(2011年1月31日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
ブラジルの口語で「Xing Ling*1」として知られるサンパウロのショッピングモールに足を踏み入れると、どういうわけか香港に隣接する中国の新興都市、深圳に迷い込んでしまったと思っても無理はない。
裕福な香港の顧客に海賊品を売る深圳の商店街と同じように、サンパウロ中心部の混雑したモールも安い中国製模造品を専門としており、携帯電話から偽物のロレックスの腕時計、高級ブランドのバッグやサングラスに至るまで、様々なコピー商品を売っている。
「それは本物のノキアじゃないですよ」。携帯電話ショップのある中国人店員はこう言って、商品が偽物であることを認める。たどたどしいポルトガル語を話す店員はノキアのブランドがついている携帯電話を指し、「あれはただのステッカーです」と言う。
迫り来る「貿易戦争」の最前線
昨年、「世界通貨戦争」という言葉を使って話題になったギド・マンテガ財務相は先日、FTとのインタビューで、世界は全面的な貿易戦争に向かっていると述べた「〔AFPBB News〕
当人はそうと気づいていないかもしれないが、ここの商人たちは、ブラジル新政府が先に中南米最大の経済大国ブラジルと中国を含む主要貿易相手国との迫り来る「貿易戦争」だと警告した動きの最前線にいる。
ブラジルは最近まで中国を、自国の輸出品にとって極めて重要な市場であり、急成長を遂げる新興大国のクラブ「BRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)」の親密な同盟国だと見なしていた。
だが、ブラジルにいよいよ大量に流れ込む安い中国製品の洪水が両国の関係を試している。
「中国との関係は重要だが、産業の観点からすると極めてネガティブだ」。サンパウロ工業連盟(FIESP)はある声明でこう述べている。
ブラジルは昨年の対中貿易収支が52億ドルの黒字だったと発表したが、それはコモディティー(商品)の輸出によるものだとFIESPは指摘。工業の分野では、中国からの製品輸入が昨年60%もの「破壊的な」伸びを示したという。製品の貿易赤字は過去最大の235億ドルに上り、7年前のたった6億ドルから大幅に拡大した。
*1=中国で言う山寨のこと
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