円高・ドル安が進んだことにより保有するデリバティブ(金融派生商品)に損失が発生し、経営難に陥る中小企業が増えている。企業に資金繰り融資などで手をさしのべるにしても、経営や取引の実態を見極めることが、まずもって欠かせない。
金融庁の調べでは、多くの損失を生じたデリバティブを抱える中小企業は、主要行の取引先を中心に1万9000社にのぼる。なかでも大問題になっているのは、企業がドルなどの外貨を有利な条件で購入するのに利用した長期為替契約だ。
円相場が1ドル=110円の時に向こう5年間、1ドル=100円でドルを買う契約を、企業が銀行と結ぶような取引が、その一例だ。110円の円相場が続けば、企業は実際より10円安くドルを購入できる。その利点は5年以内にどんなに円高が進んでも、1ドル=100円でドルを買わざるを得ないリスクと裏腹だ。
実際にはリーマン・ショックを機に、円は1ドル=80円台まで上昇し、リスクが表面化した。東京商工リサーチによれば、こうした円高差損による倒産は2010年に26件と09年の4倍弱に増えた。このままでは「デリバティブ倒産」が増えるとして、銀行は追加融資の検討に入った。
金融取引は自己責任が大原則だ。金融商品の売り手である金融機関がリスクを説明し、買い手が理解したうえで取引している限り問題はない。企業が損失で困っているからといって、政治や行政が銀行に救済を強要するようなことではない。
しかし、今回問題になっているデリバティブの取引は、仕組みが複雑である。売り手である金融機関がきちんと説明したか疑問の余地のあるケースも少なくないようだ。
現に、経営が傾き民事再生を申請した中小企業には、裁判所への申立書で「借り入れをしている銀行から執拗な勧誘を受けた」と記したところもある。融資を通じ企業金融の命綱を握る銀行が、その優越的地位を乱用したと疑われる取引があったとすれば、資金繰りのために追加融資を求める企業にも一理あるだろう。
中立的な弁護士が企業と銀行の言い分を聞き、和解案を示す金融ADR(裁判外紛争解決)の制度もある。公正で透明な解決を探りたい。
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日経平均(円) | 10,457.36 | +182.86 | 2日 大引 |
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NYダウ(ドル) | 12,040.16 | +148.23 | 1日 16:30 |
英FTSE100 | 6,000.88 | +43.06 | 2日 9:10 |
ドル/円 | 81.40 - .42 | -0.39円高 | 2日 18:04 |
ユーロ/円 | 112.54 - .58 | +0.13円安 | 2日 18:04 |
長期金利(%) | 1.225 | ±0.000 | 2日 16:06 |
NY原油(ドル) | 90.77 | -1.42 | 1日 終値 |
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