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社説:衆院予算委質疑 「熟議」の助走にはなった

 やっと、論戦に弾みがついてきた。衆院予算委員会は1日、野党・自民党による質問が行われた。

 石原伸晃幹事長や石破茂政調会長が揚げ足取りではなく、菅内閣の基本姿勢をただした点は評価できる。国会を空転させ、政治不在を印象づけるような愚を与野党は演じてはならない。予算案の内容や税制・社会保障のあり方について、主張の説得力を大いに競うべきである。

 質疑でまず、問われたのは小沢一郎・民主党元代表が政治資金規正法違反で強制起訴された事態に伴う、菅直人首相の対応だ。

 石原、石破両氏は小沢元代表をめぐる「政治とカネ」の問題に終止符を打ち、国政の停滞を回避すべきだ、との観点から証人喚問実現に首相の指導力発揮を求めた。首相は小沢元代表の国会での説明は必要としながらも、自らが党内調整に乗り出すことには慎重な言い回しに終始した。

 年頭の記者会見で「不条理をただす政治」を掲げ、小沢元代表が起訴された場合の出処進退に言及した首相にしては、何とも踏み込み不足だ。国会招致という最低限のけじめに手をこまねいていては「熟議の国会」実現の決意が問われよう。

 予算案では焦点の「子ども手当」の是非が論じられた。自民党側が「バラマキ政策」として中止を求めたのに対し、首相は制度について少子化対策としての意義を強調、「バラマキとは思わない」と反論した。

 やはり自民が追及する与謝野馨経済財政担当相の起用について首相は税制・社会保障改革に向けた「大義」を強調した。また、自民側が求めた議員辞職を与謝野氏は拒否した。与謝野氏入閣の是非より、政策論争に力点を移すべきではないか。

 その意味で、税制・社会保障改革について政府・民主党が基本案を持ち合わせず論戦にのぞむ不十分さがむしろ浮き彫りになった。民主党が09年衆院選で示した所得比例年金に最低保障年金を組み合わせた改革案について首相らは「(議論の)ベース」と表現したが、位置づけはあいまいだ。

 政府案のイメージすらつかめないようでは、論戦はかみ合わない。自民党は「与野党協議を呼びかけるなら民主党案をまとめるべきだ」と主張している。首相は野党との協議が実現しなくても、6月に政府の一体改革案をまとめる意向を示した。だが、本気で協議の実現を目指すのであれば、やはり民主党内の調整を急がねばなるまい。

 論戦の場として、今後は党首討論の活用も欠かせない。特に谷垣禎一自民党総裁に対しては、衆院解散要求一辺倒ではない、深みある議論を期待する。

毎日新聞 2011年2月2日 2時31分

 

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