2011年2月4日15時10分
カイロ中心部のタハリール広場周辺で3日、大統領支持者からの投石に備える反政権デモの参加者たち=越田省吾撮影
【カイロ=北川学、前川浩之】「政権の『プロパガンダ(宣伝)マシン』にはなりたくなかった」――。反政権デモが続くエジプトで、国営テレビの女性キャスターが3日夜、米CNNなどに電話出演し、報道統制への抗議のため辞職したと語った。一方で、外国人記者や人権活動家への嫌がらせも多発。「追放の金曜日」と名付けられた野党勢力の大規模デモを4日に控え、政府批判の広がりを抑え込む動きとみられる。
シャヒラ・アミンさんは英語放送「ナイルテレビ」のニュースキャスター。2日、ムバラク大統領派が反政権デモ隊を襲撃した現場に居合わせた。アミンさんによると、ムバラク派が最初に投石し、衝突が拡大した。それを伝えようとしたところ、「政権のイメージがゆがめられる」と局側に反対され、同夜、辞職したという。
アミンさんは「エジプトの記者たちは拘束を恐れ、真実を伝えることを恐れている。私は辞めることができて、とても自由になれたと感じる」と話した。
国営テレビは2日の襲撃について「政治、経済、社会改革を要求する人々と、治安回復を求める人々の間で衝突があった」と伝えたが、政権の関与を疑う声があることには触れていない。
一方で、外国人ジャーナリストらが襲われる事例も多発している。中東ドバイの衛星テレビ局アルアラビアによると、同局の記者とカメラマンが2日、ムバラク派のデモを取材中に取り囲まれ、暴行を受けた。同局は「私服警官の仕業」としている。同局のカイロ支局も投石され、窓ガラスが割れたという。
AFP通信によると、ほかにも衛星テレビ局アルジャジーラの記者3人が当局に拘束されたほか、米ワシントン・ポスト紙や英BBC、仏テレビ局フランス24の記者やスタッフが拘束されたり、ムバラク派にカメラを取り上げられたりした。
中東に駐在し、日々、中東の動きに接する川上編集委員が、めまぐるしく移り変わる中東情勢の複雑な背景を解きほぐし、今後の展望を踏まえつつ解説します。エジプトからの緊急報告も。