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[25623] 『東方超人禁』(東方×とある魔術の禁書目録)
Name: 雷◆c4b80eb2 ID:6c2363a9
Date: 2011/01/31 16:38


『東方超人禁 〜The super break daily.』






電波です。電波作品です。電波以外の何物でもありません。


中編くらいの長さだと思われます。


話の内容としては、禁書目録のキャラ何人(?)かが東方世界に元々居て、異変を起こし、それを我らが巫女こと霊夢さんが解決するという内容です。

もしかしたら何時か、霊夢以外のキャラも書くかもしれませんが。
【候補は魔理沙、咲夜、チルノ、妖夢、鈴仙、早苗の幻想郷若手(?)メンバーに、天子(若手なのか?)です】


幻想郷関係の細かい設定話はすっ飛ばしています。正直面倒なので。
そのため、東方の設定を知らないと「うん?」と首を傾げてしまう可能性が高いです。


東方の世界観にキャラ達を合わせているため、かなり改変がありますが電波なんで勘弁して下さい。


改変の例としては、"空をデフォで飛べる"や、"超能力が『〜程度の能力』になったり"とか"原作に無い戦い方をする"といったような感じです。


後、男なのに弾幕ごっこをしてるじゃねぇか!?というのには、そこはクロスということで御勘弁を……


なのにゲーム色を強めにしたため、かなり単純というか突然というか味気ない?内容かもです。


そして上条さん、インデックスさん、浜面さん、滝壺さんは残念ながら出て来ません。




では開始……の前に、宣伝っぽいのを。




現在、チラ裏板にて投稿している多重クロス(とある、シャナ、東方、ネギま)作品の『とある世界達の反逆戦争』。
かなり人を選ぶ作品になっていますが、読んでいただけたら嬉しいです。




では、今度こそ開始です













バックストーリー




幻想郷は平和だった。

夏の太陽が幻想郷の全てを、余すことなく照らし出している。

幻想郷は平和だった。

「……平和、"だった"のよねぇ……」

ため息を、一つ。
青空の元、幻想郷の空を飛ぶ紅と白の改造巫女服に身を包む一人の少女は、憂鬱な気分に落とされていた。
自らの能力を用いて空を飛ぶ、彼女の名は博麗霊夢。
幻想郷の、博麗の巫女であり、妖怪退治の専門家でもある彼女は今、異変解決に乗り出していた。

そう、"異変"。

今まで様々な異変が、この幻想郷で起きて来たが今回の異変は──

「っと」

彼女は飛行の状態から急停止。
空中にピタリと止まって滞空する。
何も変哲の無い、普通の場所。
地面にも空にも特に何も無いその空間に、


"震動"が走った。


「っ……」

ビリビリと、空気や大地と同時に彼女の体を"震動"が叩く。
予想していたとはいえ、多少は体に響いた。
これは地震や、龍の咆哮などではない。
地震ならば大地が揺れるはずだし、咆哮ならば落雷の轟音のごとく、空気の震動は音とならなければならない。
故に、これは、

「空間が直接震動しているなんて……全く、いい迷惑よ」

物理的な意味での震動では無く、空間的な"震動"。
世界自身が、直接震えているのだ。
こういった現象は魔法を展開した時の魔力共振によって起こされる場合もあるが、世界規模になるともはや人間や妖怪の手で起こせるレベルでは無い。

「神か、もっと別の何かか。まぁどちらにしろ、こんなんじゃおちおちお茶も飲んでられないわ」

かなり酷い現象なのだが、霊夢の言葉は軽い。
普段の調子を崩さず、彼女は再び飛ぶ。
実際の所、この現象に物理的な害は無い。物や人が震えてると同時、大地も空気も空間も震えているのだから。
なので、精々夜中に叩き起こされる危険があるくらいか。
後はお茶を一杯飲む憩いの時が、邪魔されるような。
結局は、そんな物。


楽園の巫女は、今回も気楽に異変解決に出かける。














~楽園の巫女~
博麗霊夢
移動速度☆☆☆
攻撃範囲☆☆☆☆☆
攻撃力☆☆☆
特技:当たり判定が小さい
スペルカード
霊符「夢想封印」
夢符「二重結界」など


~普通の魔法使い~
霧雨魔理沙
移動速度☆☆☆☆☆
攻撃範囲☆☆
攻撃力☆☆☆☆☆
特技:アイテム回収範囲が広い
スペルカード
恋符「マスタースパーク」
魔符「スターダストレヴァリエ」など


~完全で瀟洒なメイド~
十六夜咲夜
移動速度☆☆☆☆
攻撃範囲☆☆☆
攻撃力☆☆☆
特技:アイテムの落下速度が遅い
スペルカード
幻符「殺人ドール」
時符「プライベートスクエア」など


~氷の妖精~
チルノ
移動速度☆☆☆☆
攻撃範囲☆☆☆☆
攻撃力☆☆
特技:弾幕を凍らせれる
スペルカード
氷符「アイシクルフォール」
凍符「パーフェクトフリーズ」など


~半人半霊の庭師~
魂魄妖夢
移動速度☆☆☆☆
攻撃範囲☆☆☆
攻撃力☆☆☆☆
特技:弾幕を剣で消せる
スペルカード
人符「現世斬」
迷符「纏縛剣」など


~狂気の赤眼~
鈴仙・優曇華院・イナバ
移動速度☆☆☆
攻撃範囲☆☆☆☆
攻撃力☆☆☆☆
特技:掠り範囲が広い
スペルカード
波符「月面波紋(ルナウェーブ)」
散符「栄華之夢(ルナメガロポリス)」など



~祀られる風の人間~
東風谷早苗
移動速度☆☆☆☆
攻撃範囲☆☆☆☆
攻撃力☆☆☆
特技:アイテム出現率が高い
スペルカード
蛇符「神代大蛇」
蛙符「手管の蝦蟇」など


~非想非非想天の娘~
比那名居天子
移動速度☆☆☆
攻撃範囲☆☆☆☆
攻撃力☆☆☆☆☆
特技:ボスに対するスペルカードの威力が高い
スペルカード
剣技「気炎万丈の剣」
非想「非想非非想の剣」など









少女祈祷中……







[25623] Stage1 ~意味不明超人~ 削板軍覇
Name: 雷◆c4b80eb2 ID:6c2363a9
Date: 2011/01/26 13:02




Stage1 〜夏の花道〜




爽やかな風が吹く道

人妖問わず陽気を感じるこの道の先に

一体何が存在するのか















「あー、良い陽気ね……」

空を飛びながら、霊夢は呟く。
夏、今の時期に花が咲き乱れるこの道は人妖問わずに気分を和ませる。
緩やかな坂道が続くこの道の頭上を、霊夢は高速で飛行していた。
表情は先程までの不機嫌さとうって変わって、明るい。
花のような笑顔で、眼下に広がる花達を眺める。

「これで震動が無ければ最高なんだけど」

そして僅かに歪められた。
早く犯人を筒巻きにして、風景を見ながらお茶を飲みたいものだと思う。
平和平穏が一番。


「いやー、確かに気持ちいなここ」


そんな彼女に、ワンテンポ遅れた同意の声が一つ。
霊夢はゆったりとスピードを落とし、傍らへと向き直る。
突然の声に、特に驚いた様子も無い。

「そうね。でも"震動"は要らないの」

再度同意を求めるように繰り返した。
彼女の黒い瞳に映るのは、一人の少年。
年は十代後半といった所か。
頭に白い鉢巻きを巻き、太陽のマークが施されたシャツに白いズボンという風貌だ。
彼は霊夢と同じように笑っていたが、その笑みは海のような荒々しさを感じさせる。
不思議な、気圏を纏うその姿は、しかしかなりの実力を持っていると、彼女には分かった。


〜意味不明超人~ 削板軍覇(そぎいたぐんは)


霊夢は知らないが、それが彼の名前である。

さて、霊夢としてはこの異変について何か知っているかも知れない、ということを考えての問いかけだ。
別に馬鹿正直に答えてもらうつもりは無い。
少し怪しいと思ったら即座に力づくで聞き出すだけである。
無茶苦茶だと思うが、そうやって勘と運と力のみで今まで異変を解決して来たのだから、末恐ろしい。

そんな彼女へ、削板は、

「震動?なんだそりゃ?」
「……」

別の意味で馬鹿正直に答えた。
その嘘偽りが感じ取れない姿に、霊夢は思わず沈黙。
幻想郷に偶に居る、阿呆で馬鹿な存在だった。
予想外の言動にため息を吐いてから、用は無くなったとばかりに問いかける。

「……先行っていい?」

しかし無理だろうなぁ、と彼女は思う。
今までの経験上、こういった輩は……

「まってくれ」

やはりだった。
突如、
ブワッ、と。
周囲の空気が重くなる。
何らかの力だろう、全身からビリビリとした威圧感を放ちながら、削板は笑みを浮かべている。
そんな笑みの理由は、霊夢には嫌という程理解できた。

「アンタ、博麗の巫女だろう?一度戦ってみたかったんだ!」

戦闘狂特有の、交戦的な笑みだ。
両者の服がはためき、その場に異質なる、戦場の雰囲気を走らせる。

「生憎、私はアンタに興味なんか無いんだけど」
「俺は強くなりたいんだ!誰よりも強く……!だから、戦ってくれ!」
「人の話は耳をかっぽじって聞けって言われなかった?」

彼女は呆れ顔で皮肉を放つが、

「耳かきなんか無いぞ?」

削板は純真なままの素直さで返してくる。やりにくいことこの上無い。熱血漢は何処へ行った。
はぁ、と。
霊夢は本日何度目か分からないため息を吐き出してから、

「耳かきが無いから、代わりにお札をあげる」
「来い!」

札と針を神速の速さで取り出し、交戦的な男へ向き直った。

こんな唐突で理不尽な戦いもまた、彼女達の日常。


楽しい楽しい、弾幕ごっこの始まりである。












彼女の手から小手調べとばかりに放たれたのは、誘導性が高い札の弾幕。
数十を越す、茜色の札は僅かな曲線を描き、削板へと迫った。
周囲をぐるりと舞うように迫る札へ、

「ふんっ!」

彼は気合いで答える。
一声とともに、両手が真横へ勢いよく開かれ、強く剛力を持ってして握り込められた。

(?)

疑問に思いつつ距離を取る霊夢が見つめる中、彼は空中から動かない。
何らかの術を展開する様子も見られなかった。
なのに、
ボバッ!っと。
内側から弾けた"何か"によって、札が全て掻き消された。

「むっ」

そんな不可視不可解な現象に、霊夢は不機嫌そうに唸るだけで済ませる。
幻想郷において常識などというのは最初っから役に立たないものだからだ。
しかしそれでも、戦いの思考として疑問が浮かぶ。

(霊力でも魔力でも法力でも無いわね……アイツ特有の力?)
「さすがは博麗の巫女だな。容赦ねぇ」

思考をしている間にも、削板は不適な笑みで呟いている。
博麗の巫女というのはどういう風に言い伝えられているんだ、と彼女は問いかけたくなったが堪えた。
多分、この男が色々おかしいだけだろうと信じて。

「今度はこっちから行かせてもらうぜ!」

彼はごそごそとズボンのポケットを探ったかと思うと、勢いよく何かを引き出す。
それは、一枚の白いカード。
スペルカードと呼ばれる、弾幕戦に使われる物だった。
カードを掲げ、彼は発動を宣言する。


「気合「すごいパンチ」!」


カッ!と、スペル発動時独特の光と効果音が、辺りに響き渡った。
それと同時に、彼の力たる理解不能の何かが、削板の体に充満したのが肌から直に感じ取れた。

「ネーミングセンス無いわねぇ……」

あんまりといえばあんまりな名称に、自然と霊夢は愚痴る。
何というか、やる気や戦闘意欲、危機感を無造作に削り取るような名称だ。
しかし、

「っ!?」

ゾクッ、と。
彼女は反射的に袖口からスペルカードを引き抜いていた。
それは今までありとあらゆる敵と戦って来た中で培って来た戦場勘のお陰で、霊夢は躊躇いなくスペルを発動させる。

「夢符「二重結界」!」
「おおおおおおおおおおっっ!!」

霊夢の前に霊力によって編まれた二重の高度な結界が張られるのと、削板が彼女に向かって右拳を正拳突きで放つのはほぼ同時だった。
何かを込めた拳が振り切られた、瞬間、

二十メートルは距離があった霊夢へ、正確には前に張られた結界へ、馬鹿みたいな衝撃が襲った。

「うぐっ!?」

ガガガガガガッ!!と、力尽くで結界を突破しようとする不可視の力へ、霊夢は結界を右手で支え、押し返す。
その拮抗によって霊力が弾け、火花を上げた。

(今の……!?)

流石の霊夢も、今の現象には驚かざるを得ない。
何せ不可視というだけならともかく、拳から何かを、弾幕を打ち出したにしては幾ら何でも到達が速すぎる。
しかもどうやら壁のごとく面の攻撃のようで、結界全体に満遍なく均等な力が加わっている。

(どんな力か知らないけど、弾幕ごっこには反則的な力ね……っ!)

