忍び寄る「孤独死」、今では青壮年層も(下)

寂しさを感じるも交友関係は持たず

 ソウル市竜山区東子洞にある考試院で暮らすソさん(49)は、20年間働いてきた靴工場が中国に移転することになり、失業者となった。考試院で一人暮らしを始めて8年が過ぎたソさんは、生活保護として毎月42万ウォンを受け取り、このうち18万ウォン(約1万3000円)を考試院の家賃に当てている。3階建ての3階にあるソさんの部屋(約5平方メートル)には窓がなく、便器だけが設置されたトイレを10世帯が共同で使用する。ソさんは「両親は亡くなり、弟が二人いるが、正月やお盆に連絡を取る程度」と話した。ソさんが暮らす考試院の3階には10世帯が住んでいるが、ソさんは「隣に住んでいる人がどんな人かも分からない。隣で人が死んでも一切分からない」と語った。

 一人暮らしをする人々は、貧しさに加え、寂しさと孤独感を味わっている。一人暮らしの代表的な住居形態である考試院とチョッパンは、小さな部屋が隣り合わせでいくつも並んでいる。人口密度は非常に高いものの、隣の住人とあいさつをしたり、個人的な会話を交わすことはめったにない。日本のNHKは昨年、「血縁や地縁などの伝統的な関係が絶たれた日本は、個人がこれ以上、他人と縁を結ばないという無縁社会へと変化しつつある」といった内容の番組を放送した。

 15年にわたって東子洞で考試院を経営しているファンさん(80)は「昔は主にお年寄りたちがチョッパンや考試院で暮らしていたが、最近では30-40代の若者の利用者が増えた」と話す。また「昨年の夏、部屋から異臭がしたためドアをこじ開けて中に入ってみると、死体が腐っていた。独身生活をする人が多いこの町では、死後しばらく経ってから発見されるケースが少なくない」と話した。

 こうした現代社会の傾向について、専門家たちは、一人暮らしの急増を現実問題として受け止め、しっかりとした対策を立てていくべきだ、と指摘する。西江大学社会学部の田尚鎮(チョン・サンジン)教授は「一人暮らしの急増に伴う自殺や犯罪などの副作用を、共同体の規範を正すことで乗り越えようとするのは、理想主義的なアプローチにすぎない」とし、「現代社会における一人暮らしは、今では一つの生活方式であると共にトレンドともいえる。こうした点を見据え、しっかりと考えていくべきだ」と指摘した。なお、韓国にはいまだ「孤独死」に対する統計は存在しない。

ソク・ナムジュン記者

ノ・ジノ記者(インターン、釜山大学新聞放送学科4年)

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

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