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余録:ラニーニャ現象

 「おてんば」が今やほとんど死語となったのは、「おしとやか」が女の子へのほめ言葉として影が薄くなったのと表裏一体だろう。「御転婆」と書くが、実は「ontembaar」という「手におえない」を意味するオランダ語由来といわれる▲「日本国語大辞典」によると、一方で「従順でない」ことを示す「てんば」という上方言葉を語源と見る人もいる。それが江戸に入った際に、オランダ語の影響も受けて今のような意味と語形になったという説もあるそうだ▲さて、昨夏の日本列島の猛暑も、この冬の寒波や豪雪も、一因は「ontembaar」な女の子の仕業らしい。むろん、こちらはスペイン語で「女の子」を意味する「ラニーニャ」--中部から東部の赤道太平洋の海面水温が平年よりも低くなる現象のことである▲世界気象機関(WMO)は先日、今季のラニーニャ現象が観測史上最大規模になっていると発表した。水温の低い海域が広い範囲に及んで地球上の大気の対流に影響を与え、各地の異常気象の原因になっているというのだ▲最近ではオーストラリアや東南アジアの豪雨、インドの低温の原因といわれた今季のラニーニャである。昨夏のパキスタンの洪水やロシアの干ばつへの影響もとりざたされた。日本ではラニーニャが起こると、夏は暑く、冬は寒くなるといわれるが、大当たりとなった▲ラニーニャは今がピークで、5月までには終息するという。あすは節分、年末からの寒さにも一区切りつきそうだ。ただ豪雪地の雪崩の危険や昨夏の猛暑の名残のスギ花粉などなど、いたずら娘の置き土産は春も人々を悩ませそうである。

毎日新聞 2011年2月2日 0時03分

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