日曜日の昼下がり、多くの人でにぎわう遊園地で事故は起きた。
「東京ドームシティアトラクションズ」で、小型コースターに乗っていた男性会社員が転落し、死亡したのである。警視庁が業務上過失致死容疑で「東京ドーム」本社を捜索するなど強制捜査に乗り出した。
子供にも人気がある乗り物での事故である。しっかりと原因を解明してもらいたい。
コースターは、全長約300メートルのコースを、カーブで回転しながら走る。遠心力で車外に投げ出されぬよう利用者自らが安全バーを下ろして体を固定させる仕組みだ。だが、バーが十分に固定されていなかった可能性が指摘されている。
会社側は会見で「安全バーの固定状況は目視だけでなく、手で触って確認するよう指導していた」と説明した。だが、マニュアルには手で触っての確認は明記されず、アルバイトの係員は目視による確認しかしていなかったようだ。そうだとすれば、係員への指導や教育を含め遊園地側の安全管理が徹底していなかったことになる。
同遊園地では昨年後半、施設点検中の女性従業員が指を3本切断したり、ジェットコースターの部品が落下して地上の小学生がけがをした。来園者の安全を守る意識に緩みがなかったのかまず反省すべきだ。その上で再発防止の手立てを尽くすことが求められる。
07年5月、大阪府吹田市の「エキスポランド」(閉園)で立ち乗り型ジェットコースターが脱線し、乗客1人が死亡し、19人が重軽傷を負った。その後も各地の遊園地で乗り物をめぐる事故が相次ぐ。
スリルを楽しむため、いわゆる絶叫マシンなどさまざまなアトラクションが登場しているが、遊具の構造面を含め安全第一が徹底されているのか疑問を感じざるを得ない。
遊園地の乗り物の安全基準は、建築基準法に定められ、自治体がチェックし、指導する。
今回の死亡事故を受け、国土交通省は、各自治体を通じ、転落防止用の安全バーやベルトの装着の確認を徹底するよう全国の遊戯施設に指導した。当然の対応といえるが、安全管理の運用を施設側に任せるのでは不十分ではないか。
これだけ事故が続くのだから、しっかりと原因を分析し、再発を防止するための独立した公正な調査機関がやはり必要だろう。
生活に身近なさまざまな分野の事故調査のあり方について、消費者庁の検討会が議論を進めている。今春にも一定の結論を出す予定だ。既にある国交省の調査部会との調整を含め、体制作りを詰めてもらいたい。
毎日新聞 2011年2月2日 2時30分