細川氏の古文書発見 南北朝時代武士に恩賞 2011/1/26 10:36
南北朝時代の武将、阿波の初代守護・細川和氏(かずうじ)と、いとこで足利尊氏陣営の軍事をつかさどる役職にあった顕氏(あきうじ)の2人が、現在の板野郡の武士に恩賞を授与したことを記す古文書の原本を、つるぎ町貞光の東福寺美術館が入手した。古文書からは当時の徳島県内の勢力状況を読み解くことができ、中世に詳しい徳島城博物館の須藤茂樹学芸員は「文化財級の史料」と話している。
古文書は、兵部少輔(顕氏)と阿波守(和氏)の連名で、板野郡に本拠を置いた漆原三郎五郎(兼有)にあてたもの。将軍・足利尊氏からの勲功として、徳島市南部から小松島市北部にあったとみられる荘園を管理する権限の一部を与えるとの内容となっている。「建武三年二月十五日」との日付や、2人の花押も確認することができる。大きさは縦30センチ、横42センチで保存状態は良好。
徳島県史などによると、古文書が出された1336年は後醍醐天皇による建武の新政に反旗を翻した尊氏が京都での戦いに敗れて九州に下る最中、中国・四国に国大将を配置することを決め、捲土(けんど)重来を期したとされる。
古文書の文面からは、尊氏を支えるため阿波に入った細川氏が、京都奪還に向けて地方の豪族を統率する様子や、板野郡に本拠を置く漆原氏が所領を拡大する状況も確認できる。
研究者の間でこの古文書は、周辺史料などから存在するとみられていたが、原本の所在は明らかでなかった。須藤学芸員は「字配りや花押などを確認できる原本の価値は計り知れない」と話している。
東福寺美術館の沖田定信館長は、取引のあった京都の古物商が所有しているのを知り、昨年7月に購入した。購入額は非公表。沖田館長は「徳島にゆかりのある古文書であり、県内で保管されることに意味がある。美術館の収蔵品として閲覧できるようにしたい」と話している。
【写真説明】南北朝時代の古文書の原本。字配りや花押も確認できる