「WBA世界Sバンタム級タイトルマッチ」(31日、有明コロシアム)
挑戦者で同級6位の下田昭文(26)=帝拳=が、王者・李冽理(横浜光)を3‐0の判定で破り、新王者となった。
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最後まで攻め続けた。計3度のダウンを奪い、勝利をほぼ手中にしながら最終12回、下田は李に襲いかかった。左ボディーから顔面にパンチを集めKOを狙いにいった。採点は2人のジャッジが9ポイント差で支持する圧勝。顔面を流血で赤く染めながら、新王者は流れ落ちる涙をグローブでぬぐった。
アマエリートが集う帝拳ジムでは異彩を放つ。中学卒業後にジムに入門。高校を2カ月で中退した下田に、アマ経験はない。帝拳ジムでは珍しいたたき上げ。ボクシングだけでなく、私生活でも異色ぶりを発揮している。父は法曹界に身を置き、2人の兄は一流大学卒業。家庭内でも“浮いた存在”だったという。
練習嫌いで、8回戦に昇格してからようやくロードワークをするようになった。入門11年目にして悲願のベルトを巻いた下田は「チャンピオンはパンチが強かった。でも努力はうそをつかない。僕は弱い人間。でも今日は試合中に弱音を吐かなかったし、初めて泣いた。自分自身に勝てたと思う」。瞳を潤ませながら真新しいベルトを見つめた。