【カイロ樋口直樹】「私は昨日まであちら(反ムバラク大統領派)側にいた。でも、これ以上の混乱は望まない」。タハリール広場で地元紙記者のマフムード・カラハさん(33)は2日、大統領支持派の中に身を置いた。「我々の要求を受け入れ、大統領は昨夜、不出馬表明した。混乱を収拾すべき時だ」と言う。
一口に大統領支持派と言っても内実はさまざま。現政権下で甘い汁を吸ってきた取り巻きから、退役軍人、大統領の安定した政治手腕を評価する人々まで幅広い。私服の治安関係者が含まれているとの情報もある。だが、カラハさんのように、事態収拾のために“転向”した人もいる。
2日、タハリール広場に集まった大統領支持派は数千人。広場中心に陣取る約1万人の反大統領派を囲み、「帰れ、帰れ」とシュプレヒコールを続ける。声をからしていた無職のアル・アフマドさん(27)は「大統領の任期終了まで数カ月。このままでは働くこともできない」と訴える。
射撃場勤務のマフムード・アリさん(24)によると、ムバラク氏の不出馬表明に広場のデモ隊の反応は二つに割れた。「多くは即時辞任を求めて不満を口にしたが、是認した人も少なくなかったはずだ。私も『もう十分だ』と思った」と話す。
一方、反大統領派側には「今すぐ辞任させなければ、9月の大統領選までにどんな巻き返しがあるか分からない」との不信感や「政権側が力を盛り返し、弾圧に出るかもしれない」との恐怖感もある。
毎日新聞 2011年2月3日 11時31分(最終更新 2月3日 12時45分)