国際【主張】ムバラク退陣表明 速やかに平和的移行図れ2011.2.3 03:15

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【主張】
ムバラク退陣表明 速やかに平和的移行図れ

2011.2.3 03:15

 反政府デモによる騒乱が続くエジプトのムバラク大統領が「9月の次期大統領選に出馬しない」と退陣を表明した。約30年間続いた政権がわずか8日間のデモで終幕を迎えた。

 デモ隊側にはなお「即時辞任」を求める声が多い。不出馬表明を受けてオバマ米大統領は声明で「秩序ある移行を今、始めなければならない」と直ちに政権移行に着手するよう促した。事態は流動的だが、大切なことは対話を通じて民主的な政権移行を速やかに進めることだ。政権、軍、野党勢力を含むすべての当事者に責任ある行動を求めたい。

 ムバラク大統領はテレビ演説で、残る任期中に平和的な権力移行を行うと明言した。大統領選立候補者を厳しく制限している憲法の改正や、デモ隊が訴える権力の腐敗、富の格差の是正、失業問題の解決など政治、経済、社会改革を約束した。だが、問われているのは政権移行の実行である。

 さらに大きな問題は、反政府デモを展開した民衆や野党側に有力な指導者が見当たらず、現政権との対話にも消極的であることだ。エジプト最大の野党勢力でイスラム穏健派とされる「ムスリム同胞団」は非合法とされてきた。

 国際原子力機関(IAEA)前事務局長のエルバラダイ氏を新政権の軸とする動きもあるが、支持基盤はなお脆弱(ぜいじゃく)ともいわれる。

 騒乱が過激なイスラム原理主義勢力に付け入る隙を与えることが懸念される。ムバラク体制は強権支配で批判を浴びる一方、イスラエルと国交を保ち、中東和平の重要な仲介役を務めてきた。

 イスラエルのネタニヤフ首相は両国間の平和条約の重要性を強調し、「過激派勢力が民主的プロセスを悪用して権力を握れば、平和が傷つく」と牽制(けんせい)した。「アラブの盟主」を自任する国家として、エジプトは中東の安定を守る役割を引き継いでほしい。

 平和的移行の手がかりはある。エジプトの軍は声明でデモ隊に理解を示し、「平和的であるかぎり、軍は市民に銃口を向けない」と断言した。1998年、30年以上に及ぶインドネシアのスハルト政権がデモで崩壊した際は軍が大統領に辞任を迫り、副大統領が円滑な政権移行を果たした。

 国民の側に立った政権移行を推進する。エジプト軍にもそうした役割を期待する。

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