不可視、到達スピードがほぼゼロ、面の攻撃、おまけに威力も高いと来た。
全くもって反則的。恐らく、大概の人妖はこの一撃でノックダウンだろう。

「っ、はっ!」

結界を弾けさせ、相殺。
轟音とともに大気が弾け、極地的な豪風が吹き荒れた。

「さすがに根性あるな!初撃を無傷で切り抜けられたのは始めてだ!」
「お褒めに預かり光栄、ね!」

そんな会話を交わしながらもまだ風は吹き荒れ、スペルは終了していない。
霊夢のスペルは一時的な、瞬間的に強力な力を発生させるタイプのスペルだったが、削板のは一定時間弾幕を放つタイプ。
彼はまだ、一つしか弾幕を放っていないのだから。

今度はちゃんと視界に納めれる、光弾が五つ赤と青と黄色の三色を迸らせながら彼から迫ってきた。
だがスピードも普通。ただ誘導性が高いだけとなれば霊夢に躱せない道理は無い。
五方から迫る弾幕を、彼女はさらりと舞うがごとく躱す。
回転する視界の中、彼女は光弾が何やらカラフルな爆煙を撒き散らしているのを捉える。

「……」

本能のままに、回避。
煙から離れる。
それを測ったかのように、煙が幾つもの弾幕となり、周囲へとゆっくり漂い始めた。
見た目は丸い煙の塊とはいえ、弾幕。被弾すればダメージは避けられない。
しかし誘導性はゼロ。
周囲の空間を漂うだけで、彼女には万が一でも当たる可能性は無いだろう。
だが──

「すごいパーンチ!」

──それもこの不可視の弾幕を組み合わせれば、必殺の檻となる。
削板のこの見えない速すぎる壁弾幕。
弱点が一つ。
それは力を右拳に集中する僅かな時間と、撃つ軌道修正が不可能なことだ。
だから、この弾幕を躱す手は一つ。
右拳に力を溜めている間に全力で壁の範囲から逃れ、拳が振り切られる前に逃げ切ること。
しかも基本的に拳を振り切った後は隙だらけなので、攻撃のチャンスが生まれる。
しかし煙の弾幕が広がる中、そんな事が出来る者が──

「はぁぁっ!」

いた。
時に肌すれすれで躱し、時に力尽くで弾幕を破壊し、彼女は高速で突っ切る。
削板を中心に、一気に右の方向へと。
そして削板の腕が振り抜かれ、壁の弾幕が放たれる。
音もなく、前兆もなくそれは空間を叩く、
が、

「生憎と、さっきのでもう見切ってんのよ!」

チッ、と。
髪が僅かに壁に触れた。
それだけだった。

「何っ!?」

ギリギリ躱された、その事に削板の口からも驚きが零れる。
何故か?
ギリギリ"躱せた"のでは無く、ギリギリ"躱された"のに気がついたからだ。
先程の結界による防御。
あの時の結界にぶち当たった弾幕の大きさを、霊夢は正確に把握していた。
そして削板の拳からの範囲を計算し、ギリギリで躱す。
ギリギリで躱した場合のメリットは、

「ふっ!」

いち早く、攻めに転ずることが出来る。
霊夢は空を裂き、神速の速さを持ってして彼へと飛ぶ。
削板も近付かせないとばかりに煙を撒く弾幕を放つが、数瞬進む前に打ち落とされ、掻き消される。

「らあっ!」
「ぐおっ!?」

そして容赦なく、蹴りを叩き込んだ。
巫女服の紅いスカートを綺麗に翻し、削板の顔面を蹴り飛ばす。
その際、また何らかの力に弾かれる感覚が走った。

(体全体を覆ってる。普通の弾幕じゃ、意味無いわね)

かなり頑丈なのだろう。
霊力で強化した足に返ってきた反動に顔をしかめ、足を振り切る。
彼はグルグルと回転しながら宙を吹っ飛び、僅かに落下しかけながらも持ち直した。
あてて……と呻きつつ、しかしその瞳から闘志は消えない。

「早速一枚破られっちまったか。だけどこれはどうだ!」

削板は、次なるスペルカードを瞬時に発動させた。
その手並みは早く、やはり彼がただ者で無いと分かる。

「気力「かめかめ覇」!」

次に訪れしは光弾の嵐。
青い光を放つ、様々な大きさの弾幕が適当に撒き散らされる。
大地にも直撃しているのだろう。
遥か下方にある地上で爆音が轟いた。

見る者によっては、寒気を生むその光景。
だが、相手が悪い。

「後ろががら空きよ」
「ぐえっ!?」

ドゴッ!!と、一撃。
霊力キックを再度、しかも首の後ろから叩き込まれ、スペルを強制的に中断されてしまう。
咳き込みながらも、音速を持ってして距離を取り、削板はその姿を見る。

「あーあ、地面に何個か当たってるじゃない」

博麗の巫女は渺々とした姿でそこに居た。
霊夢は削板が感知出来ない程の自然さで彼の後ろに回り、蹴りを叩き込んだのだ。
瞬時に弾幕の弱点を看破し、本格的になる前に潰す。
言うだけは簡単で、やるのは難しい行為を、彼女は平然とやってのけた。
削板の闘志が、更に燃え上がる。
相手が強ければ強いこそ、挑戦する価値があるから。

「さすがは、さすがは博麗の巫女……!」

だから、圧倒的な実力差があるというのに、彼は笑っていた。
暑苦しい、漫画の主人公のような姿。
その姿をじと目で見る霊夢。

(……チルノを思い出すわねー)

そんなどうしようもない考えをされているとも知らず、削板は大気を震わせ、吠えた。


「俺の最大パワーだ!「ナンバーセブン」!!」」


瞬間、今まで以上の力に大気が爆発するような轟音。
普通の生物ならそこに居るだけで死んでしまいそうな威圧感が、場を飲み込む。
そんな状態でも、霊夢は余裕の態度を崩さない。

まず最初に展開されたのは、赤の大玉。
彼の周りをグルグルと周り、赤い煙を撒き散らす。
大玉が周囲を回る度に煙の層は螺旋階段のように、捩れながらも形を留めた。
次は黄色の光弾。
まるで星のように、削板の頭上から降り注ぐ。ストレート、ただ真っ直ぐに。
最後に青い壁。
長方形の真っ平らな壁が幾つも出現し、空間をかき乱す。

これら三つのパターンが幾重にも混じり合い、虹のように空間に色を描いた。
まさに弾幕の真骨頂。見た目の美しさと躱す難しさをかね揃えた、奥義。

その大玉を、煙玉を、霊夢は力尽くで突き抜ける。

「お」

その黄色の星を、軌道を完璧に読みきって躱す。

「お」

その青い壁を、他の弾幕と相殺させて無くす。

「おおっ!?」

十秒で、霊夢は削板の前に辿り着いた。
今まで削板が闘って来た、誰よりも早く霊夢は彼の前に浮かぶ。
その姿は正に、幻想の守護者というべき、強者の姿。

「ふんっ!」

削板は、拳を放つ。
蹴られる前にと放たれた拳は、岩をも跡形も無く消し飛ばす威力がある。
その鋼の拳を霊夢は体を半歩分、横にずらして躱し、

「手加減しないわよ」

ピトッ、と。
彼の腹に手を当てた。
白い手には、一枚のカード。
彼が、回避行動を取る前に彼女は言葉を紡ぐ。




「霊符「夢想封印」」




宣言通り、手加減無しの弾幕が直接叩き込まれた。













「くそー、一瞬寝ちまった!」
「…………」

夏の花道。
花の中で大の字に寝転がる削板を、霊夢は呆れと驚きの目で見る。
全力で叩き込んだ筈だが予想以上に頑丈だったのか、大地に墜落した時にはもう既に起きていた。
一瞬気絶したため、彼は負けと思っている。
霊夢としても無駄な力の消耗はしたくないので、何も言わなかった。再戦などこりごりだ。

「やっぱり根性が足りねぇ。一から鍛え直すぜ!その時はまた、闘ってくれよ」
「……」

勝手に色々言っているが、霊夢の意思は何処にあるのだろうか?
スペルカードルール的に断れないとはいえ。

「じゃあな!うぉおおおおおおおおっ!!」

そして花道に似つかわしくない、熱気を放ちながら彼は何処へと走って消える。
数秒後に障害がさっぱり居なくなった、花道を彼女は見る。

そしてポツリと一言。

「……これだから戦争は無くならないのね」














少女祈祷中……










設定


~意味不明超人~

名前・削板軍覇

種族・人間

能力・「意味不明の何かを使う程度の能力」


山奥に住んでいたが、家が壊れたため(※1)人里に引っ越して来た人間。
非常に陽気で明るく、人里においても一際目立つ男である。
よく人里で仕事の手伝いをしていたり、湖で氷精などと修行(※2)をしている姿が見られている。
腕っぷしが強く、偶に妖怪退治や護衛の仕事なども請け負っているとのこと。
比較的交友関係が広く、下は氷精、上は風見幽香(※3)などとはば広い。
大概の知り合いが強さを求めて戦い、知り合った者ばかりである。
何故命をかけてまで強さを求めるのかは判明していない。(※4)。

性格上、危険度は零と言って問題ないだろう。むしろ、正義感が強いため助けられることも多い。
傍目から見ているには楽しい人物だが、絡まれるとかなり騒がしいが、実害は殆ど無い。

彼の能力は「意味不明の何かを使う程度の能力」
名前の通り、不可視不理解な何かを使う力で、本人でさえ、自分の力がどんなものか理解していない。
妖怪の賢者によると、彼の力は「次の時代の力」とのことで、恐らくは霊力や魔力の派生では無い、全くの新種の力だと思われる。
起こる現象としては色とりどりの爆煙を撒き散らしたり、到達速度零の弾幕を放ったりというのが例に上げられる。


※1
何故壊れたかは不明だが、恐らく誰かの弾幕ごっこの余波を受けて倒壊したらしい。

※2
修行だけで無く、遊んでいることもある。面倒見のいい男だ。

※3
あの風見幽香と戦って生きているということが、彼の実力を物語っている。勝負には負けたようだ。

※4
筆者が尋ねた所「男は何時でも強さを求めるもんだ」と誤魔化された。




スペルカード集

気合「すごいパンチ」
気力「かめかめ覇」
気合「すごいキック」
根性「ヒーロキック」
気合「すごいラッシュ」
気力「気合斬」
気力「エネルギー覇」
根性「秘技・弾幕拳」
気合「クラッシュハリケーン」
根気「キーブレイク」
根性「真っ赤なスターライト」
気力「カラフル爆炎」
気人「秘技・超人力」

「ナンバーセブン」

計14枚






[25623] Stage2 ~閃光の女王~ 麦野沈利
Name: 雷◆c4b80eb2 ID:6c2363a9
Date: 2011/01/27 09:06




Stage2 ~閃光の女王~ 麦野沈利




Stage2 〜銀舞い散る森~




魔法の森の外れに煌びやかな場所がある

空気中の魔力によって光が舞う幻想の光景

それは、自然が生み出した一つの芸術だった













「さて、こんな所まで来ちゃったけど」

銀の森。
魔法の森の外れにあるここは、霧では無く銀に覆われている。
煌びやに光る、魔力の結晶。
その輝きは宝石のようで、しかし手には触れられない、遠き幻想。
偶にこの光景を見るために訪れに来る者が居るほど、この空間は美しいが霊夢はあまり嬉しくは無かった。
魔力を肌で感じ取れるため、纏わり付く感覚が鬱陶しいのもある。
が、問題はそこでは無く、

「この先に何か居そうね」

自分の勘が、またもや面倒そうなことになると警告したからだ。
しかも揉め事を感知する勘だが、異変を解決するためには此方へ行けと警告している。
つまりは、面倒だがなんとかしなければならないということ。


「あら、何かってのは酷いんじゃない?」


森の中を縫うように飛んでいた彼女にかけられた、女性の声。
一拍おかず、声の持ち主は霊夢の前に瞬時に現れた。
膝を曲げゆっくり着地するその姿はまるで何処かの貴人のようだが、本質は全く別だと霊夢は知っている。
噂でしか聞いたことは無かった。
茶色の少しカールした長髪。
透き通る茶色の瞳。
整った美貌。
黄色の洋風ドレスに、黒いハイヒールと呼ばれる靴。
それらが噂の全てと合致した。


~閃光の女王~ 麦野沈利(むぎのしずり)


出会ったら絶対に怒らせるな、普通に接しろと言われている、極一部に対して危険度最大級の人間。
何でも怒れば性格が変わり、森を一つ地図から消したこともあるとか。
霊夢としては、自分もそれくらい出来るので怖くは無いが、面倒なのはごめんだ。

「一体何のよう?私今忙しいのよおばさん」
「…………いきなりねぇ。これはたっぷりイジメがいがありそうだ」

しかし、何故か突然麦野の雰囲気が変わる。
僅かに口調も変化していた。
思わず首を傾げる霊夢。さっぱり起こる理由が分からない。

「私なんか言った?」
「しかも自覚無し、と。これは根本的に"お話"しなきゃなぁぁぁ……」

……だめか。
彼女はそう悟った。
この後霊夢がどんな言動を放とうが、目の前の女性は確実に自分に挑んで来る。
既にカードを一枚取り出し、此方へ向けていることからもそれは伺えた。
なので霊夢は諦め、お払い棒を左手に持ち、問いかける。

