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エジプト:反政府デモ1週間 市民生活混乱、医療も停滞 略奪横行、パン求め行列

 【カイロ樋口直樹】ムバラク・エジプト政権の打倒を訴える大規模デモの発生から1週間。夜間外出禁止令の拡大や略奪の横行、交通規制などで、市民生活には計り知れない影響が出ている。31日には一時撤収していた警官が街頭に戻るなど、治安の改善の兆しも見られたが、大多数の市民は、混乱の余波をまともに浴びている。旅行のキャンセルも相次ぎ、基幹産業の観光業への影響も甚大だ。

 「父が友人からもらったものです」。カイロ西部ショブラで暮らす女性会社員(32)宅を訪ねると、玄関脇に刃渡り50センチほどの大刀が立てかけられていた。「護身用です。いつ強盗に押し入られるかわからない」と女性は話す。今のところ、商店の品ぞろえに大きな変化はないが、強盗団の出没や、自警団などによる厳しい交通規制が続けば、野菜など生鮮食料品の運搬に支障が出るのは避けられない。「子供の病院を予約していたが午前8時までの夜間外出禁止令のため連れて行くことができなかった」と表情は曇ったままだ。

 女性宅の近くのパン屋の前には、数十人もの長蛇の列ができていた。近所の住民は「みんな買いだめに必死なんだ」と話した。買い物客にカメラを向けると、「撮るな」と抗議された。カイロの病院につとめる女性産婦人科医(31)は「病院への行き帰りの道中が怖くて、出勤できずにいる」と打ち明けた。

 内務省は、31日、警官を再び職務に戻した。街角には、交通整理にあたる警官のほか清掃人の姿も見られるようになった。しかし、依然として多くの住宅地などで自警団が独自の交通規制を行っているのが実情だ。

 銀行や証券取引所は依然として営業を停止している。ガソリンが売り切れたスタンドや現金自動受払機を破壊されたままの銀行もある。数日前に略奪にあったカイロ中心部の大型モールからは、今も煙が立ち上っている。

 エジプトの主要な外貨収入源である観光業への打撃も深刻だ。日本人専門の旅行会社で働く女性(23)によると、1月28日から2月初めまですべての予約がキャンセルされた。女性は「客足の回復には1年ぐらいはかかる」と途方にくれた。

毎日新聞 2011年2月1日 東京朝刊

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