【コラム】「飯場」と「タルハンアリ」(下)

 一時、中学・高校の科学で「火成岩」「水成岩」「変成岩」を「火で燃えた岩」「水に漬かった岩」「変形した岩」として教えようとしたことがある。しかし、これらの用語は定着しなかった。一方で、同時期に「平方」を「チェゴプ(平方)」、「堆積」を「プピ(体積)」と変更したものは、確実に定着した。定着するかどうかは結局、その言葉を使う一般市民の選択に懸かっていた。「チェゴプ」は「平方」に勝つ力があったが「火で燃えた岩」は「火成岩」に比べ説得力がなく、経済的でもなかった。

 漢字語を韓国固有の言葉にうまく変えた代表的な例は「タルハンアリ(月のつぼ)」ではないだろうか。日本人が「白磁大壺(こ)」と呼んでいた朝鮮王朝時代の陶磁器に「タルハンアリ」という名前を付けたのは、美術史学者の故・崔淳雨(チェ・スンウ)氏だった。満月のように大きく丸い形と、月の光に似てぼんやりと白く、素朴なつぼの美しさを、これ以上うまく表した言葉があるだろうか。

 近く国立国語院が、各専門分野で使われている漢字語と外来語を易しい韓国語に変える大々的な作業に取り掛かるという。来年までに17億ウォン(約1億2400万円)を掛け、14分野の専門用語22万語を韓国語化するという計画だ。「タルハンアリ」のような言葉が生み出されるのならば、20年かけても、170億ウォン(約12億円)掛けても損はないだろう。しかし、急ぐあまりに目標を大きく設定し過ぎているのではないかと不安だ。韓国固有の言葉に変えること自体よりも、どのような韓国語に変えるかが重要だ。哲学者や詩人など、言葉に関心のある知識人たちと定期的に相談しながら作業を行うべきだろう。

金泰翼(キム・テイク)論説委員

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

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