「"お話"はやっぱりお茶を交えるべきだと思うのよ」
「そう?お茶は用意出来ないけど和菓子くらいは用意出来るわよ。目が眩むくらいの」

和菓子、ねぇ……と彼女は呟き、嘆息をつく。

「甘ければいいんだけどね」

その言葉に、麦野は凶悪な、鬼人の如き笑みを浮かべ、

「残念……文字通り死ぬ程苦くて苦しいから」
「……苦いのはお茶だけで充分なんだけど」

さて、"お話"の始まりは最初の一撃から。

全く甘く無い一撃から始まる。


楽しい楽しい、弾幕ごっこが始まる。












ボンッ、と木々を突き破り、空中に出現する人影が二つ。
太陽の元でも銀が舞うひんやりした、木々の上空の空間に、二人は同時に飛び出した。


「光線「メルトダウナー」!」


先手必勝とばかりに、麦野の左手から目を瞑りたくなる閃光が溢れ出した。
それは大気を、大気に含む魔力をも焼き、熱を発している。
名称と似たような力を使う知り合いの経験から、霊夢は真上へと飛ぶ。
瞬間、霊夢の居た場所を光が突き抜けた。

「っと」

ズアアアアアアアアアアッ!!という、怖気を誘う轟音。
耳に入れつつ、彼女は光を見る。
麦野から放たれた光線は一本。
だが、その一本がとんでもなく巨大だ。
霊夢の身長の三倍は太く、魔法の森を衝撃波でなぎ倒し、遥か遠くまで突き抜けていた。
怖るべき威力。
単純な破壊力なら、幻想郷においてもトップクラスだろう。

「チッ!」

あからさまな舌打ちを聞き、霊夢は視線を光線から光線を放った当人へと戻す。
位置的に下方となった麦野の表情に浮かんでいるのは、外したという苛立ちのみ。
大きな舌打ちといい、表情の豹変といい、やはり激情すると性格が変わるというのは真実のようだ。

「その程度?」
「言ってくれんじゃねぇかクソガキ……!」

だからこそ、霊夢はあえて挑発する。
雑魚弾幕など要らない。
早くスペルを使え、全て打ち破るから、と。

「後悔すんじゃねぇぞ!?閃光「シリコンバーン」!」

次に起こったのは、小さな物だった。
極小の、光の玉。
それが此方に狙いを定める彼女の指先に浮かんでいる。
余裕の態度で見下ろす霊夢へ、光の玉はゆっくり縮み……
弾けた。

「!?」

閃光が、煌く。
細い光の筋が飛んだと思った時には、既に二本に分かれていて、更に二本が四本、四本が八本、八本が十六本と枝分かれしてゆき、霊夢の元へ届く頃には二百を越していた。
そして届く直前で更に倍になり、四百を越す。
細いレーザーの、束。

「っ」
「どうしたどうしたァ!?まだ一発だぞォ!」

シュパァァァァァァッ!!と、連続した切り裂く音を耳に響かせ、なんとか霊夢は筋の間を縫って躱す。
まるで幾重にも枝分かれした滝のようだが、まだ一発なのだ。

次は三つ。
麦野の前に、霊夢へと向けて光が浮かぶ。

先程の三倍の光の筋が、彼女を襲った。
視界を覆い尽くす程の閃光は、遠目で見ると巨大な一本に見えるが、本当は幾重にも分かれた閃光。

「もう死んじまった、てかァ?博麗の巫女さんよォ!」

次々弾幕を形成し、放ちながら麦野は感情のままに叫ぶ。
もはや空間は光によって目視が難しい程明るく、膨大な熱量が辺り一帯に旋風を起こす。
ゴウゴウ吹き荒れる風の中、麦野は凶悪な笑みを浮かべつつ、更に追加の弾幕を形成する。


「オラァ!次は十発
「さすがにそれは遠慮しとくわ」


何かが空を飛び、
麦野の顔面横から、爆発が起きた。

「ガッ!?」

彼女は衝撃で意識が吹き飛びそうになりながらも、堪える。
しかしスペルは中断されたため、空間に響いていた轟音と閃光は突如として消えた。
攻撃を受けたと分かったのは、爆発の残照たる霊力を感じ取ったからだろう。
爆風によって乱れた髪を強引に整え、其方を見る。

「今ので勝ちだと思ったんだけど、面倒ね」

爆発を炸裂させた犯人、霊夢がそこに居た。
余裕の態度と言動を、全く崩すこと無く。
上空に居た筈なのに今は麦野と同じ高さに居る。
ということは、あの光の束を躱しきったのだろう。
しかしその体に、傷は無い。
顔を労わるように抑えつつ、彼女は憤怒の色を強くした。

「舐めやがって……舐めやがって舐めやがってェェェッ!!」
「お菓子じゃないんだから舐めないわよ」

霊夢の何気ない一言が、更に麦野の怒りに火を注ぐ。
彼女が見守る中、麦野はカードを掲げ、吠えた。
空間に響く、絶叫。


「永光「サテライト」!!」


答えるように、ブンッ、と光の球体が出現した。
但し、出現場所は二人が浮かぶ空間の、更に上空。
大中小の個々によって全く大きさの違う光球は、ランダムで宙をグルグル動き回って居る。

「消し飛べ!」

吐き捨てるように麦野が叫んだ瞬間、光球が"光"を吹いた。
空気をぶった斬る、恐ろしい紅色の光線。
光球自体が、術を放つための砲台だったのだ。
地上へ、正確には浮かんで居る霊夢を中心とした地点に、豪雨のごとく光は降り注ぐ。
大地が爆音を立てながら刳れ、地盤と木々が悲鳴を上げながら消し飛ぶ。

「ハハハハハハハハッッ!」

自らの前に降り注ぐ、光の雨を見て、麦野は笑っていた。
圧倒的な破壊の力。
それを気に食わない相手に叩き込むという、歓喜の感情。

「どうだ!これが私の力だ!思い知ったかクソガキィ!」

感情の思うがままに、彼女は更に出力を上げる。
一層轟音が強まり、更に麦野は高笑いしようと──


「えぇ、よーく分かったわ」


──した所で、幻聴を聞いた。
いや、幻聴では、無い。
光の雨の合間。
僅かに音が途切れた瞬間に、今の声は場に響いた。
博麗霊夢の声が。

「だから、もうお終い!」

彼女は、光の中に居た。
秒間四百を越す破壊の豪雨の中、霊夢は弾幕を躱し続けたのだ。
頭上から降り注ぐ、一発でも喰らえば終わりの攻撃を。
今も、躱しながら攻撃の準備を整えていた。

「なっ」

その余りにも常人を逸脱した実力に、麦野が何かを言おうとした所で、


光の雨の合間から、札と針の嵐が彼女へ殺到し、直撃し、大爆発を引き起こす。
黒煙を体から僅かに放ちながら、彼女は力の抜けた体で、大地に墜落して行った。




(──ふぅ)

霊夢はその姿を見下ろし、肺に溜まった空気を吐き出す。
スペルが解除され、光の雨が止む。
それを確認して、霊夢は自分の真下の大地を見やる。
光線によって森はもはや跡形も無く、円形場に破壊の跡が刻まれていた。
暫く、この地面には雑草も生えないだろう。

「全く、やり過ぎよ。しかも──」

破壊の跡を見てため息を吐く霊夢。
人里の人間に何か言われないだろうか、と自分勝手な心配をしつつ、


「まだ、終わってないし」


ゴバッ!
効果音で表すなら、そんな音。
森から、相手が墜落した場所から閃光が立ち昇る。
正に、閃光と呼ぶに相応しいその光は、

龍の滝上りのように、グィ、と上昇した。

はっ?と、霊夢が首を傾げる前に、


「「イリュージョン・ザ・サン」」


突然、太陽が生まれた。
巨大な、巨大な光の塊。
物理的に、空間的に相手を焼き尽くす光が逆巻きて球を作り出す。
神々しささえ感じる程の、破壊の化身。
一目で霊夢は、太陽のような球体の中心に麦野が居ると把握した。

(……自分は光線の壁に守られて、相手には)

太陽から、紅い閃光が周囲に放たれる。
完全に無差別で無慈悲な、必殺の嵐。
轟音を立て、空気をブチ抜きながら辺りにばら撒かれたのは当然、霊夢にも迫る。
一発でも受けたらヤバイ光を次々、霊夢は軽く躱す。
動きに恐怖は見えなかった。
眼前に迫った腕くらいの光線を、首をそらして躱しながら、

「適当に大火力で攻める、と!」

足元を貫こうとした光線には札をぶつけ、相殺。
爆発によって黒煙が生まれるが、すぐ光によって切り開かれた。

「だけど……」

巨大な光の塊が霊夢の真っ正面から迫る。
遊撃であろう、光の弾幕を放ちながら迫ってくる。
太陽が直に迫ってくる威圧感。
しかし、霊夢は余裕を崩さない。
普段の暢気さもあったが、とある確信があったからだ。

「……そろそろ限界でしょ」

弾幕をひらりひらりと躱しながら、彼女は一枚のカードを取り出して、言葉を一つ。
スペルの宣言。己の奥義の名前を、小さく唇を動かして。


「霊符「夢想封印 集」」


カードが弾けた。
内側に秘められし力を発動させ、現実に具現化する。
七色の巨大な光球が霊夢の周りを一回まわったかと思った時には、
遊撃の弾幕を掻き消し、光と太陽が衝突していた。
空間に音と衝撃が響き、辺りが一瞬、嵐に包まれる。

耳を壊すような轟音と、吹き荒れる風の中、

「……クソ、が」

息も荒く、麦野が生身の姿で空に浮いていた。
太陽を形成していた光は何処へと消え去り、後には太陽の光と風が吹くだけ。
殺人光線は、もう跡形も無かった。

「やっぱり、力を出し尽くすタイプのスペルか」

偶に、そんなスペルがある。
後の事を考えず、全力で相手を葬り去るための一撃必殺のスペルが。
しかし後を考えていないため、一度でも破られると、こうなる。

「チッ……次は……」

むしろ、破られて尚浮かんでいられた彼女は、ある意味異常だ。
やがて体力を本当に全部使いきった麦野は目を閉じ、ゆっくり墜落してゆく。

ボロボロの、環境が破壊されつくされた元森に落ちて行く彼女を見て、霊夢はふと思った。

にっこりと笑って、一言。

「やっぱり、甘い方がいいわね」














少女祈祷中……













設定


~閃光の女王~

名前・麦野沈利

種族・人間

能力・「光線を使う程度の能力」


魔法の森の外れに住む女性。
見た目の姿が大変麗しく、彼女の影を追う男性は少なくない。
性格は普段は冷静で落ち着いた雰囲気だが、戦闘中や怒り狂った時に恐ろしいまでに豹変する。
主な目撃情報は魔法の森近くと人里だが、幻想郷を放浪することもある。
普段は妖怪退治で生計を立てているらしい(※1)。
交友関係は少ないが、幾人かと仲が悪い(※2)らしく、よって全体的にあまり友好度は高いとは言えない。

普段は冷静で落ち着いており、冷酷でもある。怒らせたら、命の保障は無い。
が、此方から何らかの粗相をしでかさなければ怒ることは無いので(※3)余り問題は無いと言える。
会ったら普通に接するのが一番である。

彼女の能力は「光線を使う程度の能力」と名前の通り。
光線を撃てるという、先天的才能が無くても出来る技能だが、彼女の場合威力が桁違い(※4)である。
光線を回転させて盾のようにしたり、僅かだが曲げることも可能らしい。
単純な戦闘力で見ると、とてつもなく恐ろしい能力である。


※1
護衛の仕事はしない。本人曰く「誰かを守るのは苦手」とのこと

※2
主に風見幽香や八雲紫など。いずれも、弾幕ごっこに負けた恨み。

※3
怒らせても、直ぐに謝れば許してもらえることもある。常識はあるほうだ。

※4
森を一つ、地図から消したという話もある。




スペルカード集

光線「メルトダウナー」
光線「シリコンバーン」
永光「サテライト」
光符「メルトダウン」
光線「クリスタルレーザー」
永光「サイエンスサクリファイス」
紅光「血の涙」
死光「キリリングダウナー」
偽光「マスタースパーク」
死光「スパイラルバースト」
光線「パラサイトレイ」
願光「明日の光」
神光「エターナルオブダウナー」

