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<インタビュー>二兎を追う料理人・松山喜則さん、本業は“医師”
2011/02/02 09:45 KST文字拡大 文字縮小印刷

【ソウル2日】ファッション、グルメ、トレンドが集まるソウル・漢南洞の一角にある雑居ビルの2階。空が茜(あかね)色に染まり出すころ、竹模様入りの調理衣に身をまとい、慣れた手つきで包丁を握る。在日韓国人3世の松山喜則さん(52)だ。

 「うちは居酒屋ちゃうでえ。大阪料理専門店や」

 飾らない大阪弁が耳に心地よい。お店の名前は「やすらぎ」。韓国人にも発音しやすく、なにかほっとするような感じがして自ら名付けた。すき焼きをはじめ、おでんやたこ焼き、お好み焼きなど、本格的な大阪の味が楽しめる。

 こだわり料理で韓日両国のお客さんを喜ばせる松山さん=(聯合ニュース)

関西風のすき焼きは、味付けされた割り下に浸す関東風とは、作り方が根本的に異なる。焼いた肉の上に砂糖をのせ、その上から料理酒、しょうゆを入れる。少し面倒だが、「これがまたうまいんだよ」と松山さん。

 たこ焼き器一つにしても、本場の味を楽しんでもらおうと大阪から取り寄せた。韓国でも手に入るが、鉄板の材料が違うため、味も全然違うという。松山さんのこうしたこだわりは、韓国人にも認められているようだ。グルメサイトには「韓国人の口に合わせていない(本場の)日本料理が楽しめる」と紹介されている。

 営業時間は午後11時までだが、お客さんの要望で夜中の2時になることも。先週の金曜日は朝方の5時までお客さんがいた。常連が多く、なかなか断り切れないようだ。店の休みは月2回。どれだけ大変かは想像に難しくない。

 ところで松山さん、体は大丈夫ですか? 「まったく問題ない」と即答する。それもそのはず。松山の本業は医師なのだ。

 韓国の名門、高麗大学の医学部を卒業している。大学病院での勤務医を経て「松山医院」を開業した。かつては韓国人患者の診察も行っていたが、現在は日本人専用病院として運営している。ソウルに在住する日本人の予約診療や体調を崩した日本人観光客だけを診療している。重い症状の場合は大手病院を紹介するほか、言葉の通じない患者のために通訳をすることもある。

 特に、観光客は病院の位置を知らないため、直接ホテルに出向くケースが多い。ソウル市内のホテル関係者なら、松山さんのことを知らない人がいないほどだという。ちなみに、日本プロ野球の千葉ロッテマリーンズのオーナー代行で、ロッテグループの辛東彬(シン・ドンビン=日本名:重光昭夫)副会長は常連患者の1人だ。

 多くの病人を診てきた診察室で=(聯合ニュース)

 医師と料理人の共通点と言えば、事前に手を洗う職業ということくらいしか思い浮かばない。医師でありながら、お店を始めた理由は何だろうか。

 答えは意外と単純だった。「大阪料理を食べたかったから」。日本人の経営するおいしい日本料理専門店は何軒かあったが、どれも「東京の味」だった。「それなら、自分でやってみようじゃないか」。あれから5年。大阪料理に限って言えば、韓国で自分の右に出る料理人はいないと自負する。「大阪料理店はうちしかないから」(笑)。

 二足のわらじを履く男の次なる目標は、生まれ育った大阪で本場の韓国料理店をオープンすること。そして最後は老人ホームに入居し、自慢の料理に腕を振るい、ボランティアで医療活動をすることだという。

(聞き手=崔セイル)

csi@yna.co.kr