北陸の経済ニュース 【2月2日02時03分更新】

中国回避で注文急増 石川の縫製業
 石川の縫製業者にアパレルメーカーからの注文が急増している。中国を縫製拠点とする 日本のアパレルが大半を占めるなか、現地で賃金上昇や納期遅れなどの問題が浮上し、国 内に加工先を切り替える動きが出てきたため。中国など新興国メーカーの台頭で、県内の 業者数が激減してきただけに、残った繊維関係者からは「中国回避の流れはリベンジの好 機だ」との声が聞かれる。

 「工場のミシンは空いていないか。うちの縫製をやってほしい」。アトリエヨシダ(金 沢市)では、こうした国内アパレルからの打診が急増している。

 注文の件数は前年の同時期よりも3割ほど増えた。中国で縫製を予定していた製品の依 頼が多く、吉田秀三社長は「昨年末から中国生産を中止し、国内に発注を切り替えるアパ レルが目立ってきた」とする。エム繊維(石川県内灘町)でも、中国で縫製する予定だっ た製品の注文が増加傾向にある。

 ジェトロ金沢によると、中国では労働者の賃金が上昇し、「従来のような低コストのメ リットが薄れつつある」(久保敦所長)という。加えて、内陸部の経済発展に伴って出稼 ぎ労働者が減り、沿海部工場の人手不足による納期遅れが表面化している。

 こうした状況で、国内アパレルは日本で縫製工場の囲い込みに動いている。

 カメダ(白山市)では年明け以降、アパレルから縫製の生産量に関するアンケートが届 くようになった。生産能力のうち、そのアパレルの製品を何%請け負っているか、という 内容で「加工比率を上げてほしい」との要請が増えたという。

 亀田康彦社長は「国内では縫製工場の淘汰(とうた)が進み、中国から縫製の拠点を急 に移そうとしても、生産能力が足りない。今の内に国内工場を抑えようと躍起になってい るようだ」と話す。

 石川県縫製協会の会員数は現在19社と、20年前に比べて半減した。国内アパレルか らの縫製の注文が中国にシフトした影響が大きく、「協会に加盟していない零細業者を含 めると、事業所数は過去10年で10分の1程度になったのではないか」(県内の繊維企 業幹部)との声も聞かれる。

 こうした厳しい状況で、受注の持ち直しは明るい兆しとなる。ただ、中国で縫製を予定 していた製品は加工費が安く、「採算が合わない場合も多く、すべてを受け入れられるわ けではない」(吉田社長)という。縫製各社が中国回避の受注を取り込むには、加工費を 採算ベースに引き上げる交渉力が試される展開になっている。


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