「イリュージョン・ザ・サン」

合計14枚





[25623] Stage3 〜電撃姫〜 御坂美琴
Name: 雷◆c4b80eb2 ID:6c2363a9
Date: 2011/01/28 17:26




Stage3 ~灼熱の砂丘~




辺り一面を砂が覆う、枯果てた土地

昼は地獄、夜も地獄

そんな災厄の土地に居るのは、物好きばかり













「あ、暑い……」

思わず口からそんな言葉が漏れるのを、霊夢は抑えきれなかった。
ジリジリと太陽の光が大気と肌を焼き、汗が止まらない。
ここは砂色に覆われた土地。
水が無い、乾いた土地だ。
こんな所を好む人妖の精神が、霊夢にはさっぱり理解できない。
大気は熱によって歪み、太陽の光は砂漠の砂に反射して地獄の連鎖を繰り返す。
結界を使えば少しはマシになるだろうが、涼むために霊力を使うのはなんだか負けた気がする。

「うぅ、暑い暑い暑い……」

ブツブツ文句を呟いても、暑さが収まる訳はない。
せめて速く飛んで風をうみ、体を涼まそうとした所に、


「ちょろーと、いい?」


声がかけられた。
改造巫女服の首元をパタパタ仰ぎながら、彼女は気怠そうに其方へ視線をやる。
視線の先には、一人の少女。
霊夢よりも年下に見えるぐらいで、茶色の短髪から時折青い火花が散っている。
白いワンピースに身を包んだヒラヒラした格好で、涼しそうだなと思うと同時少々子供っぽいなと観察しながら思う。
彼女がそんなことを、熱によってぼんやりした頭で考えていると、

「私は御坂美琴。お願いがあるんだけど?」


~電撃姫〜 御坂美琴(みさかみこと)


その名前は、風の噂で耳に入れたことがあるような、ないような。
確か、河童の……?
のんびりした思考で考えつつ、霊夢は無駄にニコニコしている美琴へ手を振りながら返した。

「生憎、私はこの先に用事があるの。異変を解決しなきゃなんないから」

とりつく間も無い、明らかな拒絶の意思。
そんなあからさまな態度に、彼女はピクリと、青筋を一つ浮かばせる。


「……勘がいいわね」


美琴の、何処か怪しい一言を耳に入れた瞬間、霊夢の意識がハッキリとなった。
ブワッと、大気が震える感覚が辺りに広がり、体を膨大な霊力が包み始める。
暑さなど忘れたかのようにダレていた顔が引き締まって、博麗の巫女が光臨した。

「へぇー……ようやく当たりね」

うきうきとした、興奮を隠さない表情と口調で、霊夢は紡ぐ。
そう、ようやくだ。
いらない戦いを二つもしたが、その分はこいつに叩きつければいい。
全くもって、巫女らしくない考えだが。

「当たったから、何?」
「当たったら、後は解決するだけよ」

バラッ、と。
霊夢の手から宙に札が舞い散る。
桜の花の如く、柔らかに、美しく。
戦闘準備を整える彼女へ、此方も短髪から火花を更に散らし、美琴は不敵という言葉がしっくり合う笑みで笑った。

「通すと思う?」
「残念、門番は倒される役でしか無いのよ」

むっ、と表情を歪める美琴。

「門番じゃなくて、せめて番人にしなさいよ」
「一緒じゃない」
「一緒じゃないわよ」

ハァ、と。
目の前で美琴があからさまなため息を吐のにも気にせず、針を右手に、お払い棒を左手に持つ。
揺らぎないその姿こそ、霊夢の姿。
しかし相対する美琴の姿もまた、一つの勇者だろう。
一瞬で全身を青い雷撃が包み、雷の化身のような姿。
バチバチと、雷撃音が空間に響く。

「本気で感電させるけど、悪く思わないでよね!」
「落雷になんか、人生で一度も当たったことないけど?」

紫電が散り、大地を揺らす。

異変解決のために、空飛ぶ巫女は弾幕を撃つ。


楽しい楽しい、弾幕ごっこを始めるために。














ザ、ザザ、ザザザザザザッ!!
──耳にまず入ったのは、そんな異音だった。

「?」

明らかに雷撃の火花の音では無い、その音。
それは、真下の砂に覆われた大地から。
下へと目をやる。

「っ?」

砂が盛り上がっていた。
いや、正確には茶色の砂から黒い砂が迫り出して来ている。
モグラが出てくるかのように。
ジワジワと、茶色が黒に浸食されてゆく。
咄嗟の判断で、霊夢は舞っていた札全てを大地へ向けて飛ばした。
茜色の札は紙ではあり得ないスピードで大地に落下し、爆発する。
色とりどりの爆発が、砂を一気に吹き飛ばした。

「はっ!」
「とっ」

雷撃が走る。
顔を其方へと向けずに、彼女は勘のままに体を下方へずらした。
三条の雷が、霊夢の体ギリギリを通過して霧散する。
チッ、と舌打ちが鳴った。

「本当に勘がいいわね!」

叫びとともに、今度は雷では無い攻撃が放たれた。
それは、大地から。
舞っていた爆風を突き破り、漆黒の物理的な弾幕が次々と上空の霊夢へ殺到する。

「よっと」

が、予め読んでいた彼女は、僅かな結界を張ってやり過ごした。
美琴の方は向いておらず、ただただ結界にぶつかっては散る黒い砂を観察し、思考する。

(……特殊な砂?雷とこの砂が、あいつの力みたいね)
「余所見してていいの!?」

ザザザザッ、と、今度は近くから。
結界を解き、霊夢は身を宙に踊らせる。
周りを囲むのは、黒い砂の剣。
元を辿ってみると、美琴の周りを黒い砂が渦巻いていた。

「行け!」

美琴の叫びとともに、黒刃がまるで触手のように霊夢を切り裂かんと迫る。
周囲、ほぼ全てから迫る刃の檻を見て、

「──そこ!」

一番薄いと感じた刃を消し飛ばし、脱出した。
僅かに黒い砂を体に貼り付けながら、霊夢は美琴を再度見て──

「!?」

居なかった。
黒刃の元を見ても、ただ黒い砂の塊があるだけで彼女は居ない。

「落雷「天下無双の轟雷」!」

霊夢は、飛んだ。
上空──、真上に何時のまにか存在していた美琴へと。
しかし、霊夢が彼女へ到達する遥か前に、スペルが発動した。
光を放ち、起きた現象は突然空が黒くなるということ。

(?)

疑問に思って、ハッとなる。
雲が、太陽の光を遮っていた。
──ただし、青い雷を迸らせる黒雲が。


ゴシャアアアアアアアアアアアッッ!!!!


天地を引き裂くような轟音と、衝撃波が、辺りをかき乱す。

巨大な雲から放たれた巨大な雷は幾重にも重なり、全てを打ち抜いた。
大地は勿論のこと、まだ浮かんでいた黒い砂さえも同様に。
巨大な熱量によって砂は溶け、衝撃で吹き飛ぶ。
極地的な雷の雨。
常識という言葉が吹き飛んでいる幻想郷においても、異常な現象。

「…………嘘」

そんな、圧倒的な力を放った美琴は思わずそう口に出していた。
何故か?

「だから言ったでしょ。落雷になんか、当たったこと無いって」

落雷の嵐に包まれた筈の霊夢が、傷一つ無く浮かんでいたからだ。
大した回避行動もとっていないというのに、彼女は全くの無傷。
確かに今の弾幕(そう言っていいのか疑問はあるが)は美琴も細かい操作が出来ない。
落雷とは、そういう物だ。
つまり、霊夢が傷一つ無いのは運の結果。
天下無双の幸運。

「……電磁「レールガン」!」

抜き打ちでスペルが発動された。
美琴のカードを持っていた右手から、何かが超高速で放たれる。
灼熱の赤色を撒き散らし、空間に残照を残す砲撃。
それは、マスタースパークのような破壊光線では無く、メルトダウナーのような貫通消滅光線でも無い。
物理的な、超高速砲弾だった。

「むっ」

いきなりな攻撃に、しかし霊夢は必要最低限の動きで躱す。
ついでとばかりに針を三つ程飛すのを忘れない。
キュボッ!!と、かなり先の大地に衝突して轟音を上げる自分の必殺技を見つつ、美琴は眼前に迫った針をつかみ取った。
素手で、何の躊躇いも無く。

「反応がいいわね」
「まっ、能力の関係上よ。アンタも攻撃が理不尽に全部外れる、なーんてことは無いみたいね」

だったら、と。
美琴は言葉をためて、


「躱しきれない攻撃を叩き込む!砂鉄「ブラックウォール」!!」


宣言とともに、スペルカードが弾けて空へと消える。
シンッ、と沈黙の音が響くような時間が生まれた。
数秒経って、しかし何も起こらない。
疑問に思った霊夢は、美琴の後方に、

津波を、見た。

「ブッ!?」

思わず吹き出す。
常識的に考えて、陸のこの場所で津波など起こらない。
だが現に起こっていた。
真っ黒で、巨大な津波が。
津波の正体は黒い砂こと砂鉄。
高さ百メートルはありそうな砂鉄の壁が砂丘から引き摺りだされ、此方へと迫って来て居るのだった。
地の利もあるとはいえ、巨大な能力行使。
しかも、美琴の顔からして、疲れた様子は見えない。

「さぁ、どう躱す!?」

言われなくても、と霊夢は思ったが口には出さない。
ただ、安全かつ確実に躱せる方法を探していた。

(壁をぶち抜く……は、ダメね。見た所結構薄いからスペル無しでも行けそうだけど、壁の厚みを操作されたら終わりだし。上に逃げる……も、ダメか。なんか浮いてるから、追いかけられるわね……)

ならば、と。
霊夢はカードを取り出す。
絶対的において切り札を切らないのは、馬鹿のすることだとばかりに。

「霊符「夢想妙珠」」

霊力による大玉が、壁を蹂躙した。

「──っぐぅ!?」

そうとしかその瞬間の光景を、美琴は説明し切れなかった。
突如、彼女の周りに数珠のように連なった弾幕が現れたと思った時には、神速の早さをもってして背後の砂壁をぶち抜いていた。
少ない衝撃波を自分の背中側から受け、僅かにふらつく美琴は前を無理矢理見る。
穴だらけとなった壁は美琴のことなど気にせずに霊夢へと迫っていたが、当然、壁に開いた穴から楽々脱出される。

「思ったより脆かったわね」
「……アンタの攻撃が異常なのよ」

呑気にそんなことを言う霊夢を見て、美琴はため息とともに指を軽くならす。
パチン、という小気味のいい音とともに、砂鉄が壁の形を崩し地面へと吸い込まれていった。

「もう、手加減なんてしてられないわね」

バチィッ!と、簡単な電気の弾丸がばら撒かれる。
周囲へ均等にばら撒かれた電撃は、霊夢の札によって一つ残らず撃墜された。
容赦ない、その姿。

「電磁「エレキトリック」」

しかし時間としては充分だったのだろう。
彼女の手から次なるスペルが発動された。
霊夢は自分も一枚スペルを準備しつつ、次の現象を待つ。

「はっ!」

砂鉄が、電撃を纏った砂鉄が出現した。
ランダムで宙に出現し、それは様々な形を持ってして宙を舞う。
槍のような、棘のような、剣のような、共通点といえば鋭いということぐらいしか無い、凶器の形で。

「ん……?」

手加減無しと言った割には、やけに手緩いなと霊夢は思ったが直後に認識を改める。
空間に漂う凶器。

それらを繋ぐ、電気の縄が出現した。

バチバチ!と、天然のロープは熱を発散する。
宙に、雷の網が生まれた。
青い雷のロープに囲まれた霊夢は、しかし慌てない。
落ち着いて、弾幕を見極める。
上、下、右、左、前、後。
ランダムに迫る弾幕の、自分に関係する物だけを意識の中に入れた。

そうすると、僅かな抜け道が見えてくる。

「ふんっ!」

胸元に直撃しそうになった雷を胸を限界まで反らして躱し、態勢を崩したまま、砂鉄の塊を躱す。
アクロバティックな動きだが、見るものがいれば気がつくだろう。
動きに、一瞬の無駄も無いことに。

空中で逆さまになったまま、彼女はぐるりと一回転。
手から札を放つ。
札は弾幕に衝突し、爆発。
一気に霊夢を仕留めようとしていた、杭型の砂鉄弾幕全てが粉々になった。

「スペルブレイク」

ヒラリ、と紅と白の服を翻しながら彼女は呟く。
さて、次はと思う間もなく、




「雷撃姫「天雷・弾幕結界」!!」




「っ!?」

とんでもない、スペルカードの名が告げられた。
「弾幕結界」。
ある程度の実力を持つものは、皆その名に恐怖を、もしくは警戒を抱く。
何故なら幻想郷において、この名を持つスペルは凶悪な物だという認識が存在するからだ。
そして、それは美琴が持つこの弾幕結界にも変わりは無かった。

先程の砂鉄の弾幕とうって変わり、全てが雷撃によって構成されている。
ただ、剣の形をしているもの。
球体の状態で留まっているもの。
杭型の状態で留まっているもの。
全てが、中心に霊夢をおいて並んで包囲している。
隙間無く、何重にも弾幕の層を重ねて。
完璧な、結界のように。
一発一発が必殺の雷であり、見るものに絶望を与えてもおかしくない、その光景。

「いけっ!」

美琴の叫びが一つ。
瞬間、
宙に留まっていた雷撃全てが、中心の霊夢へと収束した。
空気を焼きながらそれは彼女を消滅させんと迫る。
雷のように迫り、
弾丸のように迫り、




