国民番号制:低所得者の負担軽減策も 消費増税時に

2010年12月3日 21時31分 更新:12月3日 22時20分

共通番号制度の利用範囲
共通番号制度の利用範囲

 政府は3日、国民一人一人に番号を割り振り、所得を把握しやすくする「共通番号制度」について、税務と社会保障の現金給付・サービスを利用範囲とし、13年度にも導入を目指すことを決めた。税と社会保障はかかわりが深く、番号制度を活用して税や社会保障の国民負担の公平性を高めるとともに、サービスの充実を図る。消費税を増税した際の低所得者の負担軽減策に使うことも想定しており、番号制度導入を前提に税や社会保障の抜本改革議論を進める方針だ。【久田宏】

 来週にも開かれる「政府・与党社会保障改革検討本部」で正式決定する。詳細な制度設計を詰めた上で、来年6月に大綱を策定、秋以降の法案提出を目指す。「着実に国民に理解していただけるよう慎重に進めたい」。番号制度について検討を進めてきた政府の実務検討会の事務局長を務める峰崎直樹内閣官房参与は、番号の利用範囲などを決めた3日の検討会終了後、制度導入には国民の理解が必要なことを強調した。

 政府は今年6月、制度の利用範囲について▽税務のみで利用する「ドイツ型」▽税務と社会保障分野に活用する「米国型」▽幅広い行政サービスに利用する「スウェーデン型」に3分類し、どれを選ぶか検討を重ねてきた。最も対象範囲の広いスウェーデン型が利便性も高いが、番号で共通管理する情報も多くなるためコストがかかるうえ、流出の際のリスクも高く、まずは米国型で導入してから将来的にスウェーデン型を目指すことにした。

 住民基本台帳ネットワーク(住基ネット)を活用し、住民票コードとは別の新たな番号を国民一人一人に付与する。所管する組織として年金保険料と税を一体的に徴収する「歳入庁」の創設を目指す。

 国民にとって番号制度の最大のメリットは、さまざまな行政機関に分散されている所得や、年金、医療、介護などの情報を、番号によって一つに集約できることだ。

 例えば、現在は医療保険や介護保険、さまざまな福祉や育児、障害者サービスに関する情報は行政機関などで別々に管理されている。番号制度で情報を共通化した場合、すべてのサービスを対象に自己負担した金額を合算して、一定額を超えた場合は超過分を返還したり、所得水準に応じたきめ細かいサービスも可能になる。

 政府は、低所得者ほど負担感が増す消費税の逆進性対策にも活用する方針だ。例えば、消費税増税の際には所得税の控除制度を見直し、所得税を支払っておらず控除が受けられない低所得者には、現金を給付する「給付付き税額控除」の導入を検討する。

 一方で、番号制度は膨大な情報量を一つに集めて管理するため、情報が漏れた際のリスクも大きく、「プライバシー上、重大な問題が発生する」(日本弁護士連合会)との懸念も根強い。国民の理解を得るためには、プライバシー保護の強化策も大きな課題になりそうだ。

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