サッカー・アジア杯決勝(日本1−0オーストラリア、現時時間29日、カタール・ドーハ)歓喜の閉会式から9時間経過した30日朝6時。DF長友は主戦場のイタリアに戻るため、薄暗いホテルの玄関に現れた。
「まだ優勝の余韻に浸っているね。成長を見せたいと思ったけど、少しは成長したかな」
全6試合にフル出場。豪州戦はチーム最長15・466キロを走破した。0−0の延長後半4分、左サイドで勝負を仕掛けた。相手DFをかわし、左足クロス。FW李忠成のボレー弾をドンピシャでアシストした。
「1対1には自信をもっていたし、スピードでかわせる。いいボールが上がれば、と思った」
後半早々、ザッケローニ監督の指示で左サイドバックから、慣れない左MFにポジションを上げた。練習で試していない形だ。「守りながら点を取ろうということ。“スイッチ”が入りました」。両軍とも足が止まった時間帯。無尽蔵のスタミナを誇る背番号5が、前線をかき回した。
昨夏の南アW杯で岡田武史前監督に「相手のエースを潰せ」と特命を受けた。今大会はザック監督に、「サイドを制圧しろ」と新テーマを与えられ、MF香川と左サイド攻略の連係を深めた。試合直後、右足小指骨折で帰国した後輩から「グラッチェ(ありがとう)」とイタリア語で祝福メールが届いた。
「正しくは、グラッツェですね。ボクは(発音に)厳しいので、電話しときます」。そう言いながら、表彰式では香川の無念を思って背番号10のユニホームを掲げた。
バルセロナ、ユベントスなどが獲得に興味を示し、今大会の活躍でその評価はうなぎ上り。しかし、1月31日期限の今冬移籍は「ないでしょう」。それでも「世界一のサイドバックになるには時間がない。ビッグクラブを目指して残り試合をアピールしたい」と元気に旅立った。(浅井武)