ブラジルは最近まで、中国との貿易関係は概して補完的だと考えていた。鉄鉱石や大豆などのコモディティーが牽引役となり、ブラジルの対中輸出は2000年から2009年にかけて18倍に膨らんだ。2009年には中国が米国を抜いてブラジル最大の貿易相手国となり、ブラジルの輸出の12.5%を占めた。
しかし、コモディティー輸出の増加はこの2年間で通貨レアルを40%近く押し上げる一因になった。レアル高に加え、経済の急成長とブラジル人が消費者金融を利用しやすくなったことが製品の輸入需要を急増させた。
ブラジル国内の製造業者は全く太刀打ちできない。FIESPによると、昨年輸入品が急増したせいで、推定7万人の製造業の雇用が失われ、地元産業は100億ドルの収入を失ったという。
「悲惨ですよ。もう5年もこの問題に苦しめられています」と話すのは、マノロ・ミゲス氏。彼の会社エスコバス・フィダルガが生産している高級ヘアブラシは、中国からの輸入品に押されているという。「以前は朝、昼、夜の1日3交代制を取っていたのに、今では朝のシフトだけです」
オランダ病の懸念
ブラジルでは近年、巨大油田の発見が相次いでいる。石油輸出大国に変貌を遂げようとしている一方、「オランダ病」を懸念する声も高まっている〔AFPBB News〕
こうした傾向は、ブラジルが「オランダ病」の人質になりかねないという懸念を膨らました。1970年代のオランダで、大規模な天然ガス田の発見と高いエネルギー価格を背景に為替相場が急騰した後、輸出型の製造業が衰退していった現象を指す言葉だ。
実際、格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)の調査によれば、ブラジルの輸出品構成に占める原材料の割合は2002年の28%から2009年には41%に上昇している。一方、製品輸出が占める割合は同じ期間に55%から44%に低下した。
ブラジルが「プレソルト(海底岩塩下層)」の巨大海底油田を発見してから、こうした懸念が一層高まった。この油田には、国営石油会社ペトロブラスが5年間で2000億ドル投資する計画になっている。
モルガン・スタンレーの中南米担当エコノミスト、グレイ・ニューマン氏は「通貨が20年、30年ぶりの高値にある時は、大抵、国の製造基盤に問題をもたらすものだ」と言う。
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