラスター爆弾の使用、製造、保有を禁じる条約。加盟国に8年以内の備蓄の廃棄と、10年以内の不発弾除去を定めた。ノルウェーなどの有志国や国際NGO(非政府組織)が主導する「オスロ・プロセス」で話し合いが進められ、08年5月に合意、同12月に署名式を行い、今年8月に発効した。現在、日本など47カ国が批准している。

top

PR情報

アーカイブ一覧

 

おすすめ情報

注目ブランド