「大結界「博麗弾幕結界」」




全てを、撃ち落とされた。
「弾幕結界」に。

「──」

圧巻の、光景。
霊夢が隠し持っていたスペルが発動した時、周囲に弾幕が形成され、ぶつかり合い、完全に相殺しあったのだ。
札が、霊力の弾丸が、大玉が、針が、全ての雷撃を打ち破り、脅威を消す。
本来なら相手を殲滅するための弾幕は、同じ名を冠するスペルカードを打ち破るために使われたのだった。

「──っ、くっ!」

放心状態から、美琴は漸く復帰する。
しかし、もう余裕など何処にも無い。

「──終わり?」

そんな彼女へ、冷静に、余裕を持ち、霊夢は尋ねる。
周りを舞う爆煙など気にせず、ただただ勝負のために。
本当に人間なのか疑いたくなるその姿。
だが、美琴とてここまで来て後には引けない。


「「only my railgun」!!」


故に、最後の切り札を発動させる。
今までに無い轟音が場に満ち、

雷の天使が、光臨した。

そう。
「天使」
今のその姿を、それ以外のなんと呼べというのだろう。
背中から十以上に分かれた雷の幻想的な翼を背負う、その姿を。
彼女の背中から伸び翼はゆっくりと、長くなって行く。
御坂美琴の、限界の力。
天に近付こうとして作り出した、究極の雷。
彼女は翼を僅かに揺らし、霊夢を見る。
瞳は何処までも青色に染まっていて、背中に背負った蒼雷の翼と、よく似合っていた。

「……来なさい」

絵にしたら、恐らく金で買えないくらいの幻想光景。
しかし霊夢は、光景に見とれ続けることは無い。
今はまだ、弾幕ごっこの最中なのだから。

「……はぁぁあああああああああっ!!」

閃光が、走った。
雷を軸にした、彼女が撃てる最強の一撃。
手からのみしか放たれ無かったそれは、今や翼からも放たれ神々しき弾幕光線とかす。

それらを霊夢は、ことごとく躱した。

鳥のように上昇し、岩のように落下し、風のようにゆらりゆらりと動く。
見るもの全てを引きつけるその優雅な躱し方に、美琴は思わず苦笑した。

博麗の巫女は、大地に着弾して起こる轟音も気にせず、彼女の目の前へと躍り出る。


勝敗は、鮮やかに結した。











「うぐっ……いたたたた……」

砂に埋もれかけながら、美琴はそう呟いた。
その姿を霊夢はからっとした笑顔で見ている。
自分で撃墜した者に向けるとは思えない類いの笑みだ。

「じゃあ、先に行かせてもらうわよ」
「ちくしょう……」

霊夢は美琴の捨て台詞を無視して飛び立つ。
弾幕ごっこの最中に方角など分からなくなった筈だが、彼女は迷い無く進んで行く。
彼女の目的はこの異変の主謀者であって、番人などでは無い。
揺らぎ無い、遠ざかって行く紅白の姿。

その姿に、口に入った砂を吐き出しながら美琴は呟く。

「アイツ等でもちょっとキツイかな?」

















少女祈祷中……













設定


〜雷撃姫~

名前・御坂美琴

種族・人間

能力・「主に雷や磁力を操る程度の能力」


幻想郷の外れに住む、幼き少女。
正義心が強くて子供っぽく(※1)、人里などでもよく見かけられる。
性格のためか、よく寺子屋の子供達と一緒に遊んだり、逆に授業(※2)をしていることもあるようだ。
能力の関係上か、河童達の研究にも助力しており、度々妖怪の山でも見られる。
人妖ともに交流関係があり、仲がいいため友好度は悪くない。
具体的には妖怪の山の巫女(※3)や、河童や天狗など。

性格は素直で無く(※4)怒るたびに雷が煌くが、余程のことが無い限り人妖ともに殺しはしない。
精々、一ヶ月寝たきりにする程度である(※5)。
人に対しては特に優しくて、頼みを言えば引き受けたり助けてもらえることも多い(※6)。
むしろ彼女に危害を加えなどしたら、その背後の人物によって更に危険になるだろう。
本人の力も本物で(※7)彼女が悪人では無くよかったというべきか。

彼女の能力は「主に雷や磁力を操る程度の能力」である。
雷を幾らでも自由に生み出し、操作が可能で、磁力の力によって砂鉄を操り武器や壁にすることも可能のようだ。
更に本人からの情報によると磁力の力場を常時辺りに撒いているため、目を閉じていても大体周囲の様子が分かるという(※8)。
そして肉体を電気によって僅かに強化し、反応の速さも上げているとのことだ(※9)。


※1
服装なども子供っぽいと、周囲から度々からかわれている。

※2
あくまで慈善事業なので、お金は貰っていない。どうやら大量の財宝を売って生活している様子だ。

※3
異変前から知り合いだったようだが、どう知り合ったのかは不明である。

※4
「アイツが素直ォ?ンなこと龍が死ぬくれェあり得ねェだろォが」と言われた。

※5
本人曰く「雷は意外と手加減し易いから楽」とのこと。

※6
彼女には最強の守護者が居る。

※7
八雲紫なども認める、弾幕ごっこにおいては幻想郷最強クラスである。

※8
よって彼女に不意打ちや奇襲の類いは無駄らしい。

※9
何故簡単に自分の秘密をバラすのかというと「バレた所で意味ないでしょ」とのこと。




スペルカード集

落雷「天下無双の轟雷」
電磁「レールガン」
砂鉄「ブラックウォール」
電磁「エレキトリック」
雷撃姫「天雷・弾幕結界」
電磁「スパイラルレールガン」
落雷「10おくぼると」
砂鉄「黒い砂嵐」
落雷「超天空雷」
電磁「ブラックレールガン」
砂鉄「プライドブレイカー」
電磁「雷鋼の鎚」
黒雷「黒電一閃」
天雷「無双雷牙」
蒼雷「神速の咆哮」
迅雷「天空舞雷」
電光「レールガン・改」

「only my railgun」

合計18枚





[25623] Stage4 〜常識の破壊者〜 垣根帝督
Name: 雷◆c4b80eb2 ID:6c2363a9
Date: 2011/01/31 16:38




Stage4 ~忘れられし岩場~




誰も寄り付かず、全ての存在から忘れられた岩場

故に何者もそこに来ることは無く

ただ岩のみが、時の流れに身を任せる















「さて、そろそろかしら?」

ごつごつした灰色の物体──通称、岩が溢れ返る場所の上空。
紅と白の服を揺らしながら、霊夢は飛んでいた。
戦闘から真っ直ぐ飛ぶと、待っていたのは北と南と西を全て山に囲まれた岩場。
残りの入り口たる場所は、先程の砂丘のみ。
完全に孤立した、誰も、妖精の姿すら見当たらない岩場を霊夢は眺める。
彼女の勘がここに今回の異変の主が居ると訴えていた。
しかしながら、勘はしょせん勘。
ハッキリとした目的地が分かる筈も無いし、異変の主が誰なのか、どんな目的なのかということも分から無い。
なので、捜索するのだ。
見つけたら理由を聞く前に殴る気満々で。

「というわけで、さっさと出て来なさいよー」

そんな心中の狂喜を平然と隠し、霊夢は見る者全てを癒すような笑みを浮かべながらただ進む。
……見る者によっては、逆に気味悪く思う笑みだった。
そして笑みのせいか、元々人が居ないせいか、彼女に答えてひょこひょこ出て来る者は居ない。

「……」

そのことに気がついたのか、気がついていないのか。
空中で、霊夢の動きが止まる。
はためいていた巫女服の揺れが、一瞬だけ収まった。

直後、


「──異常「白翼無限舞踏」!」


轟!!と。
上空から、突然弾幕がやって来た。
弾幕の姿は、羽。
白銀の雪を連想させる、見事なまでに白い鳥の羽。
それらが、百を越すそれらが、
まるでダーツの羽のように、上空から一直線に降り注いで来た。
高い音とともに空を翔てくる羽は、見た目の美しさとは裏腹に確実に人を殺せる威力を持っていると、霊夢には直感で感じ取れる。

「ひゅっ!」

なので無論、たやすく躱した。
それは雨を躱すに等しい行為だったが、彼女はサラリと横に移動し攻撃範囲から逃れる。
が、追尾機能でもあるのだろう。
大量の羽の内、半分程が横に直角で曲がり、霊夢を追う。

「ふんっ!」

霊夢は腕を振った。
指には札が数枚乱暴に掴まれており、振られることによって高速で放たれる。
瞬速を持って飛んだ札は、しかし羽へと向かわない。
羽の弾幕による壁。
その更に上に居る"者"へと札は襲い掛かり、

「おわっ!?」

ドカンッ!!と、大爆発。
爆炎による轟音が響くと同時、美しき羽の弾幕は突如として消える。
スペルを中断されたからだ。
つまりは、爆煙を払って再度霊夢の前に現れた者が、突然の襲撃者。
上空に居るであろうその姿を、霊夢は岩場にある一つの巨石に足を付け、眺める。

そこに居たのは天使だった。

御坂美琴とはまた違う翼を持つ者が、居た。
ただ美琴の翼が膨大な威力を放出するために作り出したものだとするなら、その翼は、まず間違い無く本物の天使の翼だった。
純白の羽で形成された、巨大なる三対の翼。
柔らかで、何処か生物的で、幻想的な、不思議な翼。
本来は鳥にしかついていない翼は今、一つ十メートルという馬鹿みたいな長さで存在し、

一人の人間の背に、存在している。

年は霊夢と差程変わらない。
ただ男で長身、外界産のようなツルツルした素材で出来た赤色の上着を見事に着こなしていることから、実際よりも大人に見える。
若干色の薄い茶色の前髪を揺らし、男はニヤリと笑う。

「やるじゃねぇか」


~常識の破壊者~ 垣根帝督(かきねていとく)


それが、この明らかに人間の枠を超えた者の名。

「人間じゃない?」
「悪いな。人間だ」

翼を生やしていることから人間ではないのかと思ったが、否定され納得する。
よく見ると、羽の一つ一つが何らかの力で構成された物であると分かったからだ。

「で、アンタが異変の犯人……じゃ、ないわね」
「おいおい、少しは疑ってもいいんじゃねぇのか?」

ワザとらしく、垣根はやれやれと首を横に振る。
馬鹿にするような、というより馬鹿にした態度。
失礼な行動に対して、霊夢はニッコリ笑い、


「いや、アンタ如きに異変が起こせるとは思えないし」


喧嘩を、売った。
花のような笑顔で喧嘩売られ、ビキリ!と、整った彼の顔に青筋が浮かぶ。

「……ムカついた。さすがは博麗の巫女。対したムカつきっぷりだ」
「牛乳でも飲んだら?」

更に挑発の言葉が、霊夢の口から紡がれた。
この時点で翼から放たれるプレッシャーが、中級妖怪程度のレベルなら逃げる程にまで達している。

「適当に脅すだけにしようかと思ったが変更だ。テメェはここで素敵で愉快なオブジェに変えてやる」
「残念。アンタみたいな三下は倒されるのが常識よ」
「ハッ……知らねぇならよく覚えとけ」

バサァァッ!!と、白銀の翼が、天に伸びた。
長く、長く。
神々さを発し、天からの贈り物を受け取るように大きく、広く。

「俺に、そんな常識は通用しねぇ」
「まぁ、世の中常識が通用する方が少ないでしょ」

暴風が吹き荒れ、弾幕が唸りをあげる。

世界は戦いに震え、始まりを告げる。


楽しい楽しい、弾幕ごっこの始まりを。










ゴウッ!と、迫る巨大な物体。
自分を叩き潰さんとする物体の正体は、巨大な翼。
霊力を込めたお払い棒で、翼を弾く。

「オラッ!」

乱暴な言葉とともに、三対の翼が大剣のように振られた。
頭上から己を叩き切ろうと、巨大な長さになって迫る翼を、霊夢は岩を蹴って躱す。
クルリ、と宙を舞い、自分の居た岩を翼が叩き潰すのを感じつつ、彼女は別の巨岩に着地した。
曲芸師の如き舞。
しかし、拍手は無く、次に迫ったのは右と左から迫る翼の大剣だった。

「──っ、と」

ハサミのように閉じる翼の領域を見極め、霊夢はまたしても上へ飛ぶ。

「かかった!」
「どっちが?」

読んでいたのだろう。
追撃の羽弾幕が、真正面から迫った。
霊夢は手元に四角い結界防壁を張ってやり過ごし、逆に着弾時の衝撃を利用して距離を取る。

霊夢は接近戦が得意な方では無い。
もっとも、そこら辺の妖怪などを簡単に瞬殺するくらいの戦闘力はある。
ただ、上の領域においてはそうでない。
というより、霊夢は遠距離戦の方が圧倒的に強いのだ。
故にまず、距離を取る。

垣根はそれを最初の激突で気がついていたのだろう。
翼を武器とした接近戦で、彼は戦っていた。
だが、今。
距離を取られる。

「チッ!」

翼をはためかせ、機動力の全てで迫ろうとするが、

「ぐおっ!?」

突如、後ろからの爆発により、態勢が致命的なまでに崩れた。
翼の散った羽。
その隙間から見えたのは、とんでもない距離のカーブを描いて此方に迫る誘導弾だった。

(おいおい!なんつー技術だ!)

