2010年12月4日 10時53分
【ロンドン笠原敏彦】内部告発サイト「ウィキリークス」の創設者、ジュリアン・アサンジ氏の処遇が関心を集めている。現在、英南部に「潜行」しているアサンジ氏は、スウェーデンでの性犯罪容疑で国際指名手配されており、英警察当局が手配に応じて同氏を拘束するかどうかが焦点だ。
ウィキリークスによる米外交公電の暴露が続く中、米政府などがアサンジ氏への法的措置を検討しているが、同氏にとって当面の「危機」は性犯罪での国際指名手配だ。英BBC放送などによると、スウェーデン当局は3日、11月18日に出した強姦(ごうかん)容疑などの逮捕状に不備があり、英当局から照会を受けて逮捕状を出し直した。
不明瞭なのは「性犯罪」容疑の中身。被害を訴えたのはスウェーデン女性2人で、アサンジ氏が8月の同国滞在中に知り合った。同氏は強姦容疑を否定して「同意の上」での関係だったと主張。スウェーデン当局が事情聴取を求めている。この件をめぐっては、スウェーデン検察は8月に逮捕状を請求したが、その翌日に一旦は取り下げた経緯がある。
アサンジ氏の英国での弁護士、マーク・スティーブンス氏は逮捕状について「根拠がなく、(秘密暴露に対する)中傷キャンペーンだ」と指摘した上で、「(英国の)警察はアサンジ氏がどこにいるかを把握している」と説明している。
欧州連合(EU)のルールで、加盟国は域内での逮捕状が手続き的に有効な場合、容疑者を拘束して、90日以内に当事国へ引き渡す義務がある。
アサンジ氏は3日、英紙ガーディアンの読者の質問に答え、「生命の危険」を感じて「適切な警戒をしている」と説明。「もし我々の身に何かが起これば、(リーク資料の)重要な部分は自動的に公開される」と述べた。
ウィキリークスのサイトは3日、一時閲覧できない状態になった。サイバー攻撃を受けたとみられ、アサンジ氏側は「国家的な行為のようだ」と米国を暗に非難した。これに対し、米国防総省のラパン副報道官は、米軍によるサイバー攻撃との見方を否定した。