2010年12月3日 4時1分
1200度の温度差がある環境でもゴムのようなしなやかさを保つ新型のカーボンナノチューブ(CNT)を産業技術総合研究所(茨城県つくば市)が開発した。宇宙空間など過酷な環境での衝撃吸収材などへの応用が期待される。成果は3日発行の米科学誌サイエンスに掲載された。
CNTは91年に発見された。炭素原子が蜂の巣のように連なり、直径数ナノメートル(ナノは10億分の1)の筒状。軽くて強い次世代の新素材として研究が盛んで、産総研も製法を研究している。
産総研ナノチューブ応用研究センターのチームは、材料のエチレンを炉内で加熱してCNTを作る際、化学反応を仲介する触媒を大幅に減らして、基板から成長するCNTの量を9割カットした。すき間を意図的に多くした結果、CNTが毛玉のように絡み合いながら成長してスポンジ状の塊になった。
1平方センチあたりのCNTは1000億本にのぼり、押しても元に戻る弾性と液体のような粘りを併せ持つ(粘弾性)のが特徴。実験では、最も温度変化に強いシリコンゴムの3倍の衝撃・振動を吸収でき、さらに1000度から氷点下196度までの環境でこの粘弾性を確認した。この性質はシリコンゴム(300度から氷点下55度)を大幅に超える。【安味伸一】