さて、今国会では、民主党の先の衆院選マニフェストがデタラメなものであることが、改めて明確になっています。特に、民主党に政権の座が転がり込んだ大きな要因の一つである「年金」についての民主党案のほころびは、とても看過できません。
民主党はマニフェストで、国民年金や厚生年金などを一元化させ、保険方式にあたる所得比例年金と全額税方式の最低保障年金(月額7万円)に再編すると約束していたわけですが、菅直人首相は昨日の衆院予算委員会で「数字の面ではまだ確定した案になっていない」とあっさり認め、一元化についても「難しさは認識している」と答弁しました。
ねじれ国会を生じさせた4年前の参院選でも、民主党はこの年金問題を追及して勝利したというのに、菅首相はその肝心要の部分で白旗を掲げているわけです。私のように、この政権に懐疑的な人間でなくても、これでは何のための政権交代だったのだろうと疑問を持つのではないかと思います。
そこで、問題点をあぶり出した衆院予算委での公明党の石井啓一政調会長の質問をダイジェスト(あくまで大意を押さえたダイジェストであり、正確な文字起こしではありません、あしからず)で紹介します。
石井氏 どのくらいの財源が必要だと考えているのか。民主党の最低保障年金は
枝野幸男官房長官 最低限7万円は必要だろう、というのが民主党の案だ。
石井氏 民主党の案を示す義務がある。最低保障年金、税方式でやるといくらになるのか民主党で示してください
枝野氏 民主党案ベースを基本として、与謝野さんのところで議論を始めている。議論の中で様々の案を検討することになっている
石井氏 今の官房長官の答えはね、若干のずらしがある。今の民主党の案そのまま示すんではなくて、これを変えた物を示してくる可能性がある。私たちは民主党案そのものがどうなのかちゃんと示しなさいと言っているんです。というのは、今の民主党案が、すばらしい案だったら私たちは賛成する可能性はありますから。
与党になってから1年5月も経っていますよ。かつて民主党さんが野党時代に具体的な数字を示さなかったのは、厚生労働省から数字がもらえないから示せないんですと言っていた。与党になったんですから、示すことが出来ますでしょう。ますは民主党のマニフェストのこの数字をきちんと示してください。
菅氏 つまりはどの程度の比例で、年金がいただける人のどの当たりまでに最低保障を乗せるかどうかと言うのは、率直に申し上げてまだ具体的な数字をこれまで固めておりませんでした。ですから、そう言う点では、数字の面では確定した案にはなっておりません。その上で、いま我が党なり、内閣として、本格的な案を4月に向けて作ろうとする場合には、もちろん民主党のこれまで申し上げていた、先ほど与謝野大臣も言われたようにいろいろな案について、すべてを土俵に乗せて議論したい。4月に向けて、一つの考え方を我が党の案をベースに致しますけれども、必ずしもそれが固定的に、この4月に提示する物に、そのままスライドすると言うことではなくて、幅広く検討していきたいとこのことを申し上げたところであります。
石井氏 2003年から7年間、何を議論してきたんですか民主党は。当初からわかっている問題でしょう、このことは厚生労働省から数字をもらわなくても議論できる話じゃないですか
菅首相 一元化というもの難しさは私たちも認識しております。これは、もう一つは公務員や色んな共済制度と今の厚生年金についても、確か、これについては、皆さん方も一元化という方向を、こちらの分の非保養者保険については言われていると思いますが、それ自体もなかなか制度的な過去の経緯等で難航しておりますが、いまご指摘がありました自営業者を中心とした国民年年金に入っている人との一元化というのは、おっしゃるとおり大変難しい問題を抱えております。
これについては一言で言えば制度設計によって、いろいろな選択肢があり得ると。例えば、お医者さんとかや弁護士さんとか、そういう皆さんは場合によれば、こう仕事をしている立場と雇っている立場と一体と見てそれを両方払うと言うそう言う選択もありますし、いやいやそうではなくて、やはり働いている立場ということだけを考えて、その分しか払わないという考え方もありますし、まさにそれはざまざまな選択肢があるということの段階でご指摘の通り、これまでのところまで出しておりませんでした。
…なんかしどろもどろで回りくどく、わかりにくいのですが、「はぁ?」と感じた者は私のようなひねくれ者だけではなく、政府内にも少なくなかったようです。本日夕、財務省の桜井充副大臣は記者会見で、首相をはじめ党執行部を次のように暗に批判し、マニフェストについても疑念を示しました。
「正直言って、(政府・与党は)アバウトな数字は持っていると思っていた。出せなかったのに昨日、驚いた。あの当時マニフェスト作った人たちに、もうすこし説明してもらいたいというのが偽らざる気持ちだ。マニフェストにはこのことだけじゃなく批判はあるが、あれは、あの当時、ごく一部の人がつくったので、われわれは、情報が与えられないまま議論が進められているので、そのつくった人が出てきて説明すべきではと思います。
昨日、衆院予算委の議論を聞いていたとき、7万円を全額税でやるとどのぐらいがアバウトな数字かという議論で、数字が出なかったのに驚いているんです。消費税、だったらどれぐらいになるのか。もう一つ不思議なのは、目的税は置かないということで、やっていたはずなんで、消費税が全部年金目的税ってのも、すこし違うと思うんですが」
…桜井氏もびっくりしたのかもしれませんが、マニフェストを信じて投票した国民はもっといい迷惑です。本当に、政権交代前も政権交代後も、いったい何をやっていたんでしょうか。これで今になっていきなり「与野党協議に応じないのは歴史に対する反逆だ」だの、「野党は社会保障の議論から逃げている」だの言われれば、そりゃ誰だってカチンときますね。
もはや笑うしかない。
by 王マイゴッド
マニフェストつくった奴出てこ…