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社説:ドーハの歓喜 真のアジア王者目指せ

 長らく日本サッカーにとって「悲劇」の舞台として刻み込まれていたカタール・ドーハがサムライ・ジャパンの歓喜の地に変わった。

 日本時間30日未明に行われたサッカー・アジアカップ決勝。日本は延長後半、途中出場の李忠成選手が決勝ゴールを奪い、オーストラリアを1-0で降し、2大会ぶり4度目のアジア王者に返り咲いた。

 過去3度、アジアカップを制している日本だが、今回の優勝は格別に感慨深いものがある。その理由は二つあるように思える。

 一つはアジア全体のレベルが上がり、1次リーグの初戦から手に汗握る好試合が続いたことだ。とりわけ準々決勝以降のカタール、韓国、オーストラリアと続いた3試合は両チームの実力が伯仲し、一瞬たりとも目が離せないスリリングな試合内容だった。苦しみが大きかった分、喜びも大きかった。

 もう一つは昨年のワールドカップ(W杯)南アフリカ大会後、イタリア人のザッケローニ監督を迎え、メンバーも若返った日本代表が、3年後のW杯ブラジル大会に明るい望みをつないだことだ。

 大会途中で松井大輔選手と香川真司選手が故障で戦線を離脱。戦力の低下が心配されたが、控えメンバーが見事に穴を埋めた。試合ごとにヒーローが入れ替わったのは、控えメンバーを含めチームが一丸となって戦った証しだろう。また昨年秋の就任以来、短期間で日本選手の特徴をつかんだザッケローニ監督の手腕に負うところも大きかった。

 今回の優勝で2年後、ブラジルで行われるコンフェデレーションズ杯にアジア代表として出場することも決まった。世界の強豪とW杯の本番1年前に手合わせする機会を得たのは大きな財産となる。

 18年前、ドーハで行われたW杯米国大会アジア地区最終予選のイラク戦。日本はほぼ手中にしていた初のW杯切符をロスタイムの同点ゴールで逃した。その因縁の地で新生日本代表が幸先良い船出を飾った。

 ただ、今回の優勝で、日本がアジア王者として大きな責任を背負ったことも忘れてはならない。

 大会前に行われたアジア・サッカー連盟(AFC)の役員改選でAFC選出の国際サッカー連盟(FIFA)理事のポストを日本は失った。アジアカップを制した勝因以上に役員改選における日本の敗因をしっかり検証する必要がある。

 競技力でアジアサッカーをけん引するだけでなく、アジアのサッカー発展に向け、日本がどのように貢献できるのか。日本は今後、アジアの仲間から信頼される真のリーダーを目指さなくてはならない。

毎日新聞 2011年1月31日 2時30分

 

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