セルカークレックス
(1) 三種類のコート遺伝子
セルカークレックスの巻き毛は、スコの耳や、マンチの短足と同じ、「優性遺伝」です。
そのため、「巻毛ホモ」、「巻毛ヘテロ」、「直毛」の3種類の遺伝子を持つ猫が存在します。
●巻毛ホモ
父母の両方から巻き毛の遺伝子をコピーした猫。
明らかな巻き毛。
かなり脂っぽく、成長過程で一度スェード状まで脱毛します。
アンダーコートが多く、オーバーコートが少ないため、細く軟らかく、色やパターンが不鮮明。
●巻毛ヘテロ
片親から巻き毛の遺伝子、もう片親から直毛の遺伝子をコピーした猫。
巻き毛の強さには個体差があるが、ホモほど明らかではない。
直毛かと見間違うほどの弱いカールの猫もいるが、ヒゲがヨレていたり短いことで容易に判別できる。
そこそこ脂っぽく、成長過程でスカスカに脱毛します。
ホモに比べ、オーバーコートが多い。
●直毛
父母の両方から直毛の遺伝子をコピーした猫。
セルカークレックスとして登録され、繁殖に用いることもできるが、ショーに出ることはできない。
あまり脂は出ませんが、成長期はヘテロ並みに脱毛します。
毛の細さ(軟らかさ)は、 ホモ ヘテロ 直毛
つまり、細く柔らかい毛質ほど強く巻きます。 但し、タビーやダイリュートであることなどを考慮。
※本日はこの3種類の毛質を触り比べていただきます。
同じREX種でも、コーニッシュやデヴォンは劣性遺伝のため、ヘテロは(つまり異種交配しても)直毛にしかなりません。
(2) 巻毛の遺伝の仕組み
セルカークレックスは、ブリティッシュSH、ペルシャ(エキゾ、ヒマ、チンチラ含む)とのハイブリッドが認められています。
ちなみにTICAではアメリカンSH、FIFEではブリティッシュLHとも交配されます。
ゆえに、この5通りの組み合わせからなるセルカークレックスの子供たちが存在することになります。
ホモ×ホモの場合
巻/巻 巻/巻
巻/巻 巻/巻
ヘテロ0%
ホモ0% の確率で生まれます
直毛100%
ヘテロ×ホモの場合
巻/巻 巻/巻
直/巻 直/巻
ヘテロ50%
ホモ50% の確率で生まれます
直毛0%
ヘテロ×ヘテロの場合
巻/巻 巻/直
直/巻 直/直
ヘテロ50%
ホモ25% の確率で生まれます
直毛25%
ヘテロ×直毛(またはハイブリッド)の場合
巻/直 巻/直
直/直 直/直
ヘテロ50%
ホモ0% の確率で生まれます
直毛50%
ホモ×直毛(またはハイブリッド)の場合
巻/直 巻/直
巻/直 巻/直
ヘテロ100%
ホモ0% の確率で生まれます
直毛0%
ようするに、ホモを繁殖に用いるならば無駄なく巻毛を作ることは可能です。 しかし、巻毛同士を何世代も組み合わせ続けると、容姿が先祖返りして、細長い猫になってしまうため、ホモ×ホモ、または、ホモ×ヘテロでの組み合わせは基本的に行いません。
丸く愛らしい形に近づけるため、「ホモ×直毛(ハイブリッド)」、「ヘテロ×ヘテロ」、「F2以降のヘテロ×直毛(ハイブリッド)」が基本です。
そのため、セルカークレックスの繁殖を維持するには、たくさんの個体を抱える必要があります。
(3) 長毛と短毛
上記3種類の遺伝子の猫たちは、それぞれ「長毛」「短毛」としてDiv分けされます。
フリル、尾、または耳の中の毛の長さなどで長短を判断します。
全てのセルカークレックスはLHキャリアのため、短毛同士の両親からもLHが生まれます。
●長毛 弱いカールでも、長さ(つまり巻きシロ)があるため、短毛よりも巻いて見える。
コートが縺れている、絡まっていることはスタンダード上で許されている。
●短毛 同じカールの強さであっても、長毛より短毛は巻いて見え難い。特に短毛のヘテロは、ほとんど直毛に見えてしまう場合もある。※図参照
長毛
短毛
(4) 毛色
セルカークの毛色(目色を含む)は、「1点」です。
異種交配を必要とするため、毛色を重視した繁殖はできません。また、ホモにはオーバーコートが少ないことなどから、ブリードカウンシルは、「0点にするわけにいかないから1点」と回答しています。
(5) 容姿
例えば、スタンダードを読んだだけで、スタンダード通りの模型を作ってみなさい、と言われたとしたら、おそらく他の猫種においては皆さん近い物が出来上がるのではないかと思います。しかし、セルカークのスタンダードを読めば読むほど、「正解」とは何なのか、どこへ向かえば良いのか見えてきません。
というのは、セルカークレックスが新しい猫種だからという理由だけではありません。つまり、「各部位が何点で具体的に云々」という以前に「GENERAL」の説明文に重きをおくべきである、ということです。何よりもまず、「スイートなリアルぬいぐるみ」であること、「フレンドリーな性格」であることが最優先であり、各部位が満点であったとしても、怯える猫や万人受けしない猫などは良いセルカークレックスとは言えません。
ペルシャとブリSH、似ても似つかないこの2種を交配に用いておきながら、ペルシャ過ぎても、ブリSH過ぎてもいけません。では、なぜ、その中間に当たるアメリカンSHやバーミーズと交配できないのか、と思ってしまいますが、それはアメリカンのハードコート、バーミーズのシングルコートが障害になってしまうようです。
3種類のコートがあると説明しました通り、顔面の毛質も変われば表情も違います。ブリーダーは、全身を見ずに顔だけでもホモかヘテロか見分けることができるほど、「ホモの顔」「ヘテロの顔」というのがあります。 また、それは毛による見え方の違いだけではなく、骨格構造も若干違い、ホモは何ともいえない間の抜けた顔で、ホモよりヘテロ、ヘテロより直毛の方が凛々しい顔つきになります。つまり、毛の巻き具合と顔は両立しません。
ちなみに、顔の毛を剃ると、ホモはデヴォンに近く、ヘテロはとバーミーズのような顔をしています。