きょうのコラム「時鐘」 2011年2月3日

 エジプトはナイル川が国土を貫くように南から北へ流れている。東から上った太陽は、大河の上空を横切って西に消える

5000年前も今も変わらず、日は上り日は沈む。太陽と同じように権力も永遠に続くとの考えが人々に植え付けられる。気候風土が政治的風土を左右する。日本のような四季に恵まれて変化に富む島国からは想像しにくい

以前、エジプトを旅行した経験から感じたことである。独裁の座にあること約30年のムバラク政権が事実上崩壊した。第2次大戦以後ほぼ3人のリーダーに政権を委ねた国である。個人の力というよりも、独裁を生む風土の大きさを考える

このところ、首相が1年で替わるわが国だ。日本には長期独裁政権が生まれる土壌はないとされるが、戦前の「軍部独裁体制」があったのはそう遠い昔ではない。政治風土も永遠に不変ではない。新しい時代には新しい条件が加わる

ナイル河畔の長期政権に異変をもたらしたのは「ネット」だという。風土も国民性も問わず地球を駆けめぐる。「太陽神」に代わるような力である。威力とともに怖れを抱かざるを得ない。