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天然ウナギの卵発見 世界初、完全養殖実用化へ期待

2011年2月2日1時42分

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写真捕獲に成功した天然ウナギの卵。直径は約1.6ミリ=東京大大気海洋研究所、水産総合研究センター提供

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 天然のニホンウナギが海で産んだ卵が、世界で初めて日本の研究チームによって発見された。現場は、ウナギの幼生が捕獲されたことがあるマリアナ諸島沖。調査で得られたデータは、ウナギを卵から育てる「完全養殖」の実用化に役立つと期待される。

 発見したのは、東京大大気海洋研究所の塚本勝巳教授や水産総合研究センターなどのチーム。1日付の英科学誌ネイチャーコミュニケーションズ(電子版)に報告した。

 2009年5月、調査船で大型のプランクトンネットを引いたところ、ウナギとみられる複数の卵が入った。DNA鑑定で31個がニホンウナギの卵と確認された。いずれも受精卵で、直径は平均1.6ミリだった。

 孵化(ふか)するまでの間、海中に卵の形で漂うのはわずか1日半とわかっている。チームは過去の調査データから、産卵が新月のころに行われると推定。集中的に調査した。世界のウナギ19種・亜種のうち、天然の卵の発見は初めて。

 現場海域は水深3千〜4千メートルで、海山が立ち並ぶ。ウナギの卵が捕れたのは、深さ200メートルまでの比較的浅い場所だった。塚本教授は「かつて深い海の底で産卵すると考えていたが、実際にはかなり浅かった」と話す。

 日本では40年ほど前から、本格的にウナギの誕生の謎を探る調査に力を入れてきた。05年にはマリアナ諸島沖で誕生直後のウナギ幼生を捕獲し、産卵海域をほぼ特定した。だが、卵の捕獲はできずにいた。

 ウナギの養殖には、年間1億匹近い天然の稚魚を使っている。ただ、ニホンウナギの稚魚の漁獲量は近年、1970年ごろに比べて1〜2割程度に激減している。水産総合研究センターはウナギを卵から育てる「完全養殖」の研究を進め、10年春に成功したが、稚魚が生き残る率が低く大量生産ができず、事業化のめどが立っていない。

 こうした中、今回の調査で卵が見つかった水深や水温、塩分濃度などのデータは、ウナギを飼育下で卵から効率良く育てる上での重要なヒントとなり、完全養殖の実用化を加速することになりそうだ。(山本智之)

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