垣根が翼で弾幕をかき消している間に、霊夢はまるで疾風のように距離を取り、その手に針と札を持つ。
そして、

「はぁぁっ!」

全部、投げつけた。
空気の層を乱暴に切り開いて、札と針は一気に垣根へと向かう。
更に、次の攻撃はこれだとばかりに、霊夢は霊力を右腕に収束させていた。
無言のプレッシャーとともに迫る、弾幕の嵐。
一転して不利な光景を見た垣根は、

「あぁ、クソ。異常「殺人太陽光」!」

二枚目のスペルを、発動させた。

瞬間、翼の一つが弾ける。
羽の塊であった翼が弾けたため、翼を構成していた羽が空に撒き散らされる。
ヒラヒラと、雪のようにゆったりと羽は舞い散り、

「っ!」

霊夢は全くの勘で飛び退いた。
あと少し遅ければ、結界を張っていただろう。
チカッ、と羽に太陽の光が当たった瞬間、
一条の、強い太陽光が彼女の居た場所を通過する。
鏡のように、羽が太陽光を反射した。
その過程で、ただの太陽光が全く別物になったと、霊夢には分かる。

「言っただろ?常識は通用しねぇってな」
「っ」

舞う羽からの太陽光を、霊夢はなんとか躱す。
三つの閃光は、傍目からは普通の光にしか見えない。
ただの光にしか。


ジュウウウウウウウウッ!!


当たった岩が、溶けていることを除けば。

「っ!」

鏡の要領で複雑に反射してくる光を、霊夢は急降下して躱す。
太陽光からは何も感じない。
だが、もはや普通の光では無い。

「──なるほど」

彼女は納得する。
確かに、これには常識が通用しない。
常識的に考えて、普通の太陽光が、岩を溶かすだけの力を持つ訳がない。
物理法則においての、非常識。

だが、

「所詮は、弾幕よ」

霊夢は、札と針を投擲し、
撃ち落とした。
宙に浮いていた羽の、全てを。
百発百中という言葉があるが、今霊夢が行ったことはその言葉通りのもの。

百の羽を、全て狂いなく撃ち落とす。

「もうかよ!」

早くも自分のスペルが破壊されたことに、垣根は声を荒げた。
羽に反射した太陽光が殺人光線になっていたのだから、鏡たる羽が無くなった今、必然的に殺人太陽光も消え去る。
空間に満ちていた異常の法則は、今は無い。

「ほら、次はいいの?」

空中を、まるで雲のように漂う彼女からの挑発。
ギシリッ、と垣根は奥歯を噛み締めてから叫んだ。


「上等だ!異法「完全封殺」!」


三枚目のスペルカードが、発動した。
光を辺りに放ち、爆発するような効果音が、寂れた岩場に響き渡る。

………………………

が、

「……?」

何も、起きない。
ただ翼が復活して大きく広げられただけで、それ以外は何も起きない。
スペルをミスした訳では無いだろう。
現に、彼女の瞳に映る垣根の表情には笑みが浮かんでいた。

ボバッ!と、一振り。
彼の翼が一つ振られ、同じ高さに浮かぶ霊夢へと、羽が解き放たれる。
矢のように迫る羽を見て、取り敢えず霊夢は右に動こうとして、

左に、動いた。

「っっ!?」

おかしい。
そう彼女が思った時には、躱せた筈の弾幕が目の前にまで来ていた。
咄嗟に結界を張る。
結界に着弾した羽はスパークを散らしたかと思うと、
白い閃光を撒き、炸裂した。

「うぐっ!」

左手で結界を支え、霊夢はなんとか耐え忍ぶ。
本来なら躱している所なのだが、右に動いたつもりが左に動いていたのだ。

(幻覚系……!)
「はっ、どうだ。少しは効いたんじゃねぇのか?」

今までの余裕の笑みを消せたのが嬉しかったのか。
垣根は笑いながら、翼を振るう。
翼が振るわれる度に、羽の矢が次々と暴風とともに放たれた。
剣を振るったような、空気を切り裂く音を耳に入れつつ、霊夢は考える。

(能力を使えば関係無いけど、疲れるし、やっぱり普通に躱した方が楽ね)

本当に命懸けの状況なのかと、疑いたくなる思考の内容。
フワフワと風船のように軽い思考を終えて霊夢は結界を解く。
解くとほぼ同時に第二陣の羽が迫るが、

彼女は、ゆっくりと体を動かして羽の攻撃範囲から逃れた。

「なに!?」

これに驚いたのは垣根だ。
現在、二人が居る空間は垣根の能力によって非常識が支配する空間となっている。
空を飛ぶ際の法則に介入し、逆の方向に体が動くという新たな法則がこの場において適応されているため、霊夢も右に動こうとすれば左に、上に動こうとすれば下に動くことになる。

なのに霊夢は、自由に空を飛んで、弾幕から逃げていた。
他人から見れば、普通に飛んでいるとしか思えない姿で。

「馴れると簡単ね」

そんな一言が彼女の口から放たれ、爆発音の合間に響く。

「たった一回でだと……!?」

戦慄した。
もう、天才などというレベルでは無い。
たった一回の失敗でここまで完璧を得れる者を、天才などという言葉で表すのは無理だ。

「隙あり」
「がっ!?」

衝撃。
垣根が茫然としている間に霊夢は彼の手元まで接近し、顎に容赦無い蹴り上げを叩き込んでいた。

「この……っ!」

彼が顎を抑え、反撃しようとした時にはもうそこに霊夢の姿は無い。
二十メートル程離れ、紅白の服を揺らす。

「……」

微動だにしないその姿に、垣根の目が段々と平坦になってゆく。
舐められている。
そんな言葉が垣根の中に生まれた。

「霊符「夢想封印」!」

しかし霊夢に、そんな思考に付き合ってやる道理は無い。
彼女の周囲に七色の光球が現れ、集束。
一気に解き放たれて、垣根へと迫った。


「異物「ダークマター」!」


霊夢の遠慮無い、怒涛の攻撃。
反射的に彼は、スペルカードを発動させた。
自分の中で、二番目に強いスペルを。
それだけ、彼は非常識を楽に超えてくる巫女に追い詰められていた。

空間が、歪む。

「?」

比喩では無く、彼の周囲の空間が歪んだ。
背後の景色が霞んで捻れ、ひび割れる。
疑問に思いながらも、霊夢は光球を向かわせ、垣根へと叩きこんだ。

そして、爆発が霊夢に向かって起きる。

「っ!?」

本来ならば、爆風も爆炎も全てが相手に叩きつけられる筈。
しかしながら、何故か爆発は全て、霊夢に向かって跳ね返って来た。
二十メートルの距離があった筈の、彼女へと。

「くっ!夢符「二重結界」!」

正面に、スペルカードによる結界を瞬時に展開。
展開と同時に、自分の霊力による衝撃が襲った。
思わず体が後ろに押される。

(反射……!?いや、爆発の法則が変わったって所?)

どちらにせよ、攻撃を防がれるどころか跳ね返されるのならば、攻撃をしなければいい。
そう考えた所で──

ゴシャァッ!!と、何も無いのに霊夢の体が吹き飛んだ。

「──!?」

念動力、もしくは風系の攻撃。
そんなことを考えているうちにも体からミキミキと嫌な悲鳴があがり、ゴミのように空を舞う。

「ぎ、ぐっ!」

十メートル程上空に打ち上げられた所で、漸く霊夢は体を反転させて態勢を元に戻す。
視線を走らせると、空間の歪みはいたる所にあった。
透明な何かはゆっくり宙を回転しながら飛び回り、異界の法則を内側に秘めている。

「……攻撃で消すのは無理ね」

わき腹から走る痛みに顔をしかめつつ、彼女は憎たらしげに空間の歪みを睨みつけた。
歪みから普通の光球型弾幕が撒き散らされ、躱すのも非常に億劫だ。
なので霊夢は、

「──そこ!」

勘のままに、札を放った。
一枚の札は何も無い空間へと"直撃"し、爆発。

轟音が、響いた。

「ぶわっぷ!?なんでだ!?」

爆煙の中、飛び出して来たのは垣根。
今の一撃はそれなりに効いたのか、スペルは解除され、歪みは一つ残らず消える。
彼はどうやら何らかの非常識を使って姿を隠していたらしい。
先程の攻撃はアイツだろう、と霊夢は勝手に決めつけた。
それは、事実だったが。

「テメェ……どうして俺の居場所が……」

彼の煙を払いながらの言葉に、霊夢はたった一文字。

「勘」
「…………」

今まで、このスペルを破ったことのある、誰とも違う返答に、垣根は思わず笑いたくなった。
勘、と言った者は何人か居れど、それ等は全て実戦から導き出した本能の答え。
なのに、彼女の勘は、本当にただの勘だと分かってしまうくらい、本人の言葉に重みが無かった。

「面白ぇ……」

ニヤリ、と。
垣根の表情に、これまでとは違う笑みが浮かぶ。
その笑みの正体は、好奇心。
霊夢がどこまでやれるのか、自分が彼女に対してどれ程戦えるのかという、そんな闘争心に裏打ちされた、感情。

「見せて見やがれ!」

故に彼は笑う。
笑って、放つ。


「「天界からの未元物質」!!」


自分の、最大のスペルを。

「……」

威圧感は、空から。
頭上に展開された羽による雲。
白銀の輝きを放つそれから、羽が降る。
一つ一つに、異界の法則を秘めて。

「……」

霊夢は前へと飛んだ。
居た場所を、死の太陽光が駆け抜ける。

と思ったら、ギシッ、と体に物理的な圧迫感。
重力が倍増しているのか、と思いつつ更に前進。

キュンッ!!
と、極光の残照を引いた羽の槍が、彼女へと降り注ぐ。
霊夢は結界も張らず、ただ光の中を突き抜ける。

更に突然、空間が爆発した。
腹の底まで響く爆音を無視し、彼女は一気にスピードを上げる。

狙いは、ただ一つ。

「ハッ!」

垣根帝督のみ。
彼は三対の、更に巨大になった翼を乱雑に振るった。
振っただけで、低級妖怪ならば死んでもおかしくない烈風が吹き荒れ、霊夢を襲う。

「ふっ」

彼女は一息吐く。
それだけしか、口から何も言わなかった。
烈風をお払い棒で無理矢理叩き伏せ、翼による刃を手を付いて反らす。
翼自体にも、膨大な熱量が備わっているにもかかわらずだ。
恐らく、膨大な霊力でねじ伏せているのだろう。
霊夢は、伸ばされた翼の上を道のように走る。

「ラァッ!」

最後の抵抗と言っていい、蹴り。
垣根は己の非常識と霊力に強化された蹴りを放つ。
突き出された左足の蹴りを、霊夢は踏んづけて、

カウンターの、回し蹴りを叩き込んだ。
















「さっさと行っちまえ」
「あら、さっきとはやけに態度が違うのね」

遥か上空。
墜落し、地面に横たわる垣根を見下ろしながら、霊夢は笑う。
その笑みからストレスが解消出来たということが、誰にでも分かる。
なので少しイラッと来ながらも、垣根は岩に背を預けて、

「ハッ、ウダウダ言うつもりはねぇよ。精々、もっとやべぇ怪物共と戦って来い」
「遠慮無くそうさせてもらうわ」

彼の言葉になんら躊躇いを見せず、博麗の巫女は飛んで行く。
呆れた、とばかりに垣根はため息を一つ。
遥か下方の彼の態度など気にせず、霊夢は疑問に思い、一言呟く。
軽く、とても軽く。

「化物って、何処から何処までなのかしら」















少女祈祷中……












設定


~常識の破壊者~

名前・垣根帝督

種族・人間

能力・「非常識を使う程度の能力」


御坂美琴など(※1)とともに暮らす、番人の男(※2)。
性格は軽く、しかし怒った時には冷酷となる。
幻想郷の各地を放浪しているようで、様々な場所で見られている。
ただ当ても無く旅をするのが好きなようで、戦うために旅をしている訳ではない(※3)。
そのため人妖共に交友範囲が広く、特に女性には優しい(※4)。
人里においても、様々な人間と歩いている姿が見られた。

性格上、彼は敵対しなければ特に何もして来ない。
仮に向こうから接触を図って来た場合でも、普通にすれば問題は無い。最低限の常識はある。
ただ、彼は敵に対しては完全なまでに容赦が無いため(※5)、喧嘩を売ったり襲ったりするのは禁物である。
実力も高い上、彼の能力は強さという物を関係しなくするようなこともあるため、なるべく強い者でも戦わないことをお勧めする。

彼の能力は「非常識使う程度の能力」であり、常識を無くすという摩訶不思議な能力である。
背中に展開される翼は彼曰く「非常識というモノの塊」ということで、彼の能力をこの世に浸食させるために必要な物らしい。
能力の説明を言葉で説明するのは難しく、例を上げると、
・太陽の光が岩を溶かす熱線になる。
・重力が逆さまになって、物が浮かぶ。
などという、非常識な現象が起きる。
「異界の法則をこの世に引き摺りだし、操る力」とは、八雲紫の言葉。
ただ、まだこの能力には先があるようだ(※6)。


※1
他に二、三人(?)程居るのが確認されている。

※2
本人は番人を止めたいらしい。

※3
なのだが、交戦的ではある。

※4
女好きなのだろうか?

