事件【産経抄】2月3日2011.2.3 03:13

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【産経抄】
2月3日

2011.2.3 03:13

 作家の半藤一利さんが、新潟県の長岡中学から旧制浦和高校への受験に合格したとき、近隣の村人がお金を出し合い、お祝いの花火を上げてくれたそうだ。エッセーで知って、なんと贅沢(ぜいたく)なと思ったものだ。大相撲の大関、魁皇関はもっとすごい。

 ▼白星を挙げる度に2発ずつ、地元の福岡県直方市に住む自動車整備業の新谷嘉昭さんが祝福の花火を上げてきた。魁皇関の新入幕以来、先月29日に81歳で急逝するまで18年間続いた遠賀川河川敷の花火は、地元の名物だった。魁皇関も「勇気をもらった」とコメントしている。

 ▼そんな「美談」をぶちこわすようなニュースが、飛び込んできた。大相撲の野球賭博事件で、警視庁が押収した複数の現役十両力士の携帯電話に、八百長行為を裏付ける勝ち星売買のメールの記録が残っていた。

 ▼もともと八百長という言葉は相撲がルーツだ。明治の初め、八百屋の長兵衛という人が、得意先の親方との碁の手合わせで手加減をしたことから生まれた。後にうわべだけの勝負を争う、不正を意味するようになる。

 ▼週刊誌はこれまで何度も、大相撲の八百長疑惑を報じてきた。素人ファンから見ても、怪しい取組はいくつもある。日本相撲協会は、一貫して疑惑を否定してきた。動かぬ証拠が出てきたことで、その主張は根底から覆された。

 ▼警視庁は八百長行為については、刑事事件として扱わない方針だという。相撲はスポーツというより芸能なのだから、それほど目くじら立てる必要がない、という意見もある。しかし、贔屓(ひいき)力士の勝利を何より楽しみにしていた、新谷さんのようなファンにとっては、野球賭博事件以上の裏切りといえる。大相撲は存亡の危機を迎えた。

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