政治【主張】豪雪とお年寄り 共助の仕組みを育てたい2011.2.3 03:15

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【主張】
豪雪とお年寄り 共助の仕組みを育てたい

2011.2.3 03:15

 東北から北陸地方の広い範囲で記録的な豪雪が続いている。消防庁の集計では、昨年11月から1月末までに、屋根の雪下ろしや除雪作業中に死んだ人は60人に達した。

 過疎化が進む豪雪地帯では、高齢者が屋根から落ちて大けがをしたり、過重な労働で体調を悪化させたりするケースも多い。雪でつぶれそうな屋根を見上げ、スコップを手に「自分でやらなきゃ、誰もいないから」と語るお年寄りの表情は悲痛である。

 雪下ろしが困難な世帯に除雪手当を助成する自治体もあるが、回数は限られる。業者に頼んでもなかなか順番がこないので、やむなく自分で屋根に上る例も多い。

 雪国で暮らす人たちには手慣れた作業であっても、年を取って筋力や体のバランス感覚が低下すれば、事故のリスクは高まる。何らかの対応が必要だ。

 新潟県は2日、雪崩発生の懸念もあることから除雪作業に陸上自衛隊の災害派遣を要請した。自衛隊の存在は心強いが、あくまで災害派遣であり、日常的に出動を求めるわけにはいかない。

 自治体によっては、雪かきや雪下ろしのボランティアを募集するところもある。困っている人を助けたいと思う人は少なくない。それは年末年始に大きな話題となったタイガーマスク現象からも容易に想像できる。当面はそうした善意の貢献も生かしながら、豪雪の危機を乗り切らざるをえない。

 だが、この冬ほど記録的ではなくても、雪は毎年降る。高齢化と過疎化の現状を考えれば、手助けを必要とする雪国の世帯は今後、ますます増えていくはずだ。

 社会政策では、自助・共助・公助という考え方がある。自助は個人や企業が自らのために動く。公助は政府や自治体が担う。その間の互いに助け合う、困った人をみんなで助けるというのが、共助である。雪下ろしに限らない。安定的に人助けの担い手を確保する共助の仕組みが不可欠である。

 昨年夏は猛暑でお年寄りの熱中症被害が相次ぎ、冬は豪雪が重くのしかかってきた。この1年の異常気象は、社会の弱い部分に対する共助の必要性を鮮明にあぶり出す現象でもあった。

 社会的な起業や特定非営利活動法人(NPO法人)の財政基盤への支援など方法はいろいろある。共助を育てる契機として、この冬の試練を生かしたい。

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