※5
ごく稀に、情けをかけることもあるらしい。

※6
「概念的な常識を壊す能力になるかもしれない」とのこと。




スペルカード集

異常「白翼無限舞踏」
異常「殺人太陽光」
異法「完全封殺」
異物「ダークマター」
異常「風神白羽桜」
異物「ダークマター・未現出」
非常識「暗黒物質」
異法「虚像壁光」
異人「迷い込んだ異世界」
異常「天人墜落」

「天界からの未元物質」

合計11枚





[25623] Stage5 〜最強の存在〜 一方通行
Name: 雷◆c4b80eb2 ID:6c2363a9
Date: 2011/02/02 17:08




Stage5 ~深淵の洞窟~




真っ暗闇の世界に光は無く

人生の先行きを示すかのように

絶望の象徴たる闇が溢れ返っている













「あー、面倒ね」

霊夢の声が洞窟内にキィィィン、と高く木霊する。
彼女は苛つきが多少込められた、不機嫌な声音で愚痴を零していた。
巨大な洞窟内。
岩場に存在した入り口から飛び込んだのも束の間、早々に霊夢は外に出たくなった。
広さは問題無い。
地底なのかと疑いたくなる程、洞窟内は広かった。
しかし、暗い。全く明かりが無い。
地底と違って光苔の一つも無かったのだ。
そのため、霊夢は飛びながら霊力による明かりを灯さなければならなかった。そうしなければ、飛ぶどころか歩くことさえままならない。

「……って、あれ?」

が、一際大きな空間に飛び出した瞬間、霊夢の目に映ったのは炎だった。
炎、といっても灼熱の火の海が広がっていた訳ではない。
かがり火。
空洞の壁に、ロウソクや松の枝が幾つも取り付けられていて、全てに真っ赤な火が灯っている。
暗闇の世界は火のお陰で、光の広間を浮かび上がらせていた。

「……」

広い、広間だった。
端から端まで㎞単位の長さがあり、天井は高過ぎて見えない。
天然の洞窟には似合わない人工的な光景だが、少し青みがかかった岩盤が天然の光景を連想させ、妙なミスマッチを描き出している。

そこに、一人の男が霊夢に背を向けて立っていた。

男、というよりは少年と言ってもいい風貌。
炎の赤に照らされる髪は銀の光を放ち、体は全て黒い服に覆われている。
靴でさえ、黒。
なのに、隙間から見える肌はとにかく白い。
雪のように白く、触れただけで壊れてしまいそうな線の細さが見える。

普通の洞窟なら、旅人だとすますことも出来ただろう。
しかし、ここはあの番人に守られた洞窟。
普通の旅人が、ここに居る訳が無い。

「……あんたがこの異変の犯人?」

霊夢の声が、彼女が思った以上に響く。

「あァ?」

他人が居ることに、漸く気が付いたのか。
彼は、霊夢へ振り向いた。
真紅の眼光を、殺気に光らせ。


~最強の存在~ 一方通行(アクセラレータ)


霊夢は思う。

(今までとは、違う)

博麗の巫女になって以来、最大の警報を頭が鳴らしていた。
この目の前の存在は、レベルが違う。
今まで数々の存在と、彼女は戦って来た。
妖怪、妖精、魔法使い、吸血鬼、幽霊、宇宙人、閻魔、死神、巫女、神、覚り妖怪、スキマ妖怪、天人、更には月人まで。
幻想郷において実力を持つ者達の殆ど戦い、勝ったり負けたりして来た。

しかし、それらのどれにも感じなかった得体の知れない力を、霊夢は今、感じ取っている。

「オイオイ……まさかあのメルヘン野郎、負けやがったのか」
「と、いうことは貴方が異変を起こした犯人ね」
「ンな訳ねェだろボケ。何が悲しくてンな無駄なことしなくちゃなンねェンだよ」

きょとん、となって、首を傾げる。
言葉から嘘は感じ取れない。
それどころか、逆に迷惑しているという気持ちが伝わって来た。

「本当に?」
「そうだって言ってンだろ。つゥか、今からその馬鹿をブン殴りに行くとこだボケ」

……暴言にイラッときつつ、彼女は更に問い詰める。

「だったら誰よ。私は早くお茶を飲みたいのよ」
「さっさと家に帰って飲ンでろォ」
「そうするわ。異変を解決してからね」

引き下がらない霊夢。
彼女の性質を理解したのか、一方通行はハァ、と息を吐く。

「メンドクセェ、こっちは忙しいンだ。死ンでも文句言うンじゃねェぞ」
「死んだら口は動かないわよ。死人に口無しって知らない?」

霊夢の周りに、霊力が集束し始めた。
それに伴い、空気の渦が生まれて行く。
洞窟に響き渡る、轟風による騒音。
対して一方通行は、特に何もしない。
ただ黙ってポケットに両手を突っ込み、殺気を充満させるだけ。
殺気は重く深く、吐き気がするような気分の悪さを与えて来る。
しかし霊夢の表情が、姿が揺らぐことは無い。

「地獄までの一方通行だ。超特急で送り届けてやる」
「分かった、逆走すればいいのね」

空間は限界に達して、弾ける。

膨大な人外の力は響き渡り、ぶつかり合う。


楽しい楽しい、弾幕ごっこの合図。












声が一つ。

「奇術「ミスティックレイター」」

いきなりだった。
開始一秒と経たずに、スペル発動。
どうやら本当に、彼は急いでいるらしい。
そう考えつつ、霊夢は地を蹴って飛び上がり、距離を取る。
高い高い洞窟の空間に浮かんだ彼女は、一方通行の手元を見た。
スペルカードが握られていた手に集まる光は、黒。
黒い、弾幕。
華やかさも求められる弾幕ごっこにおいては、珍しい色だった。
黒い魔力の塊が彼の右手から解き放たれる。
レーザーの様に伸びたそれは、一気に空中を駆け巡った。
キュンッ!と、響く音。

「んむ」

対して霊夢は一気に反転。
一方通行に接近する。
そして目の前に壁のように迫ったレーザーを紙一重で躱した。
迷い無い、サラリとした超人技。
彼はその姿を見て、

「曲がれ」

パチン、と指を鳴らした。

「っ!」

瞬間、レーザーが曲がった。
それも十に分裂し、直角に曲がって行く。
普通、弾幕というのは大概が緩やかなカーブを描いて曲がるが、これは完全な九十度に曲がって空間を駆け巡っていた。
空間に、黒いレーザーによる網が出来て行く。
予測不可能、更には普通に無いレーザーの軌道。
霊夢は一方通行への接近を止め、身を翻して背後からのレーザーを躱す。

「なるほど」

確かに、一部には美しいと言われそうな弾幕だ。
だけど、霊夢には綺麗だと思えない。
故に、

「はぁぁっ!」

札を纏めて投げつけた。
十枚程ボールのように纏められた札の塊は、超高速を持ってして今だに地面に足を付けている一方通行に、
たやすく、直撃した。
トゴォォォンッ!!と、轟音が洞窟を揺らす。

(……?)

周囲を翔ていたレーザーが消えて行くのを見つつ、高い天井へと立ち昇る白煙の元を見下ろす。
おかしい。
今の一撃は、躱せた筈だ。

だとすれば、躱す必要が無いのか──

「……メンドクセェなァ、クソったれ!」

そして、予感は正しかった。
突如として暴風が吹きすさび、白煙のカーテンが消し飛ぶ。
現れたのは、全くの無傷たる少年。

「バリア?」

そう考えて、だとすればどれくらいの強度なのかと予想する。
だが、相手は待ってくれない。

「幻葬「夜闇の幻影殺戮鬼」!」


ユラリ、と。
霊夢の周りに、弾幕が出現した。
幻影のように、夢幻のように。


「──」

突然の現象に、彼女は直ぐに対応した。
自分に向かって迫る小さな白い光弾を、お払い棒で強制的に叩き落とす。
その間に黒い光線が駆け巡り、結界で一本だけ弾くことにより、自分が躱せる空間を生み出す。
正に神業。
超人の域の力だ。
それを見て、

「ハッ、中々やンじゃねェか。どォりでアイツ等が負ける訳だ!」

下方からの、賞賛と苛立ちが混じった声。
霊夢の鮮やかな手並みに、これ以上スペルを続けても意味が無いと悟ったのだろう。
一方通行の一言と共に、スペルが消え、違うスペルが再度、発動する。

「幻世「アクセル・ワールド」!」

怒涛の攻めだった。
本当の意味で休む間も無い、攻めの連続。
霊夢はしかし、怯まない。
スペルの内容を見極め、飛ぶ。

今度のスペルは変速的だった。

そう、変速。

赤いレーザーが駆け抜けたと思えば、一つ一つの到達速度が全く違う。
神速の早さで迫るのもあれば、亀のように遅いものもある。
しかも、途中でスピードが変わるのだ。
フェイントがここまで明らかに込められたものも珍しい、と彼女は考えながら、僅かな赤色の隙間を潜り抜け、札で誘爆させ、体をレーザーの範囲から脱出させる。
今まで一方通行のこのスペルを受けた誰よりも早い速度で。
余裕を無くさず、彼女は飛ぶ。
鳥のように、蝶のように。
一方通行の口から、僅かな苛立ちの吐息が零れた。

「霊符「夢想封印」!」

そして、反撃。
七つの光球は出現と同時に下方に、開始から一本も動いていない一方通行へと迫る。
縦に七つ並び、さながら龍のごとく。

「チッ」

そこで霊夢は、一方通行の行動を一つ残らず見ていた。
そのために、態々光球のスピードをズラして飛び込ませたのだから。

まず一つ目を、一方通行は右手を当てて"反らした"。
まるで右手によって、光球が操作されたかのように。
光球があらぬ方向へ飛んで行くのにも構わず、続けてやって来た光球に対し、

「方符「ストレートジャック」!」

新たなスペルを放つ。
紅いレーザー群は姿を消し、代わりに一方通行の周りに光が出現した。
小さな小さな光球。
ビー玉ぐらいの白い球体。

それが、真っ直ぐレーザーとして放たれる。

普通のレーザーが大砲なら、これは機関銃だ。
空気を焼く効果音が連続して鳴り響き、レーザーは七色の光球を貫き、爆発させる。
膨大な熱量が一方通行の体を叩くが、彼に堪えた様子は無く。

「うぜェ!」

右手を、背後に振るった。
音も無く弾かれる、最後の光球。
七つのうち一つだけ、一方通行の背後から回っていたのだ。
そういう風に弾幕を操作出来る霊夢も異常だが、それに反応出来る一方通行も異常だ。
二人共、常識という言葉が馬鹿に見える行為を、やすやすとやってのける。
爆煙と白煙と砂埃が立ち昇り、視界がきかない中、一方通行は更にスペルを発動させる。

「幻符「インディグネイション」」

──幻想の象徴たる、黒い光の剣が出現した。
クルクルと、途轍も無い力を込められた光の剣は舞う。
自分の周りを舞うその剣に、彼は命令を与えようとして、

「っ!?」

白煙の先に、彼女が居ないと気が付いた。
一瞬、完全に一方通行の思考が停止する。

(一体、何処に)
「そんなにどんどんスペルを使わないの。勿体無い。スペルってのはね──」

後ろ。
一方通行が振り向く前に、


「──こういう風に使うのよ。宝具「陰陽鬼神玉」」


スペルカードを構えていた霊夢の左手から、巨大な陰陽玉が発射された。
全長十メートル以上ありそうな、巨大な砲弾。
ゴバッ!!と、砂埃ごと大地を抉り取り、砲弾は一方通行に直撃

して何故か上空へと吹き飛んだ。

霊夢は何もしていない。
なのに、まるで陰陽玉が自ら天を目指したかのような、異常な程自然な動きだった。

「……アンタの手に触れられたらアウトみたいね」
「クソったれが……」

陰陽玉が衝突する寸前、一方通行は自分の弾幕を利用して衝突までの時間を僅かにながら稼いだ。
自分の弾幕が消される前に彼は陰陽玉に向き直り、左手を叩きつける。
直後に、陰陽玉は上へと飛んだ。
其処までが、霊夢が見た全てである。
対して、自分の絶対的な防御について指摘された一方通行は顔を下に向けている。
表情は、見えない。

「……あァ、メンドクセェ。メンドクセェメンドクセェ」

覇気の無い、やる気零の声。
先程までの戦いが嘘のように、彼の言葉に力が無い。

「……」

霊夢は、


「本気出すの面倒だなァ、オイ」


後ろに、全力で飛んだ。
が、気がつけば一方通行は距離を詰めており、足を振りかぶっていた。
異常なスピードに、驚く暇は無い。
結界を、瞬時に張る。
細い足から繰り出されたとは思えない威力の衝撃が、結界を襲った。

(しまっ、壊れ……っ!)

