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ノーベル文学賞 選考の地を訪ねて〈上〉

2006年10月05日

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ペール・ベストベリィ氏

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1階にノーベル博物館、2階にスウェーデンアカデミーとノーベル図書館がある=ストックホルム市で

■推薦300人から“世界最高”追求

 ノーベル賞発表の季節である。とりわけ文学賞は、発表日からして直前でないとわからない。秘密のベールの向こうで誰が、どう選んでいるのか。9月、選考の地であるスウェーデンのストックホルム市を訪ねた。(編集委員・由里幸子)

 トーマス・マン、ヘミングウェー、ベケットらが受賞し世界最高の文学賞として揺るぎないノーベル文学賞。受賞者の顔ぶれは栄光に満ちているが、時に波がたつ。

■委員は5人

 この夏、99年の受賞者ギュンター・グラス氏が「ナチスの武装親衛隊」に入っていたと明らかにしたとき、ノーベル文学賞を返還せよという声も一部に起きた。

 ノーベル賞を運営するノーベル財団の立場は「取り消さないのが原則」。選考にあたるノーベル委員会のペール・ベストベリィ委員長(72)もノーコメントとしながら、「彼の受賞を誰も残念だとは思っていないだろう」と話す。

 栄冠への道のりは長く、何段階もある。選考実務は部門によって異なり、文学賞はスウェーデンアカデミー(定員18人)が受け持ち、実際には会員5人によるノーベル委員会があたる。今は1人具合が悪く、4人でこなしている。

 作家のベストベリィ氏は97年にアカデミー会員になり、98年から選考にかかわる。国際ペン会長も経験、世界の文学者をよく知っている。「アカデミー会員には学者や法律家もいるが、委員会は作家ばかりで文学に関心が高い」

■最後は投票

 選考方法は毎年同じ。まず、数百通の推薦依頼を世界のペンクラブ、作家協会、大学、受賞者などに送り、推薦された200〜300人のリストを年初にまとめる。事務局の手を借りて4月までには15人に減らす。5月には5人の候補者に絞りアカデミーの春の最終会合に提出する。アカデミーは独自の判断で名前を入れ替える権限もある。

 夏の3カ月間、委員会のメンバーは5人の作品を読み、それぞれにリポートを作る。「5人の候補者はいずれも賞に値する作家ばかり」。会員全員が読めない言語の作家のときは、英独仏語訳で読み比べる。場合によってはわざわざ翻訳してもらい、極秘に専門家に論文を求める。9月に委員会のリポートをもとにアカデミー全体で決める。

 「最後は会員の投票で決める。1票差で受賞した人もいる。そして10月のある木曜日に発表する」

■過去の失敗

 同氏が「恐ろしい例」としてあげたのは、「大地」が世界的なベストセラーになり、38年に受賞したパール・バック。ヘルマン・ヘッセら、より優れた候補がいたのに、文学性を吟味しないまま、初めて最終候補に挙がったバックを決めたというのだ。

 「歴史的にも自慢できない。30年前からは最終候補になった初年には授賞しない規則にし、じっくり選んでいる」

 ここ数年の受賞者については、「05年のピンターは、極めて普通の言語を使いながら、どこにも同じものがない。04年のイェリネクは論争的な選択。彼女は非常に強い自分の声を持っている」。

 文学の好みは主観的なものである。だから、ノーベル賞も政治や地理的な配慮で決まるとよくいわれる。アカデミー内部でも意見が対立、選考にかかわらない会員も現在2人いる。だがベストベリィ氏は「作品本位」を強調。

 「書かれた場所や性別、人種は全く問わない。本の中身だけを追求する。ある国の作家が3年連続受賞することだってありえる。国ではなくて作家にあげるからだ」

 候補者を秘密にするのは、「作家や出版社に期待を与えないため」。受賞の経済効果も大きいからだ。

 現代の世界文学の状況について質問すると、無用な期待を生む、とややためらった。

 「アフリカ文学は私の得意分野だが、いまはそんなに力がない。大変な状況が続いたので、いまアフリカの作家たちは亡命して欧米にいることが多いが、いずれ現地で力のある作家が出てくるだろう。別の例をひとつあげれば、ポーランド一国に多くの文学者がいるのは驚きだ」

 「日本の現在の作家については、答えられない。でも、日本にはつねに目を向けている。68年の川端康成氏も94年の大江健三郎氏も、翻訳作品をたくさん読んで決めた。安部公房氏がもし生きていたら受賞したかもしれない」


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