2011年1月8日16時4分
2008年2月に房総半島沖で海上自衛隊のイージス艦「あたご」と漁船が衝突した事故で、防衛相があたごの航海長から事情聴取した際のメモが、朝日新聞記者の情報公開請求を受けた直後に防衛省職員によって廃棄されていたことが分かった。専門家は「廃棄は情報公開法の趣旨に反する」と批判している。
あたごの航海長は衝突事故が発生した2月19日正午から当時の石破茂・防衛相らの事情聴取を受けた。同月28日の記者会見で防衛事務次官は、事情聴取の際に運用企画局の職員がメモを記録したことを明らかにしていた。
情報公開法に基づく、防衛相へのこのメモの開示請求は3月4日付で受け付けられた。しかし、同月下旬から4月上旬までの間に、メモを作成した運用企画局の職員当人がこのメモを廃棄したという。同省はそのことを知らせないまま、5月7日、「対象文書の存在の有無を明らかにすると捜査に支障を及ぼすおそれがある」という理由で文書不開示の決定(存否応答拒否)を通知した。
この決定に異議を申し立てたところ、内閣府の情報公開・個人情報保護審査会が昨年5月、メモが行政文書であることを前提に「不開示決定は取り消すべきだ」と答申。これを受けて、防衛相は10月1日、いったん不開示決定を取り消したが、その後、11月12日付で文書廃棄を理由に改めて不開示とした。
防衛省大臣官房の情報公開室は「組織的に使用される『行政文書』にはあたらず、個人的なメモという認識で廃棄した」と説明している。(奥山俊宏)