ビキリッ!と、嫌な音が一つ。
見ると、結界にはヒビが。
自分の結界にヒビが入るという、久しい危機に霊夢は叫ぶ。

「夢符「二重結界」!」

重々しい霊力の響きと共に、結界が出現。
流石にこれは突き破れないのか、結界に衝突した自分の足を見て、
笑う、一方通行。

「吹き飛びやがれ」
「っ!」

霊夢は、吹き飛んだ。
張った結界ごと。
ボールのように、宙を飛ぶ。
結界ごと吹き飛ばすなど馬鹿げた話以前に、一体どうやったら出来るのか。

「──っ、と!」

壁にぶつかる直前に、霊夢は結界を解き、壁に着地する。
多少、壁からひび割れた音が鳴るが、気にする余裕は無い。

「方向「プラズマハンマー」」

灼熱の塊が、一つ。
見上げた先には、更に高く飛んだ一方通行が居た。
その白い手に、巨大な死の光球を持って。
先程の陰陽玉に勝る大きさの光球は、まだ距離がある霊夢にさえ感じる熱波を放っている。
そんな物が今、霊夢に叩きつけられようとしていた。

「──」

一拍置かず、衝突。
壁にぶつかった光球はしかし、炸裂しない。
熱量を持ってして壁を溶かし、滑らかなクレーターを生み出し続けた。
ジュワァァァァァァァァッ!!と、油が弾ける音とともに水蒸気などの煙が生まれ、空間を満たす。
遅れて、暴風が全てを巻き込み、吹き荒れた。
惨劇という言葉がしっくりと合う、光景。

「……ようやく終わったか」

惨劇を生み出した、宙に浮かぶ一方通行の口から零れたのは、そんな言葉。
死んだかもしれないが、そんなことは彼の知るところでは無い。

「随分と無駄使いしちまったしなァ」

消費スペル数六枚。
時間を幾分か縮められたのかもしれないが、最後のスペル以外はみな無駄撃ちだったのを考えると、やはり勿体無い。
というよりも、あんなに次々と鮮やかに躱されるなどとは思わなかった。

「クソ、焦ってたか……」

そうだ。
彼は焦っている。
この後、アレと戦わなければならないのだから。
故に、あんな風な泥沼の戦いを──




「はっ!」




背中側からの衝撃が、彼を襲った。

(あ、ぎっ!?)

背後からの、強襲。
一体誰なのかと、吹き飛びながら視線を動かす。
自分が居た場所に浮かぶのは、紅と白の服に身を包んだ、空飛ぶ巫女。
彼女はしてやったという表情で、笑っていた。
何が起きたのか理解しても、時は既に遅く、
意識が、闇に落ちて行く。
体も、大地へと落ちて行く。




「やっと一発通ったわね」

霊夢はそう感想を漏らす。
彼女はあの巨大な光球を喰らってはいなかった。
己の特技の一つたる空間移動を利用して、一方通行の背後へと飛んだのだ。
そして全力で飛び蹴りを見舞ってやった。
疲れるのでもう二度としたくない、と彼女は思いつつ、

「それにしても……」

疑問を呟く。
得体のしれない敵だと思う。
スペルを連発するのは、まぁいい。
異変で焦っていたという理由があるからだ。
だが、勘が伝えてくる危険。
霊夢は勘に従い、蹴りの際にも間に結界を挟んでいた。
触れると、不味いと勘が言っていたから。

「本気を出して無かったのね」

ハァ、とため息を一つ。
霊夢が顔を上げ、呟いた瞬間、




一方通行が、眼前に出現した。




落下していた、彼が。
完全な一撃を見舞ってやった、彼が。
紅い血のような瞳を見開き、表情を悪魔のように歪めて。
その背中には、一対の黒い翼。
翼から感じられるのは爆発的な感情の波動と、周りにある力全てを融合させたような歪な力の雰囲気。
ギチギチと、悲鳴を上げる黒い翼が横薙ぎに振るわれた。

「さっきまでのスペルは、これを温存するためね」
「──」

悪魔の一撃に、霊夢は普段の陽気な雰囲気を消さなかった。
ただのスペル合戦が、漸く終わったからだ。
これから始まるのが、本当の意味での弾幕ごっこ。
ギッガガガガガガッ!!という、轟音。
翼は巨大になり、遥か後方の壁を削り取りながら迫る。
霊夢はクルリ、と横回転。翼を受け流すように、無駄なく躱した。
針と札を構え、腕を振りかぶる。


「「アクセラレイター」」


そんな声とともに、羽が舞う。
黒曜石のように刺々しかった翼から羽が落ちる。
欠片は何故か、普通の羽へと変化して宙を舞い、
黒い光線となって空気を裂く。
早さが違い、直角に、緩やかに曲がる異世界のよう光線の嵐を、霊夢は躱す。
首をずらして躱して、直ぐに曲がって頭部に迫ってもお払い棒を挟んで防いでいた。
そんなこと異常なことをしながら、霊夢は一点を見つめ、上へと光線を避けて飛ぶ。


「──ォォオオオオオオオオオッッ!!」

翼が再度、振るわれた。


轟!という、空気の悲鳴とともに、光線の嵐ごと空間を裂く一撃。
光線の残りかすが、空中に散る様は粉雪のよう。
黒い雪など、誰の為にあるのか分からないが。

「痛ぅ……やるわね」

そして、宙に佇む霊夢は躱しきれて無かった。
僅かに、足元から血が流れる。
足の脹脛に掠ったのだ。
掠ったとはいえ、霊夢が一撃を貰う。
それだけ、一方通行の力は凄まじいということ。

「一体どんな能力なんだか……」

さてどうしようか、と霊夢は呑気に一言。
こうなった以上、この力をねじ伏せるしか無い訳だが……

「……アレ、使うしかないかぁ」

彼女は、本当の切り札を使用する。
気が進まないと、ぼやきながら。




「「夢想天生」」




霊夢が、消えた。

「!?」

本能のままに──一種の暴走状態に陥りながらも戦っていた一方通行が見たのは、敵が消える光景。
彼の能力を使えば、敵を見つけるのは簡単だ。
霊力、魔力などの向きを辿ればいい。
間違い無く、辿れる筈だ。
アレでさえ、この能力を使えば見つけれるのだから。

だが、感じない。何も、感じない。

姿が見えない、とか。
空間移動をした、とか。
そんなことでは無く、ただ、消えた。
まるで、世界という器から解き放たれたかのように。

(小細工を……っ!)

ギリリッ、と、歯軋りの奇怪な音が鳴り、

「ァァアアッ!」

翼が縦に振られる。
岩盤が抉れ、噴煙が巻き起こった。
其処に居るというのは、分かる。
ぼんやりとだが、其処に居る。
攻撃も干渉も、何も出来ないのに。

ズラリ、と。
空中に展開されるのは、千を越す茜色の札。
それらが、一気に一方通行へと迫る。
恐ろしげな、弾幕の壁。

「ラァァッ!!」

翼が振るわれるが、それでも全ての札を消すのは無理だ。
水を刀切ろうとするようなもの。
半分程は異常な追尾機能によって、一方通行の体へ迫る。

「ッ!」

右手で払う。
左手で払う。
手に触れた札は、何故か見当違いな方向へと飛んでゆき、誘爆してしまう。
払う、払う、払う、払う。
とにかく、彼は自分の体に触れさせ無いよう、手で全てを払う。

「ラストォ!!」

最後の一枚。
顔面に迫った札を掴み、投げ捨てる。
どうだ、と言わんばかりに彼は前を見て、




「もらった」




霊夢が、腕を振りかぶって浮かんでいた。

「──」

何時の間に、とか。何故、とか。
呟く暇など、博麗の巫女は与えない。
袖が揺れ動き、真っ直ぐに腕が振られた。
振られ手からは、今日一番の早さで投擲された針。

翼は間に合わない。手も間に合わない。


完全に、直撃した。


のだが。

「っ!?」

バシッ!と、反射的に霊夢はつかみ取る。
つかみ取ったのは、針。
今し方、自分が放った針だ。

(戻って、来た?)

なんとなく予想。
何らかの力で反射された。
しかし、何かの壁に当たって反射されたにしては余りにも帰ってくるスピードが早過ぎた。

(もう!一体何なの!?)

未知の力に苛立ち、とにかく動こうとした所で。

「……負けだ」

フッ、と。
翼が消えた。
音も無く翼は空気に溶けて消え、洞窟内は無音の空間へと戻る。
破壊の面影が残るとはいえ、ここは、戦場では無くなった。
突然の降参に、首を傾げる霊夢。
誰もがするように、彼女は言葉を投げかけた。

「……私、アンタに一撃しか喰らわせてないんだけど」
「うるせェ。俺が負けだって言ってンだよ。こっちにもプライドってのがあるくらい分かンだろォが」

戦闘中からは想像出来ない程のローテンション。
霊夢はもやもやした何かが心に溜まるのを感じて、だが異変のこともあるので、それ以上何も言わなかった。

「……じゃあ行かせてもらうわよ」
「アイツが何を考えてるのかサッパリ分からねェが、オマエならなンとかなるかもな」

適当に返す、一方通行。
どうやら、本当に彼は霊夢に異変解決を任せたようだった。
その姿は、何処か吹っ切れている。
納得行かないが、仕方無い。
ため息を吐き出して、彼女は空を飛ぶ。

「因みに、アイツってどんな奴?」

霊夢は洞窟の更に奥へとフワフワ飛んでゆきつつ、ふと尋ねた。
対して反対側の出口へと向かっていた一方通行は、たった一言で質問に答えを返す。
重く、されど軽く。

「化物」















少女祈祷中……












設定


~最強の存在~

名前・一方通行

種族・人間

能力・「あらゆる力の向きを操作する程度の能力」


御坂美琴などと同じ(※1)、番人の一人。
性格は普段は冷静低血圧、戦いの中などでは恐ろしいまでに怖い。
御坂美琴に付き合ってでしか、家から出たことは無かったようだが、異変後からは偶に各地で見られるようになる。
外見から滲む雰囲気は恐ろしく、彼の口からは簡単に殺人予告が飛び出す。
が、彼の本質は善人とのことで(※2)一部の者達からは好意を向けられている。
全体的に見れば友好度は低いとはいえ、彼の本質を見極めたり助けられたり(※3)した者達からの好意は、決して小さな物では無い。
ただ、過去に何かあったのか人と触れ合うことを拒んでいる風である(※4)

彼に敵対すればまず勝ち目は無い。
余程の強者であっても、彼を倒すのは恐らく不可能である(※5)。
ただ彼は弱い者を虐殺したりなどはせず、必要の無い戦いは行わない。
逆に、人妖共に助けることもあるようだ。
ただし、彼の大切な者達に手を出した場合、その者は地獄よりも恐ろしいものを味わうだろう。

彼の能力は「あらゆる力の向きを操作する程度の能力」であり、史上最強の能力と言っても過言ではない。
自分の体に触れる、この世の全ての力を操ることが出来るというのは、彼は全ての物理的魔術的な干渉を跳ねのけることが出来るということであり、その気になれば体に触れるだけで血の流れを操作し、殺すことも可能。
また、龍脈や結界などの力の向きも自由に操作でき、どんな力を持ってしても彼に傷を負わせることは出来ないと言われている(※6)。
『反射の膜』という、自動で彼が望んだ物を反射する力もあり、彼に不意打ちは無駄である。
ただ、弾幕ごっこにおいては「卑怯」ということで、反射を解除している。能力自体は使用しているようだ。
反射の役割は、普段は有害な物、時々人の声まで反射している(※7)。
また、時折彼の背から生える翼は彼の能力を利用して作られた「力の集合体」とのこと。


※1
同居しているらしい。

※2
閻魔からの情報である。まず間違い無いだろう。

※3
悪党の美学、らしい。

※4
十六夜咲夜と雰囲気が似ていることから何らの関係、もしくは似たような過去があるのでは無いかと思われる。

※5
隙間妖怪や神、月人や龍神でも勝てないのでは無いか。

※6
境界操作や閻魔の裁き、ありとあらゆる様々な物がきかない。閻魔は魂を裁く際、大丈夫なのかと心配している。

※7
「あ、あの人は私が近くで言ってるのにっ、近く、近くですよっ!?なのに無視してぇ……!」などと閻魔が錯乱する程、声の反射は完璧である。



スペルカード集

奇術「ミスティックレイター」
幻葬「夜闇の幻影殺戮鬼」
幻世「アクセル・ワールド」
方符「ストレートジャック」
幻符「インディグネイション」
方向「プラズマハンマー」
空虚「エンドディスティ二ー」
方符「アクセルシューティング」
銀符「ハンドブレイクスプリング」
方符「パーソナルリアリティ」
傷魂「リアルピッシア」
幻符「マリアッチリバイバル」
方向「ウィングプロテス」
光速「P. スピード」
銀符「バウンガルレイト」
奇術「ミステリーカード」

「アクセラレイター」

合計17枚




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