新日本製鉄と住友金属工業が2012年10月をめどに合併する方向となった。鉄鋼は限られた国内市場を粗鋼、鋼材など数多くのメーカーが奪い合っている。過当競争を続けてはグローバル競争から取り残されるとの危機感が合併の背景にある。
国内市場に企業がひしめくのは家電、化学、工作機械、建設業界なども同じだ。過当競争で企業の収益力が落ちれば技術開発に投資する力も弱まる。価格支配力が著しく強まり、顧客に迷惑がかかる企業や事業の統合は除いて、経営者は積極的に企業再編に踏み出すべきだ。
国内粗鋼生産で新日鉄は首位、住友金属は3位。だが粗鋼は大手の高炉メーカー以外にも、国内約50社の電炉メーカーが生産している。07年に1億2000万トンあった国内粗鋼生産は内需の持ち直しが遅れ、昨年は1億トンの水準にとどまっている。
自動車メーカーなどの間では円高による海外生産移転の動きがある。鉄鋼の国内需要の大きな伸びは望みにくい。加えて資源大手の要請で、昨年から鉄鋼原料の値決めが1年ごとから四半期ごとに変わり、原料価格が上がりやすくなったことも鉄鋼メーカーには痛手になっている。
鉄鋼は海外の新興勢力が急成長中。インド出身経営者が率いるミタルは05年に粗鋼生産で世界首位になり、欧州アルセロールも買収した。
世界の粗鋼生産は新興国需要がけん引し、10年は14億トンを超え過去最高になった。中国の伸びが著しく、世界生産量に占めるシェアは4割強に達する。70年代に15%を超えていた日本のシェアは7%にすぎない。かつて世界首位だった新日鉄の粗鋼生産シェアは09年に6位だった。
国内の過当競争に歯止めをかけ、国際競争力を高める必要に鉄鋼メーカーは迫られている。新日鉄と住友金属の合併ではシェアが過度に高まる事業や製品がないか、十分に審査する必要があるが、経営資源の一体化で自動車の軽量化などにつながる新しい鉄鋼技術を生みやすくなる。設備再編でコスト競争力も高まる。
鉄鋼以外でも海外企業の成長が著しい。繊維は中国企業が技術開発に力を入れている。国内の企業数が多いため収益を上げにくく、開発投資が限られる日本企業の脅威だ。
工作機械も中国、台湾、韓国メーカーの技術は急速に高まっている。日本はメーカー数が大手・中堅だけで100社を超え、開発資金を十分に確保できない心配がつきまとう。新日鉄と住友金属の選択は、過当競争に苦しむほかの業界の経営者にとってもひとつの指針になる。
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